楽天グループは8月10日、2022年12月期第2四半期決算を発表。売上高は2021年同期比12.6%増の8935億円、営業損益は1971億円と、引き続き楽天モバイルの先行投資による赤字決算となった。
ただ、代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏によると、Eコマースやフィンテックなどの主力事業は好調で、楽天モバイルを除くNon-GAAP営業利益は2022年同期比12.6%増の452億円になるとのことだ。
楽天モバイルは、7月に導入した新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」で、月当たりの通信量が1GB未満であれば0円で利用できる仕組みを廃止したことが大きな注目を集めている。収益の改善が見込まれる一方、0円で利用できることを目当てとしたユーザーの解約が大幅に増えることが懸念されていたからだ。
今回の決算ではその影響が明らかにされており、2022年6月末時点におけるMVNOの契約を含めた楽天モバイルの契約回線数は546万、そのうちMVNOの契約数は69万とされていることから、携帯電話事業単体での契約数は477万。前四半期の携帯電話事業単体での契約数は491万であったことから、単純計算で約14万契約が減少したこととなる。
そのため三木谷氏も、月額0円施策を廃止したことで契約数が減少していることは認めたが、解約件数のうち8割は通信量が1GB未満の月額0円で利用していたユーザーであるとも説明。一方でRakuten UN-LIMIT VIIの発表後、楽天モバイルをメイン回線として利用する人の比率は8.3ポイント、通信量を20GB以上利用している顧客は5.7ポイント増加した。月額0円廃止による解約を除くと、契約は30%程度伸びたという。
その影響は業績にも表れており、2022年第2四半期における楽天モバイルを主としたモバイルセグメントの営業損益は1243億円と、前四半期の1350億円から改善した。改善の要因としては月額0円施策の終了を打ち出したことでARPUが上昇したことに加え、自社エリア拡大によるローミング費用の削減も挙げており、当初はデータ使用量のうち78%を占めたローミングが、現在は6~7%にまで抑えられているとのことだ。
また月額0円施策を廃止すると発表してから急増した解約者について三木谷氏は、「かなり落ち着いてきている」と説明。ポイント付与などで2022年10月末までは実質月額0円で利用できることもあって今後の動向を注視する必要はあるとしながらも、施策の終了後は解約率も元に戻るのではないかと話した。
ただ三木谷氏は、月額0円施策の廃止以外にもユーザーが解約する要因があると話す。それはエリア整備が済んでおらず、KDDIとのローミングで賄っているエリアの利用者であるという。ローミング時は高速通信が利用できる上限が5GBまでと制限があることから、三木谷氏は2023年中に4Gの屋外基地局を6万局超に増やして人口カバー率99%超の達成を目指すとともに、マーケティング施策も各地域に特化した形へシフトさせていく方針を示した。
三木谷氏はさらに、4Gの人口カバー率が95%を超える東京23区では楽天モバイルの申込率が9.4%に達する一方、85%程度の所では申込率が5%を切るなど、人口カバー率の違いが申込数に大きく影響していることも明らかにした。
そこで三木谷氏は、全国で東京23区並みの人口カバー率を達成すれば申込数が約1200万に達するとの仮説を立て、「(基地局の設置数が)6万局を達成した時は、全国の申し込みベースで(人口の)10%を超える所まで持っていきたい」と意欲を示した。
一方で強調したのが、楽天のエコシステムにおける楽天モバイルの影響の大きさである。楽天グループのサービス新規利用者のうち、楽天モバイル契約者が21.5%に達するなど、楽天モバイルが楽天のサービスを利用する契機となっているほか、楽天市場における1人当たりの平均月間流通総額についても、楽天モバイル加入者が非加入者と比べ40%増えているとのこと。そのため三木谷氏は、仮に楽天モバイルが1200万契約を獲得した場合、楽天市場の流通総額も約15%アップするのではないかと期待を寄せている。
三木谷氏は、楽天モバイル以外の事業の状況についても説明。主力のEC事業に関しては、欧米を中心に海外のEC事業者が苦戦する中、楽天グループは国内のEC流通総額が2021年同期比12.3%増の1兆3150億円に達するなど、好調が続いているとのこと。楽天市場以外のEC関連サービスも好調で、楽天市場とそれらサービスとのクロスユースも順調に伸びているという。
一方で、コロナ禍で大きく落ち込んだ楽天トラベルに関しては、予約流通がコロナ禍以前の2019年と比べ14%増加するまで回復、オンラインによる宿泊予約の利用により「国内の総予約宿泊シェアのうち20%を上回る」と三木谷氏が話すなど、好調な様子を示した。
今後は新型コロナウイルスの“第7波”の動向を注視しながらも、レジャーを中心とした予約促進に力を入れ、その後のビジネス需要の回復を見込み成長につなげていきたいとしている。
もう1つの主力事業であるフィンテック事業も、セグメント売上収益が2021年同期比で6.3%増の1627億円に達するなど、好調が継続。中でも「楽天カード」のショッピング取扱高は2021年同期比28.8%増の4兆4660億円と、三木谷氏も「絶好調としか言いようがない」と高く評価する様子を見せていた。
そのフィンテック事業においては、2022年7月に楽天銀行が東京証券取引所への上場を申請、楽天証券ホールディングスが2022年5月に株式上場準備を開始するなど、傘下企業の上場が相次いで打ち出されている。
評価が分かれる親子上場に踏み切る理由について三木谷氏は、楽天グループの事業が多様化しているため「投資家にとって分かりやすく、見えやすくすることが目的の1つ」と答えたほか、楽天銀行の上場に関しては「資本を厚くすることで業容を拡大できることがある」とも説明。上場で得た資金と楽天グループのデータを活用してサービスの強化、拡大を図る考えを示した。
さらに三木谷氏は海外事業について、米国で展開している「Rakute Rewards」の取扱高が2021年同期比で5%増の26億8000万ドルに達するなど好調で、楽天グループの好業績に大きく貢献していると話す。
一方でウクライナやロシアの利用者が多い「Rakuten Viber」は、ウクライナ情勢の影響で売り上げが見込めずに業績の足を引っ張る形となったが、「これは仕方ないかなと思っている」と話している。
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