ロケット科学者と脳外科医が集まり、混み合った部屋を想像してほしい。この部屋に、数人の一般人が入ってきたとしよう。その場合、この部屋にいる人々の知能の平均は下がるだろうか。「おそらくそれはない」というのが、ある科学者チームの見解だ。
英語の定番フレーズに「it's not rocket science(これはロケット科学ではない)」「it's not brain surgery(これは脳外科手術ではない)」というものがある。いずれも「難しいことではない」という意味だ。このチームはこれらのフレーズに事実に基づく根拠があるか否かを確かめようと、1年間かけて調査を行った。
研究チームは、「知能」をさまざまな側面から調べる改良型のテストである、Cognitronの「Great British Intelligence Test」を使用して、600人の航空宇宙技術者と148人の脳外科医の認知能力を実際に評価した。その後、得られたデータを整理してその精度を高めた上で、英国に住む一般の1万8000人超の人と比較した。
その結果は、簡単に言えばこうだ。いわゆる「頭脳エリート」とされる人たちとそれ以外の人たちで、テストの数値に大幅な差は見られなかった。
「大きな差がなかったという事実が明らかになったことは、きわめて重要な成果だと考えている」と、現地時間12月13日に「The BMJ」誌で発表されたこの研究論文の著者であるAswin Chari氏は述べた。実は同氏自身も、英グレート・オーモンド・ストリート病院に勤務する脳外科の研修医だ。
ロケット科学者と脳外科医という2つの専門職に従事する人たちを比較した知能テストの結果では、どちらかが明らかな勝者になることはなかった。むしろ調査結果は、認知能力の表れ方に関する、職業ごとの微妙な違いを浮き彫りにするものとなった。
「脳外科医は意味を扱う問題の解決が得意だった」とChari氏は言う。これはつまり、使用頻度が極端に低い言葉の定義を見つけ出す能力に優れているということだ。「これは私自身も含めた脳外科医が、医学部でギリシア語やラテン語を語源とする医学用語をたくさん学ぶからだと考えられる」と、同氏は推測している。
一方、ロケット科学者は脳内で何かを操作するのが得意だった。つまり、頭の中で3Dの物体をあちこちに動かしたり、さまざまな角度から眺めたりする能力に長けているということだ。ロケット科学が、星や銀河の姿を頭の中に描いたり、具体的な形のない物理学の法則を視覚化したりすることを常に求められる職業であることを考えれば、この結果にも納得がいく。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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