アマゾン初の労組結成が示す「労働者の声」の高まり - (page 2)

Laura Hautala (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年04月07日 07時30分

労組推進派の主張

 アラバマ州とニューヨーク州の労働者が抱えている問題は似ているが、労働組合が求められるようになったいきさつは違う。

 アラバマ州ベッセマーの倉庫では、過酷な労働ペースと十分な休憩時間がないことへの不満が従業員の間で共有され、2020年から組合の結成が検討され始めた。休憩室がトイレから遠い場所に配置されているため、従業員が休憩時間のほとんどをトイレへの移動に費やさなければならないとして、Amazonを相手取った複数の訴訟が起こされた。先日はワシントン州の規制当局が、Amazonの課す厳しいノルマが従業員の間で筋骨格障害が多発する直接的な原因になっていると指摘した。

 一方、スタテン島の倉庫では2020年初頭に従業員が新型コロナウイルス感染症対策の強化を会社に要求した。当時は感染症の拡大によって倉庫で働く労働者が不足し、サプライチェーンも混乱していた。Amazonはストライキを計画した従業員を解雇したり、懲戒処分を課したりしたため、従業員はALUを設立した。

2021年の投票が労組結成ブームのきっかけに?

 Amazonで起きている組合結成の動きは時代の変化を示していると、労働問題の専門家は言う。

 組合結成投票がまずAmazonで始まったことは、倉庫の劣悪な労働環境が長年、批判の的になってきたことを考えれば驚くにあたらない。Amazonはこの1年間、「世界最高の雇用主」を目指すと公言してきたが、最近までこのイメージに近づくための努力はしていなかったようだ。

 しかしStarbucksとREIは違う、とサンタクララ大学小売管理研究所のKirthi Kalyanam所長は言う。この2社では、素晴らしい職場であることがブランドの一部となっている。労働組合をめぐる一連の動きは、世界中の労働者が待遇の改善を求めていることの証左だと同氏は言う。

 「この2年間で従業員の期待は大きく変わった」と同氏は指摘する。「労働者は仕事の意味を真剣に問い直すようになった」

先週の投票結果の意外性

 労働組合は不利な状況にあった。

 2021年にベッセマーの倉庫で行われた選挙では、組合側が大差で敗れた。労働問題専門の弁護士としてAmazonを支援しているMacDonald氏によると、Amazonの倉庫は離職率が高いため、組合側は問題を理解していない新しい労働者の説得に時間をとられていた。それにもかかわらず、2021年の選挙では2対1以上の大差で負けた労働組合が、今回の選挙では大いに健闘したのである。

 労働問題の専門家の間では、スタテン島の選挙は組合側の敗北に終わると予想されていた。組合側から、従業員の50%以上の支持を得ているという発言がなかったからだ。米国では組合結成投票を当局に申請する場合、組合は通常、労働者の半数の支持を得ることを目指す。ラトガース大学の労働学教授、Rebecca Givan氏によると、一部の従業員が投票前に心変わりすることを見越して、最初の段階で50%よりも多くの支持獲得を目指すのが通例だと言う。米国の労働法は、従業員の30%以上の支持を示すことを組合結成投票の実施条件として定めている。

 1日の勝利後、組合側は通常と異なるアプローチを取ったのは戦略的な判断だったと述べた。結成投票を申請するために従業員の50%から署名を集めるよりも、30%から署名を集める方が早く、必要なリソースも少ない。また、Amazonの倉庫は離職率が高いため、なるべく早く申請した方が支持者を失わずに済むからだ。

Amazonの拠点で進む、その他の労働運動

 米国最大の労働組合「International Brotherhood of Teamsters」は2021年、Amazonに労働組合を作ることを最優先事項に掲げた。今のところ、組合結成投票の実施は申請されていない。

 Amazonでは、他にも2つの従業員団体が正式な組合投票を経ずにAmazonの経営陣に要望を提出している。例えば、シカゴ、サクラメント、ニューヨーク等で活動している「Amazonians United」は、賃上げと病欠の有給扱いをAmazonに求めた。また、緊急時に従業員と家族が連絡を取れるように、パンデミック前には禁止されていた個人の携帯電話の持込みを今後も認めてほしいと要請した。

 シアトルでは、Amazonの生鮮食品配送サービス「Amazon Fresh」の労働者が「Amazon Workers United」という労働組合の結成を宣言した。同グループは組合結成投票の実施をNLRBに申請してはいないが、給与や福利厚生の改善、制服規程の見直し、多様性やセクシャルハラスメントに関する研修の充実をAmazonに要求している。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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