新たな反トラスト法案はアマゾン、アップル、Facebook、グーグルにどう影響するか

CNET staff 翻訳校正: 編集部2021年06月24日 07時30分

 ビッグテック(大手テクノロジー企業)が大きな標的となっている。米議員らは6月に入り、シリコンバレーに集中する「無秩序な力」と見なすビッグテックの影響力を制御するために起草した5つの法案を発表した。これらの法案が可決されれば、反トラスト法にこの数十年で最大の変更が加えられることになる。

米議会議事堂
ビッグテックが米議会議員の標的になっている。
提供:Getty Images

 これらの法案はすべての企業に影響を与えるが、議員たちは明確に4社を想定している。下院反トラスト小委員会の有力メンバーであるKen Buck議員(コロラド州選出、共和党)はためらいもなく名指しした。

 「Apple、Amazon、Facebook、Googleはイノベーションより権力を優先し、その過程で米国のビジネスと国民に損害を与えた。4社は、さまざまな反競争的行為で競争を抑圧し、オンライン市場で独占力を維持している」とBuck氏は発表の中で述べた。

 AppleとAmazonはコメントの依頼に回答せず、FacebookとGoogleはコメントを控えるとした。

 ビッグテックに対する政府の戦いは近年活発になってきている。2020年7月、議会は4社の最高経営責任者(CEO)を公聴会に召喚し、6時間にわたって問い詰めた。15日には、Joe Biden大統領がLina Khan氏を米連邦取引委員会(FTC)の委員長に任命した。Khan氏はビッグテックの批評家として知られ、「Amazon’s Antitrust Paradox」(Amazonの反トラスト・パラドックス)というタイトルの論文の著者だ。任命は、上院が同氏の委員長就任を承認した数時間後のことだった。

 5つの法案は以下の通りだ。

 法案が法律になるまでには長い道のりがある。だが、施行された場合、Amazon、Apple、Facebook、Googleにどのような影響があるのかを見ていこう。

Amazon

 American Innovation and Choice Online Actは、AppleとGoogleにも影響を与える可能性があるが、直接狙っているのはAmazonのようだ。この法案は、eコマース大手が「Amazon Basics」のような自社製品を検索結果で競合製品より優先させる方法を制限する。また、Amazonが他社のデータを使って競合製品を開発するのを困難にする可能性がある。

 この法案は、eコマースプラットフォームが他社に「優先ステータス」を与える条件としてさらなる製品の購入を求めることを禁じる。これは、Amazonの行為としてスマートフォンの周辺機器メーカーが非難したことだ。PopSocketsのCEO、David Barnett氏は2020年、議会での証言で、Amazonが同社ウェブサイトからPopSockets製品の模倣品を削除する代わりに200万ドル(約2億2000万円)分の広告を購入するよう要求したと述べた。Amazonはこの主張を否定している。

(担当:米CNET Laura Hautala)

Apple

 AppleのApp Storeは、特に2つの法案、American Innovation and Choice Online ActとEnding Platform Monopolies Actのターゲットだ。批評家たちはこれまでも、「iPhone」や「iPad」のユーザーが「App Store」からしかアプリをダウンロードできないのは反競争的だと糾弾してきた。Appleはまた、開発者にアプリ内決済プロセスの利用と最高30%の手数料の支払いを義務付けている。アプリ内決済には音楽のサブスクリプションも含まれる。

 Ending Platform Monopolies Actは、おそらくAppleの無料アプリ「Pages」「Keynote」「Numbers」にも影響する可能性がある。これらのアプリはMicrosoftの「Word」「PowerPoint」「Excel」と直接競合する。この法案はまた、Appleのアプリ内決済の義務付けを脅かす可能性もある。

 CNBCの試算によると、App Storeの2020年の総売上高はおよそ640億ドル(約7兆1000億円)。この試算には、Appleの取り分と開発者の収益の両方が含まれている(AppleはApp Storeの詳細な財務情報を開示していない)。

(担当:米CNET Ian Sherr)

Facebook

 Platform Competition and Opportunity Actは、Facebookのようなプラットフォーム大手が競争上の脅威となる企業を飲み込むことを阻止するだろう。これは、Facebookが非難されてきた慣行だ。例えばFacebookは2012年、写真に重点を置くSNSのInstagramと競争するのではなく、買収した。Facebookは競合を真似るか、潰すか、買収するやり口を長く非難されてきた。

 ACCESS Actは、ユーザーがデータを他のサービスに移行しようとする際に直面する困難に対処しようとしているようだ。例えば自分の友達リストを他のSNSに移行したいような場合だ。議員たちは既に、Facebookがユーザーデータの制御を握っていることを批判している。

(担当:米CNET Queenie Wong)

Google

 少なくとも3つの法案が、Alphabet傘下のGoogleに大きな影響を与えそうだ。「利益相反」を引き起こすビジネスの所有を禁じるEnding Platform Monopolies Actは、GoogleがYouTubeを売却しなければならないことを意味する。なぜなら、Googleは検索結果に動画を表示する検索エンジンを所有しているからだ。

 American Innovation and Choice Online Actの「自己優先」の禁止は、Googleの検索ビジネスに影響を与える可能性がある。Googleは既に、検索結果で競合のコンテンツよりも上に自社のショッピングやトラベルのコンテンツを表示することで批判されている。Googleの検索と広告ビジネスを対象とする法は何であれ、同社の生命線に対する脅威だ。同社の年間約1800億ドル(約20兆円)の売上高のほとんどは検索と広告が生み出しているからだ。この法案はまた、支配的なシェアを持つモバイルOS「Android」のためのアプリストア「Google Play」にも影響するだろう。

 Platform Competition and Opportunity Actは、Googleの成長を妨げる可能性がある。この法により、Googleのような巨大企業が他社を買収するために規制当局の承認を得るのが難しくなる。Googleを広告の巨人に成長させた2008年のDoubleClick買収のような取引の審査はより厳しくなるだろう。同じことは2006年のYouTube買収にも言える。YouTubeは今や、地球上で最も支配的な動画プラットフォームだ。Googleは事業範囲を拡大しようとしているが、将来の買収は反競争的であると見なされる可能性がある。

(担当:米CNET Richard Nieva)

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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