コロナ禍で、いったん止まっていた世界が、また少しずつ動き出している。以前と同じような日常を取り戻すには、まだしばらく時間がかかるだろうが、それでも、仕事をして、毎日を懸命に生きていこうとしている。これまでに経験したことがないほど、いろんな局面で足止めを食い、思ったように前に進めないことが多かったかもしれない。そして今後も、困難なことは多いだろう。そのような状況から少しでも早く抜け出せるように、また、新しいことにチャレンジしていくためのヒントになるように、今回は、仕事に関する知識をアップデートするのに役に立つ本を5冊紹介する。
まずは、予測不能なことばかりのこの時代において、急激な変化に対応していくには、どうすれば良いのかを本書で学んでおきたい。データさえあれば、さまざまなことが予測でき、対策を講じることができるかというと、そうではない。しかし、データがあれば、「どのように変化に対応すべきか」が分かるこという。
また、「これから、どのように生きるべきか?」という問いに対する答えはシンプルで、「人を幸せにすること」だという。テレワークや外出の自粛などで、人とのコミュニケーションが取りにくいこのような時代であるから、「幸せ」という言葉の重みについて、考え込んでしまうかもしれないが、本書を読み進めていくと、根底に流れる著者の「人は皆幸せでいて欲しい」という思いを感じ、温かい気持ちになれるのではないかと思う。巻末の「しあわせ憲法(草案)」から読んでみるのもお勧めだ。
勢いのある新しいビジネスモデルを知ることは、今後のビジネスの方向性を模索するのに役立つ。本書は三部構成で、中国で急成長を遂げた企業について、そのビジネスモデルを分かりやすく紹介している。スマホ向け漫画アプリや、オンライン英会話サービスなど、これまでにあった業態でありながら他社より飛び抜けて成長した企業などが取り上げられており、他社と一線を画すサービスの詳細と分析が興味深い。
また、日本でもすでに名前の知られている、テンセントやアリババといったグローバル企業のエコシステム作りについてや、モバイルインターネットに関する企業の市場の見極め方、さまざまなビジネスモデルをスピーディに展開していく姿勢なども、整理して紹介されているので、情報量は多いが読みやすい。勢いのある企業から学べることは、多いだろう。
新しいビジネスモデルについて学んだあとは、もう少し身近な、会社や組織での人と人とのあり方、上司と部下のあり方についても、新しい考え方を知っておきたい。本書で解説される「1on1ミーティング」とは、一般的な「面談」とは異なり、上司から部下へ一方的に評価を伝えるようなものではなく、メンバーが主体となって話すことで、自ら前向きに新たな課題を見つけたり、共有しておきたかったことをフランクに共有できたりする場となることが理想のようだ。
本書では、面談と1on1ミーティングの違いを分かりやすく示し、これから1on1ミーティングを取り入れようとする組織でも、取り入れやすいように、順を追って説明されている。具体的なコミュニケーションの取り方とコーチングの手法について学べるので、1on1ミーティングに参加する側のメンバーにも役立つ。
日常的に役立つ、新しいやり方を取り入れるのはどうだろう。本書で紹介されている「グラフィックレコーディング」とは、伝えたいことや考えを、シンプルな記号や図形やイラストで表す技術で、見えていない物事を整理して、実行に移すのに役立つ。絵を描けるようになることを目指すのではなく、イラスト化することで、「具体的な情報を抽象的に変換する力を鍛える」ものだ。
仕事でプレゼンや情報をうまく伝えるために役立てたり、習ったことを整理して記憶するために使ったり、計画やタスクの洗い出しに利用したりと、応用範囲は広い。本書には、グラフィックレコーディングをさまざまな場面で利用している人の例が多数紹介されており、「こんな使い方もできるのか」と、柔軟な発想に触れることができる。
新しいことやモノを受け入れるために、まず、雑多になっている身の回りを片づけてみるというのもいいかもしれない。片づけて、「隙間」を作ることも重要だ。本書では、「散らかっている」とはどのような状態なのか、なぜ散らかったままにしてしまうのか、なぜすぐに物を買ってしまうのかなど、心理的な面から自分を見つめ直すところから始める。
整理整頓や片付けというと、すぐに物を捨てなければいけないような、もう物を買うことを我慢しなければいけないような気にさせられることが多いが、そうではなく、「本当に自分が求めていることは何か?」に目を向けさせてくれるのが、本書の特徴だ。「家とスケジュールをスッキリさせた後」なら、新たな取り組みを始める気持ちも生まれやすいに違いない。
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