石油元売の日本最大手であるENEOSを傘下に持つENEOSホールディングス(ENEOS HD)と、産業用ドローンなどを活用した業務用ロボティクスソリューションを提供するセンシンロボティクスは、ENEOSが2000年に石油精製事業を停止したプラント設備を活用して、ドローンを自由に飛ばせるショーケース兼実証フィールドである「ENEOS カワサキラボ」を共同でオープンした。
ここでは、ENEOS カワサキラボの現地レポートと、ラボの開設をリードした両社のキーマン、ENEOSホールディングス 未来事業推進部事業推進3グループの徳富大治郎氏と、センシンロボティクス執行役員でソリューション部長をつとめる上野智史氏へのインタビューをお伝えする。
ENEOSカワサキラボは、ENEOS 川崎事業所の敷地内にある。もともと、1931年に旧三菱石油の川崎製油所として操業を開始し、2000年までは原油を運び込んで各種石油製品を製造するプラントとして稼働していた。事業所内には、まだ一部稼働している施設もあるが、概ね停止しているという。同施設は、このプラント跡地エリアを活用して開設された。
ENEOSカワサキラボ内にある実証フィールドは、広さ4万2000平米。私有地内であるため、たとえば夜間であっても、必要な許可承認事項をクリアできれば、いつでも柔軟にドローンを試験飛行できる。かつてはリアルに稼働していたプラント設備を使えるので、ドローンなどのロボットを活用した新たな設備点検ソリューションの開発に、うってつけの場所だという。
プラント設備の入り口付近にある空き地では、センシンロボティクスが開発・提供する完全自動運用型ドローンシステム「SENSYN Drone Hub」のデモを見学できる。
SENSYN Drone Hubは、設定した時間になるとドローンが自動で離陸し、ミッション完了後は自動で着陸する基地(ドローンポート)と自動充電システムが一体になっており、機体着陸後には撮影データを自動でクラウドへ伝送するなどの業務アプリケーションも搭載した、点検や監視業務の完全無人化をサポートする統合型ソリューションだ。
ちなみに、この基地の屋根は、ミッション実行前には閉じている。離陸時刻になると付近に備え付けられた気象センサーから、雨量、風速、気温などの気象データを取得して、飛行可否を自動で判断するという。そして飛行可能であれば、屋根が開いて機体が離陸する仕組みだ。
「SENSYN Drone Hub」から離陸したドローンが飛行するところ
プラント設備の中央に入っていくと、以前は石油製品の製造に使っていた小型で高さ数メートルのドラムと呼ばれる設備や配管が残っている。もう少し奥には、油を昇圧して流すためのポンプや配管、メータなどの計器が、地上近くに設置されているエリアもあり、ここはドローンだけではなくローバーによる実証にも適している。
そして、メインエリアから離れたところには、直径約20m、高さ約20mのタンクが5基あり、ドローン点検のデモも可能だという。また倉庫は、屋根や壁面の点検の実証に活用できる。
ENEOSホールディングス 未来事業推進部の徳富氏は、「基本的に配管やポンプは、石油精製以外のプラントにはよくある設備なので、これらを常設したドローン実証フィールドであるENEOSカワサキラボは、とても汎用性が高いと考えている」と言う。
センシンロボティクスの上野氏も、「たとえばドローンを使った撮影技術や、データを加工管理する技術など、ENEOSカワサキラボで1つの対象に対して突き詰めた技術を開発することで、石油以外のプラント以外でも使える汎用性の高い技術になる」と補足する。
ドローンをはじめ、自動で移動しながら写真を撮影していくロボットが得意なのは、全体をくまなく見て異常があれば検知する、一次点検やスクリーニング。石油関連以外でも、特に防爆リスクの低いエリアから、異常検知を目的とした巡回点検の労力削減ニーズは高いという。
今後は、ENEOSカワサキラボで活動をともにする共創パートナーを募って、ドローンなどのロボットを活用した技術やソリューションの開発を進める予定だ。上野氏は、「実際にフィールドでドローンを活用するところを見て、感じていただき、ドローンショーケースでディスカッションまでできるのがENEOSカワサキラボの魅力だ」と話す。
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