音楽業界にもAIの波--ヒット曲とスターを生み出せるか(前編) - (page 2)

Ty Pendlebury (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2022年01月11日 07時30分

 「AIのおかげで、何百万もの人々が非常に低価格のツールを利用できるようになり、音楽がより身近なものになっている」とSouthern氏。「私は、AIに関する記事をいくつか読んで、好奇心をそそられた。そして、実際にいくつかのツールを試して、どんなものなのか確かめてみようと考えた」

 Southern氏は、2018年のレコード「I AM AI」の制作に「Amper」というプログラムを使ってみようと思い立った。このプログラムは作曲機能を備えているが、それでも歌詞とメロディーはSouthern氏が自分で創作した。完全にAIで生成されたアーティストに対しては、やや慎重に考えている。

 「人々が聴きたいのは、ある種の感情的な基盤があると思えるような音楽や、独創的に人の心を操れるような、人間の感情的な要素がある音楽だと思う」(Southern氏)

AIはすでに音楽分野に浸透している

 「Alysia」や「Orb Composer」といったソフトウェアは、スタイルや「雰囲気」に基づいて作曲できる機能を備えている。全てがコンピューターによって生成される未来のポップミュージックへの、次の一歩だ。Shutterstockが買収した「Amper」も、新進のミュージシャンが利用できるツールだ。Amper Musicの共同創設者であり、元最高経営責任者(CEO)のDrew Silverstein氏によると、同氏が開発に携わったこのプログラムは、名称に「AI」という文字が含まれていないが、既存のシステムから大きく飛躍したものではないという。

 「つまり、AIはすでに存在している。Appleの音楽制作ソフト『GarageBand』にアクセスすれば、自分で設定できる自動ドラマーがすでに用意されている」とSilverstein氏。同氏はAIについて、「素晴らしく、かつ恐ろしく」見えるものの、音楽制作技術の自然な進化だと考えている。

 「1年後か100年後かは分からないが、AIを使った音楽もやがて古いものになるだろう。誰かが過去を振り返って、『初期の人々がやったことは、本当に斬新な取り組みだった』と話すようになるはずだ」(同氏)

 Silverstein氏によると、AIが単独で作曲したヒット曲が「早ければ数年以内」に生まれる可能性もあるという。また、現在のAIが創作するインストゥルメンタル・ミュージックには、チャートの上位に食い込む可能性が十分にあるという。とはいえ、最終的には、AIはこれまで想像もされなかったような方法でアーティストを支えるようになるだろう、というのが同氏の意見だ。「AI音楽が史上最大の創作革命につながると言っても問題はないと思う」

figure_4
AmperはAIによる作曲ツールだ。
提供:Screenshot: Ty Pendlebury/CNET

 だが、AIを使って楽曲を作った場合、著作権は誰に帰属するのだろうか。Silverstein氏によれば、それはアーティストのインプットの割合によるが、すべてAIで作られた楽曲については、プログラマーが著作権の所有者になるだろう、という。

 ジャーナリストのJohn Brook氏がThe New Yorkerで説明しているように、ポップソングが自宅で録音されることが増えており、楽曲は多くの場合、一定の法則に従って作られている。理論的な話をすると、頭にこびりついて離れないメロディーのことを意味する、いわゆる「イヤーワーム」になる楽曲には、7秒ごとにフックがあり、曲の長さは3分未満だ。

 Silverstein氏によると、フックは問題ではないという。AIは今でもフックのあるメロディーを作ることができる。問題なのは、経験豊富な音楽業界関係者でさえ、何がリスナーの共感を呼ぶのかを予測することはできないということだ。ツールを使用する人間が、フックの微調整といったアート面での変更を加えられるように、AIはコラボレーティブでなければならない、という。

 後編に続く。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]