メタバースは何をもたらすのか、それを感覚で理解したければ、「3D Charades」を見てみることをお薦めする。
このビデオゲームの基本ルールは単純だ。複数のプレーヤーがカフェのような部屋に集まって、チームに分かれる。1人のプレーヤーが絵を描き、他のチームメンバーは、その絵が何を表しているのかを当てていく。
現実世界には、「Pictionary」など、同様のゲームがすでに存在している。しかし、仮想世界では、ゲーム部分はほんの始まりにすぎない。開発元のRec Roomが2016年に3D Charadesをリリースすると、ファンはすぐに自分の絵を芸術作品に見立てて、カフェをギャラリーとして使用するようになった。
Rec Roomの最高経営責任者(CEO)であるNick Fajt氏は、同氏のメタバースで行ったインタビューで、バーチャルの絵を描くために使用される「Maker Pen」に言及し、「人々がこのツールの使い方を拡張している」と語った。Fajt氏は、Maker Penを使ってさまざまな色や形、弾むボールなどを描き、その機能を実際に見せてくれた。
3D Charadesは、普通のオンラインマルチプレイゲームのように聞こえるかもしれないが、メタバースの未来の可能性を示すものでもある。近頃人気のメタバースという言葉は、会議やゲーム、交流を行ったりするための永続的な共有デジタルスペースのことを指すものだ。そこにいる人々は、アバター(通常は漫画のような3Dキャラクター)として表現され、仮想空間を歩き回る。このコンセプトは、先頃オースティンで開催された映画・音楽祭の「SXSW」やサンフランシスコで開催された「Game Developers Conference」(GDC)など、トレンドを生み出すカンファレンスで話題になっている。
メタバースという概念は、今から何十年も前にOrson Scott Card氏やNeal Stephenson氏のSF小説に初めて登場した。両氏が考え出したのは、コンピューターによって生成された空間で、登場人物はそこで多くの時間を過ごしている。「Second Life」や「Minecraft」「Roblox」といったゲームは、それから間もなく発展したメタバースの第一波だ。それらのゲームの一部では、プレーヤーがバーチャルな素材を使って、自分のアバターが使用するアイテムを作り、実生活のメタファーであるメタバースを拡張する。
Epic Gamesはヒット作「Fortnite」について、ただの「ハンガー・ゲーム」風シューティングゲームだとは考えていない。Fortniteは、遊んだり、友達と時間を過ごしたり、映画を見たりするための場所だ。このゲームは、Travis ScottやAriana Grandeなど、さまざまなミュージシャンのコンサートを開催してきた。「Beat Saber」は、Lady GagaやBillie Eilishなどのヒット曲のリズムに合わせて腕を振るゲームで、人々がその実力を競い合っている。「Echo VR」では、宇宙空間でアルティメットフリスビーと旗取りゲームを組み合わせたようなゲームをして、プレーヤーが競う。
FacebookとMicrosoftは、メタバースを生活や仕事をする場所とみなしている。世界の反対側にいる同僚たちとつながるため、デジタルオフィスを作っている人もいる。
そうした活動は依然として概ね実験的なものであり、数年後にどうなるのかは誰にも分からない。それでも、Walt DisneyからスーパーカーメーカーのFerrariまで、さまざまなビジネスリーダーが、メタバース内で、あるいは複数のメタバースにまたがって自社製品を提供する方法について話している。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」