世界中の通信事業者が、自社のネットワークを5Gに対応させる取り組みを急ピッチで進めている一方で、ほぼすべての主要スマートフォンメーカーは、5Gモデルの端末を提供している。Appleのように、人気の高い新型デバイスで4G専用モデルを提供しなくなったメーカーもある。そうした動きにより、スマートフォン市場で5Gモデルのシェアが拡大している。
Strategy Analyticsによると、2020年、5Gスマートフォンは世界出荷台数の5分の1以上を占め、2021年には、その割合が45%に跳ね上がる見通しだという。5Gスマートフォンのシェアは今後も拡大の一途をたどることになる。
消費者は、大量に出荷されるようになった5Gスマートフォンを購入しているが、実際のところ、多くの人は5Gが目当てでそれらのスマートフォンを選んでいるわけではない。単に買い替えの時期だという理由でスマートフォンを物色していたら、ほとんどのデバイスに5Gが搭載されていた、という人もいるだろう。その一方で、5Gを利用している消費者は、その接続速度と応答性を有効に活用できるものがあまりないと感じているかもしれない。
「現在、米国で新しいスマートフォンを購入する人は、選択肢のほとんどが5Gスマートフォンになるだろう」。そう語るのは、Strategy Analyticsのアナリストを務めるKen Hyers氏だ。Hyers氏によると、Strategy Analyticsのデータでは、「販売されている5Gスマートフォンの数」が、通信事業者に支払われる5Gの利用料金に対して「はるかに多い」ことが示されているという。現在のところ、スマートフォンの販売に関して言えば、「5Gは嬉しいおまけ機能かもしれないが、実際には、それほど販売をリードする要素になってはいない」とHyers氏は述べた。
何年もの間、テクノロジー企業(と米CNET)は、5Gが私たちの生活をどのように変えるかについて論じてきた。このテクノロジーの特徴である高速接続と応答性、信頼性は、自動運転車を実現させ、医療に革命的な変化をもたらすと考えられている。拡張現実(AR)と仮想現実(VR)の没入感はさらに高まるはずだし、ゲームも大幅に進化すると予想されている。しかし、ほとんどの消費者にとって、そうした予想はまだ現実になっていない。
現在の5Gの展開と採用は、10年前の4Gを上回るペースで進んでいるが、この新テクノロジーの利点はまだそれほど明白ではない。4Gによってスマートフォン時代が到来した。4Gがなければ、UberやAirbnb、Instagram、TikTokなどのアプリは存在せず、「iPhone」やサムスンの「Galaxy」などのスマートフォンも必須のデバイスにはなっていなかっただろう。5Gは速度と応答性が優れているものの、少なくとも消費者の立場から見ると、魅力的な用途やサービスがまだ存在していない。現時点で、5Gは、すでに行っていることを少しだけ速く実行できるようにするもの、という認識だ。
Hyers氏は、「5Gのユースケースに関して言えば、これまで、『球場を作ってしまえば、選手たちが来てくれる』という言い習わしに従って事が進められてきた」と話す。「通信事業者は5Gネットワークの拡張に着手し、今もその取り組みを続けているが、新しい球場の方が古い球場よりもはるかに優れているとは思えない。現時点では、この言い習わしがぴったり当てはまるとは思えない」
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」