インディーゲームの世界進出を後押し--マーベラスが開発者支援プログラムに取り組む狙い - (page 2)

日本のインディーゲームやクリエーターは世界が注目している

――参加にあたって、作品に対してマーベラスがパブリッシングの優先交渉権のみを持つとありますが、条件としてかなりライトな印象を持っています。

山崎氏:GameBCNのフォーマットに準じて日本でも展開したいと考えていました。そしてGameBCNはNPO法人ですから、プログラムそのもので収益を得ているわけではありません。日本でもフェアなプログラムであることを理解していただきたいですし、社会貢献に近い形でプログラムを実施したいと思いましたので、求めるものはミニマムな条件にしました。

一條氏:あくまで権利はクリエーターが保有するものになってます。例えば、あと1年開発を継続する、あるいは自社でリリースするといったことについても、クリエーター側の判断で決められるものになってます。ほかのプログラムの事例はお話できませんが、私自身はこの条件を見て驚いたところです。

佐藤氏:海外でも、インキュベーションプログラムで権利取引を設定しているものがありますし、世界で見ても珍しいものだと感じてます。ただ、日本においても権利取引を前提条件にすると、クリエーターたちが引いてしまう可能性があります。親しみやすく、敷居を高くしない形で、いろいろ開発者が集まる仕組みで行きたいと考えてます。

山崎氏:僕らがやりたいのは、オープンで健全なプログラムであること。そして、持続的にクリエーターが作り続けられる環境を構築することです。ここに負担をかけすぎるとうまくいきません。最終的に、より良いインディーゲームクリエーターとゲームタイトルが継続的に生み出せる環境になれば、マーベラスとしてのリターンにも繋がるものと思っています。

公式サイトより
公式サイトより

――プログラムの参加希望者に求めることはありますか。

山崎氏:公式サイトに「チームへの要件」という形で記載していますので、それを前提にしつつ、ある程度動作しているもの、体験版に相当するデモは必要です。そして、ゲームとしての強みがある程度説明できる状況にあるのもひとつのラインとしてあります。そのうえで、重視しているところは熱意です。自分が作りたいものをハッキリイメージできていること。そして作り続ける、作りきる覚悟が必要です。

一條氏:やはりマインドが大事で、このゲームを世界中のプレーヤーに遊んでほしいという意志のある方で、英語力やコネクションに乏しい、ゲーム制作で困っていることがあるといった課題を感じているクリエーターは、iGiにフィットすると感じています。そのうえで、制作しているゲームにいままでにない強みがあるとよりいいです。

山崎氏:2年間で多数のゲームやチーム、クリエーターを見てきたなかで、熱意もさることながら、競合も理解したうえでの強みをハッキリと定義できているチームが実績を挙げています。そうした感覚を、国内のクリエーターにも持ってほしいと思います。

佐藤氏:インキュベーションプログラムですので、学校のような講師と生徒という関係ではなく「道場」だと思っていただけたら。先輩と後輩、兄弟子と弟弟子のような関係がイメージしやすいかと。なので、受け身ではなく前向きな相談をしてほしいです。さらにいうと、メンターも含めてお互いに高めあう存在であること。コンテスト等ではライバル関係にもなりますから。そういった対等な関係でありつつ、プログラムが終了してもそれっきりではありません。メンタリングは終了しても、そこで培った人の繋がりを生かした活動ができるようにしていきますし、継続することで横のつながりを広げていきたいと考えてます。

――このプログラムが理想的な形で継続したならば、日本のインディーゲームシーンはどのように変わるか、その未来像はありますでしょうか。

山崎氏:どんどんインディーゲームクリエーターが増えて、今の3倍から5倍ぐらいに存在する状況が理想……というよりも通過点かなと考えてます。

一條氏:今回は半年間で5チームですが、そのチームは次にメンターになったり卒業生だったりと、OBのような形で関わることもあるでしょうし、他のインディークリエーターとのネットワークができていきます。このプログラムを継続的に行うことでクリエーターの創出、そして世界に通用するタイトルが出ることが、理想的な未来です。

山崎氏:このプログラムが終わってもずっと作り続けてもらいたいというのと、作っているゲームが商品化されて、ユーザーに届く流れを見届けていきたいという2つの思いがあります。

一條氏:日本にも小規模ゲーム開発の文化はあったのですが、そのクリエーターが海外に向けて展開したいと思ったときのチャンスがなかったんです。それでも、Steamなどでリリースして大きくなってきていますし、「BitSummit」「デジゲー博」「TOKYO SANDBOX」といったインディーゲームの展示会も国内で盛り上がりを見せているというのが、ここ5年の動きとしてあります。それを加速させていきたいというのが僕の思いです。

佐藤氏:日本のインディーゲームが見えにくい状況にあるとお話をしましたが、海外の人が期待していないわけではなく、むしろ強く期待されています。iGiの話をすると「手伝わせてほしい」ぐらいな勢いで言われます。日本のレジェンドクリエーターだけではなく、今作っているクリエーターも相当期待されている状況はあるんです。米国や欧州はもちろん、東南アジアやインドといった国でもそうですし、地域差はなく全世界が注目していると言っていいです。そのことを感じてほしいです。

山崎氏:海外の方にプログラムのことを話すと、そもそも日本のゲームに親しんできた人たちが多くて、日本に対する想いが熱くて温かいです。日本のゲーム業界をよりよくしたいという熱意や情熱も感じる方は少なくありません。

一條氏:iGiを通じて成長を促し、世界に発信していくことが、日本のゲーム産業において大きな発展に繋がるものだと思いますし、このことを日本のゲーム業界に携わる方々にも提示していきたいです。

山崎氏:米国のMarvelous USAでもインディーゲームのパブリッシングを行っていますが、最近は評価が高いタイトルも多くて選べない、どう絞っていくか悩んでいるという状況になっています。それぐらいの状況を、日本でも作るというのが理想ですね。

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