完全ワイヤレスの「iPhone」は実現可能か--充電ポート撤廃の可能性を探る

Lisa Eadicicco (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年07月22日 07時30分

 AppleのLightningコネクターは、約10年の間、「iPhone」の一部であり続けてきた。つまり、この象徴的なスマートフォンの15年の歴史の大部分がLightningとともにあった。だが、欧州連合(EU)が2024年秋までにすべてのスマートフォンの充電メカニズムとしてUSB Type-Cを採用することに合意したため、Lightningポートは終わりを迎えつつあるのかもしれない。


Appleのロゴを表示したスマートフォン
Appleは、2012年にLightningポートを採用して以来、iPhoneの充電方式を変えていない。
提供:Sarah Tew/CNET

 この合意で、AppleがiPhoneの充電ポートをUSB Type-Cに切り替えるのではないかという臆測が強まった。だが、Appleにはもう1つ別の選択肢がある。それは、完全に充電ポートのない新しいiPhoneをリリースするというものだ。

 ばかげていると思うかもしれないが、耳を傾けてほしい。ワイヤレス機能についてiPhoneがたどってきた経緯を考えてみよう。Appleは少しずつ、完全ワイヤレスiPhoneへの基盤を築いてきたようにみえる。ワイヤレスイヤホン「AirPods」の成功と、「MagSafe」のような新しいワイヤレス接続へのAppleの注力はすべて、その方向へと向かうものだ。

 iPhoneから物理的な充電ポートをなくすことは、Appleが約6年前に「iPhone 7」を発表した際に示したビジョンを基にしている。このモデルから、iPhoneにはヘッドホンジャックがなくなった。Appleでワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントを務め、後にAppleフェローになったPhil Schiller氏は当時、ヘッドホンジャックの廃止について説明した際に「モバイルデバイスに自分をケーブルで拘束するなんて、ナンセンスだ」と語った(そしてAppleは、このプレゼンテーションで初代AirPodsを紹介した)。

 Appleが充電ポートを完全になくすような劇的な変更を行うかどうかは、まだ何とも言えない。そのような変更を行えば確実に反発を受けるだろうし、ワイヤレス充電が有線充電に完全に取って代わるにはまだ技術的な制約がある。だが、EUの新たな規則やElizabeth Warren議員をはじめとする米上院議員からの圧力、さらに無線プロトコルの改善により、充電ポートのないiPhoneの実現はこれまでになく現実味を帯びてきている。

Appleは完全ワイヤレスのiPhoneを出すか

 Appleは、未発表の次期製品について言及することは決してないので、未来のiPhoneがどのようなものになるかを正確に把握することは不可能だ。しかし、これまでの報道や同社による特許出願は、少なくともAppleが完全ワイヤレスiPhoneの機能を検討した可能性を示唆している。

USB Type-CポートのGoogle Pixel 2 XLの上に重ねたLightningポートのiPhone 7 Plus
USB Type-Cポートの「Google Pixel 3 XL」の上に重ねたLightningポートの「iPhone 7 Plus」。
提供:Stephen Shankland/CNET

 例えば、2019年に提出されたAppleの特許出願は、ディスプレイを介してワイヤレス充電ができる、全面ガラスでできたiPhoneについて説明している。また同社は、ワイヤレス充電に関連する他の特許も出願しており、これらの技術が日の目を見れば、充電ポートのないiPhoneの実現を推進することになるだろう。出願された特許の1つは、「MacBook」のキーボードにワイヤレス充電器を直接組み込むというもので、実現すればワイヤレス充電がより便利になる可能性がある。

 Apple関連の予測で知られる業界のオブザーバーでTF International Securitiesのアナリスト、Ming-Chi Kuo氏は2019年の調査メモで、充電ポートのないiPhoneというアイデアに注目するよう呼び掛けていた。CNBC9to5MacMacRumorsの報道によると、当時Kuo氏は、Appleが2021年に上位モデルのiPhoneからLightningポートをなくす可能性があると語っていた。

 しかし、Kuo氏の予測は外れ、2021年秋に発売された「iPhone 13」シリーズでは、すべてにLightningポートが備わっている。それ以来、充電ポートのないiPhoneに関する報道は減り、Kuo氏とBloombergからの最近の情報は、AppleがUSB Type-C対応のiPhoneを開発中である可能性を示唆している。

iPhoneの有線接続への依存度は低下している

 Appleが完全ワイヤレス充電に対応したiPhoneを発売するかどうかは定かではない。しかし確かなのは、iPhoneをワイヤレスで使うための機能がどんどん整ってきているということだ。

AppleのMagSafeバッテリーパックでワイヤレス充電しているiPhone 12 Pro Max<br>
提供:Patrick Holland/CNET
Appleの「MagSafeバッテリーパック」で「iPhone 12 Pro Max」をワイヤレス充電できる。
提供:Patrick Holland/CNET

 Juniper Researchのリサーチ責任者、Nick Maynard氏は最近のインタビューで、「実際、ケーブルが必須のシステムは減少している」と語った。

 2016年のAirPodsの登場は恐らく、有線接続から脱却する最大のきっかけだった。当時、ヘッドホンジャックを廃止するというAppleの決定は物議を醸したが、業界はワイヤレスイヤホンへの移行をすぐに受け入れた。

 Appleがヘッドホンジャックと決別した後、サムスンなど多くのスマートフォンメーカーがそれに続いた。調査会社Canalysによると、2022年第1四半期のワイヤレスイヤホンの世界出荷台数は、前年同期比17%増の6820万台で、AirPodsが首位に立っている。

 しかし、iPhoneのケーブルとの決別を示す兆候はAirPodsの人気だけではない。Appleは2020年には「iPhone 12」とともに、MagSafeと呼ばれる新しいタイプのiPhone用ワイヤレス充電システムを発売した。

 MagSafe(MacBookの充電器と同名だが混同しないように)は磁力を使ってワイヤレス充電器などの周辺機器を、MagSafeに対応しているiPhoneの背面に簡単に固定できるようにする。MagSafe充電器は、標準のQiワイヤレス充電器よりも効率的にiPhone 12およびiPhone 13に電力を供給できる。一部のiPad Proの背面にある3つ並んだマグネット式の端子「Smart Cnnector」も、ケーブルへの依存度を下げるためのAppleの取り組みの1つだ。

 超広帯域無線通信(UWB)などの新たな技術により、iPhoneを他のデバイスとワイヤレスに接続することも容易になってきた。UWBは、無線信号を使ってデバイスの位置を特定する無線プロトコルだ。この技術は主に、iPhoneが「AirTag」を見つけたり、「AirDrop」を使う時に他のiPhoneを見つけたりするために使用される。クラウドサービスやAirDropのようなファイル共有機能のおかげで、無線データ転送が多くの人にとって当たり前になっていることも、Lightningポートの必要性を減らす要因となっている。

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