カヤック、滋賀県とローカルDXの実現に向けた連携協定を締結

　カヤックは5月9日、DX（デジタルトランスフォーメーション）推進による、地域の魅力発信や関係人口の拡大と、地域コミュニティの維持、活性化を図ることを目的に、滋賀県と連携協定（多様な人がつながり、活躍できるローカルDXの実現に向けた協定）を締結したと発表した。

　これにより、カヤックのもつデジタルプラットフォームである移住スカウトサービス「SMOUT」、デジタル地域コミュニティ通貨「まちのコイン」を滋賀県に導入する。同社が自治体とDXに関する連携協定を結ぶのは初めてになるという。

　新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、密を避ける行動や複業の普及、テレワークをはじめとする働き方の多様化など、生活に大きな変化があった。

　この変化は人口にも影響しており、例えば2021年の東京23区では、2014年以来初めて転出した人が転入を上回る1万4828人の転出超過となっている。また、転入超過は10都道府県で、関西圏の大阪府と滋賀県は転入超過だった。東京一極集中の流れが緩和傾向にあり、地方での暮らしへの関心が高まっている。

　都市圏では、若い世代（20～40代が全体の7割）を中心として地方移住に関心が高く、移住スカウトサービスとなるSMOUTの登録者数も3月末で3万4238人と、前年同月比で1.5倍になっている。

　滋賀県では、移住相談件数や移住セミナー参加者数、移住者数が増加傾向にある一方で、県内に過疎地域が追加。少子高齢化、事業継承者をはじめとする地域づくりの担い手不足拡大の地域課題がある。

　こうした地域課題に対し滋賀県は、地域づくりへの主体的な参画やイベントなど地域交流に参加する全国の「関係人口（訪問系）」を呼び込むため、カヤックとパートナーシップを組むことを決定。今回の「多様な人がつながり、活躍できるローカルDXの実現に向けた協定」では、カヤックのもつデジタル技術を活用し、全国から各分野で活躍する人と滋賀県との関係性を深化。地域交流やまちづくりへの参加を促すことで、地域活性化と持続可能な地域運営を目指す。

　具体的には、（1）移住スカウトサービスのSMOUTを活用した関係人口の拡大、（2）地域活性化のためデジタル地域コミュニティ通貨となるまちのコインの導入、（3）地域のデジタル人材育成、の3つについて取り組む。

　SMOUTを活用した関係人口の拡大では、滋賀県による全国への効果的な発信に向けて、移住、関係人口のデジタルプラットフォームとなるSMOUTを滋賀県および、県内13市町（大津市、彦根市、長浜市、近江八幡市、甲賀市、湖南市、高島市、東近江市、米原市、日野町、愛荘町、甲良町、多賀町）に導入する。

　これにより、県や各市町、民間業者が各自のプラットフォームで発信していた地域情報やユーザー情報をSMOUTのデータベースに一元化し、可視化していく。また、登録者と地域が双方向にコミュニケーションがとれるSMOUTの特徴を生かし、滋賀県との「かかわりづくり」を進めることで、県内の地域課題などに対する人材をマッチングしていく。

　また、日本で17地域（神奈川県小田原市・鎌倉市・厚木市・日吉エリア、たまプラーザ地区、東京都下北沢エリア、秋葉原エリア、長野県上田市、大阪府八尾市、香川県多度津町、高知県高知市、岡山県新庄村、鳥取県智頭町、福岡県八女市、沖縄県石垣市の15地域で導入中、東京都大塚エリア、長野県佐久市は終了）に導入されているまちのコインを滋賀県内で導入する。

　地域ごとの価値や可能性を掘り起こし、お金で買えない「つかう」「あげる」体験の提供や、コインを媒介に地域を訪れる、巡る人を増加させ、地域内外の人が楽しみながらつながりを深めることで「まちのにぎわいづくり」を目指す。

　地域のデジタル人材育成では、カヤックが地域の実情把握とデジタル技術の活用に秀でたエリアコーディネーターを滋賀県内の事業者と連携して配置。SMOUTとまちのコインを効果的に運営するための支援を行うという。

　カヤックは、SMOUTとまちのコインを使って、関係人口の可視化、関係人口情報の共有化、官民連携とDX人材の育成を実行し、移住促進と関係人口創出を目指す。

　次年度以降は、SMOUTやまちのコインのデータを活用し、Society5.0の考え方であるサイバー空間とフィジカル空間を融合する知見を得て、滋賀県の政策立案に貢献することも目指すという。