アマゾンの「Astro」は家庭用ロボットの未来に向けた小さな一歩 - (page 2)

Andrew Gebhart (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年05月13日 07時30分

未来のAstro

 ロボット工学を活用したコンシューマー向けのガジェットはAstroだけではない。ソニーの「Aibo」はかわいいロボット犬だ。「Jibo」は動くことはできないが、質問には答えられる。UBTECH Roboticsが開発する「Lynx」はヨガを教えられる。ロボット掃除機も多くのナビゲーション技術を搭載しており、ハイエンドモデルは家の間取りを把握することさえ可能だ。

 しかし他のロボットたちと比べて、Astroは従来のロボットのイメージに近い、初のメジャーな家庭用ロボットと言えるだろう。Jiboは、魅力的な姿をしてはいたが、実質的にはスマートスピーカーにすぎず、すぐに市場から消えた。LynxとAiboは、どちらかといえば玩具に近い。ロボット掃除機は、ロボットと呼ぶには用途が限定されており、ロボットナビゲーション技術を搭載した実用品と言った方がしっくり来る。

「お手」をするAibo
ソニーのAiboは確かにかわいい。
提供:Sarah Tew/CNET

 Astroが現行製品の中では優位なポジションにあることを考えると、筆者がAstroにもっと意欲的な機能を求めるのは、SFや昔のアニメに感化されているからだと思うかもしれない(Astroもこうした作品に描かれたロボットを意識的に模している)。しかし私がAstroに多くを求めるのは、もっと単純な理由、つまり、ロボットには純粋に便利なものであってほしいからだ。例えば、Astroの台座に掃除機を取り付けられれば、機能面の汎用性は大きく向上する。

 現在のAstroは、飲み物を運んだり、ダンスを踊って家族を楽しませたりすることはできる。しかし、こうした小技に飽きてしまえば、Astroの最も有用な機能は自宅の警備になる。しかし台座部分に掃除機をつなぐことができれば、家事も本格的に手伝えるようになる。まもなく発売されるRoborockの「S7 MaxV Ultra」はカメラとスピーカーを搭載したロボット掃除機で、掃除機とカメラの相性の良さを示している。

 他にも、Astroが真に有能なロボットになるためには、物体の認識能力をさらに高め、家の中のさまざまなものをつかんで持ち上げられるようにする必要がある。もしAstroが洗い終わった皿を食洗機から取り出したり、散らかったおもちゃや脱ぎっぱなしの服を片付けたりできたらどうだろう。現在のAstroはビールを運んではくれるが、そのためにはまず誰かがAstroにカップホルダーを装着し、ビールを運ぶよう指示しなければならない。こうしたステップをすべて自律的にこなせるロボットが欲しい。

 現在、利用可能な技術から考えれば、これが無理な要求であることは分かる。しかしサムスンは2021年、まさにこの可能性を体現する「Bot Handy」というコンセプト家事ロボットを発表した。筆者は2018年のCESで、物を認識し拾い上げることのできる「Aeolus」という画期的なロボットを見たこともある。Aeolusは人間に近い大きさのロボットで、理論的には掃除機をつかんで使うこともできる。

Bot Handy
Bot Handyは雑用をこなすことができる。
提供:Samsung

 Bot Handyもワインを注ぎ、洗濯物をたたむことができるが、Aeolusはそれ以上のことをやってのけた。しかし当時でさえ、Aeolusはプログラマーがコンピューターを使って厳重に管理していたので、この技術が実際の家庭環境でどの程度使えるものだったかは分からない。その後、Aeolusに関する続報は聞こえてこない。Bot Handyに関して言えば、サムスンは確かに大企業だが、同社がぶち上げてきた先進的なロボットのコンセプトは、そのほとんどが実用化に至っていない。

 筆者は「Sophia」という名のロボットが会話をする様子や、Boston Dynamicsのロボットがアクロバティックな技を繰り出す様子も見てきた。歩き、話しをするヘルパーボットは、実験段階ではあっても、すでに存在する。

 こうした野心的なアイデアを洗練させ、形にしようとしているロボットデザイナーたちの試験台になろうとしているのが「Misty II」だ。Misty IIはコンシューマー用ではなく、開発者・技術者用のロボットだ。基本的なナビゲーション能力は備えているが、パーツは交換可能で、ソフトウェアも再プログラミングできるようになっている。つまり、Mistyは新しいロボット技術を実際に動くロボット上で試したいと考えている技術者に、基本機能を備えた、開発の土台となるロボットを提供しようとしている。

残念な現在が導く希望

 筆者は長年、数々の意欲的なコンセプト技術を見てきたので、技術的な革新性という意味では、Astroにはやや失望した。Astroにできることの大半は、5年前にはすでに実現していたからだ。しかし前述したように、Astroは実際に商品化され、本物の家の中で利用されている。これは、ほとんどのロボット開発会社がなしえなかったことだ。しかし現在はあくまでも招待制で販売されているにすぎず、一般向けの具体的な販売計画はまだ公式には発表されていない。多くのAmazon製品がこのフェーズを脱することができなかった。Alexa内蔵のスマート指輪「Echo Loop」がそのよい例だ。

 しかし、Amazonが生み出した実験的な製品が成功を収めた例もある。その筆頭がスマートスピーカーの「Echo」だ。Echoは、最終的にはスマートホーム業界そのものを大きく変えることになった。多くの新興企業が似たようなことを目指して野心的な製品を開発し、失敗した。その屍を超えることで、Amazonは確かな一歩を踏み出したのだ。

Misty
筆者としては、AstroにはMistyのような野心的な設計を期待していた。
提供:Chris Monroe/CNET

 AstroにとってベストなシナリオはEchoにならうことだ。うまく行けば、AmazonはAstroの粗さをそぎ落とし、これを野心的な新分野への足掛かりにできるだろう。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]