筆者の子供が、キッチンテーブルに置かれたタワー型のスクリーンからテーブルに投影されるゲームをプレイしつつ、スクリーンを通して英国にいる祖母と話す。祖母は笑顔を浮かべて、その様子を眺めている。筆者は、誰かが裏庭にいることを伝えるためにやってきた犬型ロボットを撫でるので忙しい。その間、スマートフォンには、リビングルームに浮いているカメラ搭載ドローンからの映像が表示されている。それが、Amazonが2021年秋のハードウェアイベントで披露した未来のSFのビジョンであり、2021年中に現実になる見通しだ。だが、強い既視感もある。
Amazonの今後のパイプラインは、製品を展開するペースが速くなっているようだ。そして、それらはすべて、オプトイン方式で招待専用の実験的な製品という形で提供されている。未来のテクノロジーの目玉は999.99ドル(約11万円)のロボット「Astro」で、2021年中に登場する予定だ。だが、家の中に浮かばせて室内の見回りをさせることができ、役目が終わると自動的にドックに格納される249ドル(約2万8000円)のホームカメラ搭載ドローン「Ring Always Home Cam」や、スマートスクリーンと、仮想のタブレットを投影するプロジェクターを組み合わせたような「Amazon Glow」も忘れてはならない。
Amazonの今回の製品イベントの動画で、冒頭に小説「レディ・プレイヤー1」のプロローグが表示された「Kindle」が登場したことに、われわれはすぐ気づくべきだったかもしれない。あるいは、Amazonのハードウェアおよび製品のイノベーションに取り組む「Lab126」部門のプレジデントを務めるGregg Zehr氏が、そのプレゼンテーション動画で、「問題は、『それを作るべきだろうか』ということではなく、『それをやらない理由があるだろうか』ということだった」と述べたことにも、すぐに気づくべきだったのかもしれない。
Zehr氏は後で、「これは当社の最後のロボットではなく、最初のロボットだ」と言っていた。
実際、Amazonは必ず登場するであろう後継製品に言及せずにはいられなかった。Amazonのデバイスおよびサービス担当シニアバイスプレジデント(SVP)であるDave Limp氏は最後に、「『Astro 2』は今後さらにスマートになり、能力を向上させていくだろう」と語ったのだ。
Amazonのさまざまな次期製品において、SFがアイデアの出発点になっていることは明白だ。AmazonのAstroのソフトウェア担当ディレクターであるSuri Maddhula氏は、「SFを現実のものにしようとしている」と述べており、実質的にそのことを認めている。Amazonのイベント動画の冒頭でレディ・プレイヤー1が登場したことには既視感があった。このSF小説は、FacebookとOculusの仮想現実(VR)製品でも同様に参考にされていたからだ。
これらの製品には、大胆で、ひょっとしたら行き過ぎている実験というような雰囲気があり、即座にディストピアを想起させてしまうかもしれない。あるいは、「ジュラシック・パーク」の「速く動いて、未来を作る」というコンセプトを思い出す人もいるかもしれない。なぜ、「それを作るべきだろうか」ということが問題にならなかったのだろうか。Astroの設計者たちの言葉から推察すると、ロボットはどのみち現実のものになる、という明白な信念があるようだ。確かに、似たような野心、部屋をパトロールする機能、テレプレゼンス機能を備えた家庭用ロボットはすでにいくつも存在する。Astroほど高度なものや考え抜かれたものはないかもしれないが、今も進行中のVRの進化と同様、未来のテクノロジーはしばらく前から現実のものになっている。
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