自動運転--2022年の最重要トレンドを追う - (page 2)

Brian Cooley (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年03月31日 16時12分

 もっとも、技術の承認と保証はまったく別の話だ。例えばBenzのライバルであるAudiは、2016年に渋滞時用の自動運転技術「トラフィックジャムパイロット(Traffic Jam Pilot)」を自社の車に初搭載した。走行速度の遅い渋滞中は基本的にシステムが運転を担い、渋滞が解消すると人間に運転を戻す。しかし、この技術は米国市場では成功しなかった。その大きな理由は、米国の法律が自動走行車に対応しておらず、損害賠償の取扱いが不透明であることに対する懸念にあった。新しい「BMW 7」シリーズにはレベル3の技術が搭載される見込みだが、この技術は米国仕様車には搭載されない。その一因は、おそらくトラフィックジャムパイロットが米国市場で受け入れられなかった理由と同じだろう。

DRIVE PILOT
提供:Mercedes-Benz

 日本で販売されているホンダの「レジェンド」(北米では2020年まで「アキュラRLX」として販売)には、Audiの渋滞時運転システムによく似た「Honda SENSING Elite」が搭載されている。このシステムは、渋滞時には低速運転を行い、ドライバーはその間、ダッシュボードのディスプレイに表示されたデジタルテレビの映像などに注意を向けることができる(ただし居眠りは不可。自動運転レベルは3なので、システムが要求すればドライバーは必ず運転に戻らなければならない)。このHonda SENSING Eliteは、米国市場向けのホンダ車に標準装備されているレベル2の運転支援システム「Honda SENSING」とは別のものだ。

 レベル3には、このハンドオフの問題がつきまとうため、レベル3を回避して自律走行を意味するレベル4を目指す自動車メーカーもある。

Honda SENSING Elite
提供:Honda

 General Motorsは、ドライバーの精神的負荷ではなく、身体的負荷の軽減を目指すレベル2に注力している。同社の運転支援技術「スーパークルーズ」は、2023年にLiDAR搭載の「ウルトラクルーズ」に進化する予定だ。ウルトラクルーズは、一時停止標識や信号といった常設の交通表示に従うだけでなく、安全な状況下での自動又はオンデマンドでの車線変更、左折・右折、住宅の私道における自動駐車を支援し、車載ナビシステムの指示にも対応する予定だ。GMによると、この新システムは米国とカナダの200万マイル(約320km)を超える道路をカバーしており、95%の走行状況に対応するという。

ウルトラクルーズ
提供:GM

 Fordは「ブルークルーズ」という運転支援技術の進化に取り組んでいる。GMは、この名称が自社の自動運転技術の名称に似ていると主張してFordを提訴したが、この法廷闘争は和解に至った。ブルークルーズは、北米の13万マイル(約20.9万km)の道路をカバーしており、規制速度や車間距離の維持、車線追跡、ストップ&ゴー機能を備え、法定速度を維持して走行する。GMの技術と同様に、ブルークルーズも車内に設置されたドライバーモニターカメラを使って、ドライバーがシステムの作動中も道路を見ているか、周囲に注意を払っているかを確認する。ブルークルーズシステムは現在、Fordの「マスタング・マッハE」と「F-150」に搭載されている。

 これらの技術を搭載した自動車は間もなくショールームに展示され、ドライバーからのフィードバックをもとに進化していくだろう。最大の問題は、むしろこうした技術にできることをドライバーに伝えるという、形のないタスクかもしれない。ほとんどのドライバーは、自動運転レベルの定義について正しい説明を受けていないどころか、自分の車がどのレベルに属するのかすら理解していない。自動車各社は、自社の車が安全にできることとできないことを、オーナーにどうやって伝えていくのか。難しい業界用語や技術名称だけでは、ドライバーに理解してもらうことはできない。

 車両自動化の初期に登場したクルーズコントロール機能は、どれもシンプルで、車種を問わずに同じように機能した。当時のクルーズコントロール機能と比べると、今日の車両自動化技術ははるかに複雑で、細分化されている。今後は技術面の進化だけでなく、コミュニケーション面のブレークスルーが重要な役割を果たすことになるはずだ。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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