2021年に入ってすぐ、シリコンバレーに1つの労働組合が誕生した。Googleの親会社であるAlphabetの従業員が結成したAlphabet Workers Union(AWU)のことだ。米国とカナダのAlphabet従業員全員に向けて開かれた労働組合としては初めてのもので、同社従業員の半数以上を占める非正規労働者、ベンダー、請負業者も対象となっている。
現在の組合員は800人を超えたところで、これはAlphabet全従業員の1%にも満たないが、相対的に規模が小さいからといって、行動を起こし、結果を出すことを控えているわけではない。
AWUは2月初め、全米労働関係委員会に対して最初の訴えを起こした。契約社員のShannon Waitさんが、勤務するデータセンターでの労働条件について苦情を表明したところ、一時的に契約を停止されたという経緯をめぐってのことだ。この訴えから1週間もしないうちに、Waitさんは職場復帰を求められたとTwitterに投稿し、この一件をAWUが「合法的な権力」を持つようになった証拠だとしている。
AWUの結成は、活動家の従業員とAlphabet上層部との間で長きにわたって続いてきた闘争の結果だ。両者の間では、社内で発生する紛争をいかに解決するか、Googleの強力なテクノロジーをどう運用するかをめぐって議論が続いてきた。その見解の相違は、今をさかのぼる2018年、2つの極秘プロジェクトが明るみに出たときに如実に表れた。同社の「Don't Be Evil(邪悪になるな)」というモットーに反していると一部の従業員から指摘されたプロジェクトだ。
1つは米国防総省による「Project Maven」をめぐる契約で、Googleがドローン用に開発した人工知能(AI)が軍事利用される可能性があった。もう1つが「Project Dragonfly」で、中国市場に向けて、政府の検閲とトラッキングを容認する検索エンジンを開発するプロジェクトだった。
「われわれが最も不安になったのは、そのプロジェクト(Dragonflyのこと)の担当者ですら、情報が漏れるまで、そのようなプロジェクトに関わっているということを知らなかったことだ。Project Mavenも同じようなものだった」。AWUの副会長を務めるChewy Shaw氏は、こう語っている。
この2つの極秘プロジェクトについては、いずれも従業員から反対運動が起こった。のちにGoogleは、両プロジェクトとも再開あるいは始動しないと決定したと報じられている。
こうした対立から得た教訓が、AWUで定められた7つの行動規範につながっている。透明性もその1つだ。また、「ハラスメント、偏見、差別、報復のない(中略)友好的な環境」を育むという目標も掲げられている。
Googleには、ハラスメントと報復に対するポリシーがあり、これは一般にも公開されている。Googleの広報担当者は米CNETに対し、「どの申し立ても社内で無視されることがないように、当社は従業員が問題を報告できる経路を、匿名のものも含めて複数用意しており、報復的措置の申し立てはすべて調査している。それでも、そうしたポリシーが意図どおりに機能していない場合もあることは、長年の間に従業員から指摘されてきた」と語った。
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