ロボットを使った移動式のピザ店Stellar Pizzaは、新興技術のハブとなっているロサンゼルスで、2022年春に開店する予定だ。ロボットが調理するピザと移動式のデリバリーを組み合わせるというアイデアは以前にもあったが、その時はさんざんな結果に終わった。今回はうまくいくのだろうか。
うまくいくかもしれないが、それにはタイミングがカギとなるだろう。いち早く参入することが必ずしも有利になるとは限らないことはよくある。かつて評価額が20億ドル以上にも達したと報じられたZume Pizzaはこのことを思い知り、2020年初めにロボットによるピザ事業を廃止して、従業員100人以上を解雇した。
しかし、効率性を追求する物流企業を目指したZumeの強い野望が1日あたり1000万ドル(約11億3000万円)を超えるバーンレート(資金燃焼率)につながったことから、新たに参入する企業や既存の人気店はテクノロジーを活用したピザ事業の展開により慎重なアプローチを取っており、新型コロナのパンデミック後という環境のせいもあって、クイックサービス方式の業界は、入り口のところからやり方を変えざるを得なくなった。注文を受けて調理するピザの自動販売機を手がけるPiestroなどの開発企業だけでなく、先ごろピザ調理ロボットの特許を取得したLittle Caesarsといった業界の大手チェーンもその一例だ。Basil Streetも、米国各地の軍事基地や企業のオフィス、大学、病院、そして新たに空港にも、自動化したピザのモバイルキッチンを展開している。
その最新の事例が、Stellar Pizzaによる移動式ピザレストランのオープンだ。同社は、SpaceXのエンジニアだったBenson Tsai氏が設立し、最高経営責任者(CEO)を務める企業だ。エンジニアリングチームにもSpaceX出身者が名を連ねており、レシピ作りにはSpaceXでエグゼクティブシェフ兼調理サービス担当ディレクターを務めていたTed Cizma氏が参加している。
同社が目指すのは、最新の技術と最先端のロボットでピザの製造とデリバリーに革命を起こすことだ。Stellar Pizzaは新しいピザマシンで1枚のピザを5分とかからずに焼き上げる。複数のマシンを使うことで、45秒に1枚のペースで調理が可能だ。ロボットはフードトラックに積み込まれ、既存店よりも着実なペースで、美味しい出来たてのピザを大量に提供できる。
このビジネスモデルはZumeのものとあまり変わらないが、Zumeの野望は同社を破滅に導いた。Zumeはソフトバンク・ビジョン・ファンドから3億7500万ドルを調達し、現実的な事業計画もないまま、素晴らしい技術を利用して規模を拡大し始めた。また同社は、防水コーティングの紙製容器が登場してから最大とも言えるフードデリバリー業界の機会、つまり世界的なパンデミックも活かせなかった。パンデミックのせいで、世界各地で長期間にわたって人と会って食事する機会が急に減り、消費者は殺菌された状態で用意された食事をとることにこだわるようになってしまった。
そこにロボットが登場する。開発者は発想を180度転換した。自動食品製造機の分野にいち早く参入したバーガー製造ロボット「Flippy」などが実際に普及するとは、少し前なら考えられなかっただろう。初期の段階にあるため当座は小規模なテストケースに限られるが、サラダ製造マシンやテイクアウトの食品を運ぶ自律移動ロボットは、今や現実のものとなった。
Stellarのロボットによるピザ作りは、作りたての生のピザ生地から始まり、それを押し広げ丸いピザクラフトに成形する。それから特製のソースと新鮮なトッピングを乗せる。最後に、この生の生地を高温に熱したカスタムデザインのオーブン4台の内の1台に入れて焼き上げる。つまり、人間がピザを作る場合と同様の作業をしており、そこに特段の不安要素はない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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