コナミデジタルエンタテインメントは9月15日、「桃太郎電鉄」をテーマに教育分野で活用する取り組みとして、ブラウザ版「桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~」(教育版桃鉄)の制作を発表。2023年から学校教育機関へ無償提供を始める。
「桃太郎電鉄」は、1988年の第1作発売以来、30年以上にわたって展開されているボードゲームシリーズ。プレーヤーが鉄道会社の社長となり、日本全国を巡って物件を買い集め、資産額日本一を目指すという内容となっている。
制作は、このゲーム性が地理や経済に興味を持つきっかけとなったという声が数多くあったことを受けてのもの。学校などの授業で活用できるよう、ウェブブラウザやタブレットなどでプレイが可能なものとなっている。また、多くの教育機関が導入できるよう、無償での提供を予定している。
「教育版桃鉄」での特徴は、通常の「日本全国」のほか、授業のカリキュラムに合わせて北海道から九州・沖縄までの、7つの地域が選択可能。一般的な授業時間で完了できる短い期間の設定や、対象地域を絞った学習ができる。
また、駅に止まるとその駅や都道府県の基本情報を表示。さらにマップ上の建物や食べ物などのアイコンに虫メガネを合わせると、実際の建物や特産品、観光地、史跡などの情報を知ることができる。
さらに、教育現場での活用を想定したゲームバランスを再調整したものとなっている。誰かを指定して攻撃カードを使用することができないなど、子ども同士のトラブルに発展する可能性のある要素を排除。また、相手のプレーを妨害する「貧乏神」は非搭載。過度に持ち金(資金)が変動しすぎないように調整されている。
9月15日に行われた「東京ゲームショウ2022」のKONAMIブースにて発表会を実施。お笑いコンビ「パックンマックン」によるMCのもと、本作のアドバイザーを務める小学校教諭の正頭英和氏、エッセイストの犬山紙子氏、コナミデジタルエンタテインメント シニアプロデューサーの岡村憲明氏が登壇した。
発表会のなかでは、福岡の小学校でテスト導入したときの模様を上映。小学生からは、楽しかったこととともに「その県の特産品を知ることができた」「駅名や、近くにある有名なことを知ることができた」といった感想が語られ、教諭の立場からは、ゲームを活用することにより子どもたちの興味や関心がしっかり出てきたことや、コロナ禍後に旅行に行きたいなど、実際にその場所を見たいという意識付けになったとし、非常に有効な学習の手立てになるとのコメントがあった。
岡村氏は、実際に複数の学校で行われたというテスト導入の現場を視察した際、本当に楽しそうにプレイしていたことが印象的だったと振り返る。そのなかでも特に、不登校だった生徒の方が、この桃鉄の授業のときは来ていたのが印象的で、ゲームの力を感じるとともに、好きになったら自分から勉強しようとするきっかけになると語った。
アドバイザーを務める正頭氏は、現役の小学校教諭でありICTを活用し、英語やプログラミング、デザインなど、教科の壁を取り払った取り組みをしている点が認められ、「教育界のノーベル賞」と呼ばれる「Global Teacher Prize 2019」のトップ10に、日本人で唯一の選出を受けた人物。
そんな正頭氏は、日本における教育課題のひとつとして“教育格差”があることを指摘。都会と地方の差もあるなかで、「教育版桃鉄」が無償提供されることは、その課題をひとつクリアできるものになると話す。さらに都会の子どもが地方のことを知る、地方の子どもが都会のことを知るきかっけになるとし、お互いの地域の交流などにつながる可能性も示唆した。そして、「教育に新しい風が起こるんじゃないか」と期待を寄せる。「桃鉄からたくさん学んで、家のなかで“今日こんな勉強してきた”という会話が親子で生まれるようになったら、日本はもう少し明るくなる」とコメントした。
発表会では、「桃太郎電鉄」シリーズの総監督を務める、さくまあきら氏から寄せられたメッセージも公開。今回の「教育版桃鉄」については「長年の夢が叶った気がする」とし、さらに「みんなで、地理で満点を取って、先生方を困らせてください」と語った。
犬山氏は長年「桃鉄」をプレイしているとのことで、このメッセージにうるっときたと語るとともに「どんな子どもたちにも、平等に楽しい学びの機会を与えることは本当に素晴らしい」と絶賛。「たくさんの学校で、休み明けに“もう明日学校イヤだよ”というときの月曜とかに取り入れてほしい」と語った。
ちなみに発表会では、制作された“「桃鉄」の白地図”となる「桃鉄学習帳」も公開。岡村氏によれば、「ジャポニカ学習帳」で知られるショウワノートと相談したなかで制作されたもの。現状では一般販売など決まってないが、会場内の問いかけでは、多くの方が欲しいという意志を示すように手をあげていた。
岡村氏は、今回の「教育版桃鉄」以外にも、いろいろな取り組みをしていきたいという意向を示し、「こういった機会があるたびに、新しいことをお伝えできるのを楽しみにしながら、これからも桃鉄を頑張って作っていきたい」とコメントした。
なお、発表にあわせてティザーサイトを公開。教育機関向けの問合せ窓口についても掲載している。
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