「Machi Pass」は、個人1人1人がもつことになる、まちや住まいに関するサービスの共通認証IDを一元管理するシステムで、これ1つでさまざまなサービスをシームレスに利用できる利点がある。商業用途、マーケティング用途などでは個人情報の匿名加工をプラットフォーム上で行うなど、プライバシーにも配慮する。
Machi Passの個人側のメリットとして、利便性の向上以外に同氏が挙げるのは安心感だ。現在、多くの人はオンラインでもオフラインでも、施設・サービスごとに異なるID(カード)やパスワード、生体認証などを使っているはず。自分を特定できる情報をそれぞれの施設・サービスに預けることになるため、どうしても不安はつきまとう。
しかしMachi Passのようにエリア単位で一元管理するシステムであれば、1箇所に認証情報を登録するだけでよいため、そうした不安は少ない。「これからの社会において、安心して生活するための1つのライフラインになるのではないか」と、春日氏はアピールする。
さらに、Machi Passによって街の各施設・サービスの利用状況を横断的に収集できることから、MELONに参画してサービス提供する事業者や行政側のメリットも大きい。
たとえば、これまでは個々の施設・サービスだけだと個人の一面的な情報しか得られなかったが、MELONによって他の施設・サービスも含めた統合的なデータが得られるようになる。広範で多様な分野にまたがった情報をもとにすることで、より的確なニーズ分析が可能になるだろう。入店せず素通りされてしまうと、その店舗は顧客の情報が得られないどころか、顧客の存在にすら気付けなかったが、そうした顧客の情報も活かせるようになるはずだ。
しかし、ただデータを蓄積・活用するバックエンドのシステムを整えただけでは、同社の目指すまちづくり、住まいづくりは完成しない。「データを扱う仕組み以上に、データが提供され続ける仕掛け・体験設計の方が本質的なテーマ」と同氏が言うように、三菱地所は4月に「丸の内ポイントアプリ」、9月に「みなとみらいポイントアプリ」をリリース、「今後は購買体験にとどまらず、あらゆる関係人口に対する体験提供のプラットフォームとして進化させるべく計画中」と言う。そしてデータだけではなくこうした顧客接点を社内外にオープンにすることで初めて、MELONがローカルプラットフォームとして機能するのだ。
もちろん、街ごとに新たにアプリを作るのは、コスト面で難しい場合もある。そのため、同社では既存のメッセージアプリを利用する方法も用意している。メッセージアプリでユーザーが使っているIDをMachi Passと連携し、それをもとに街の行政システムや各種サービスを提供するという形だ。
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