CNET Japanが2月に1カ月にわたり開催したオンラインカンファレンス「CNET Japan Live 2021 ~常識を再定義するニュービジネスが前例なき時代を切り拓く~」。2月25日には、タレント・女優であり研究者としても活躍する、いとうまい子さんが登壇した。講演当日はなんと、いとうさんのデビュー38周年の記念日。18歳で始めた芸能生活と、45歳で大学に入学して歩んできた研究者としての歩みを振り返りながら、“二刀流”で楽しく、しなやかに生きる術を語った。
「20代は暗黒時代だった」ーーそう話すいとうさんだが、現在はNHKなど複数のテレビ番組にレギュラーで出演するほか、早稲田大学院 人間科学研究科博士課程の「基礎老化学」の研究室に所属し、東京大学大学院で「老化のメカニズムの解明と防止方法の開発」を目指して共同研究をしている。また自らも会社を経営し、AIベンチャーのエクサウィザーズのフェローも務めるなど、多忙かつ充実した日々を送っているという。
今回、いとうさんにとってオンライン講演は人生初とのことだったが、質疑応答でも惜しみなく体験談や持論を披露。美しさや若さを保つ秘訣を尋ねられると、コロナ禍で密を避け、夜10時から深夜まで大学のラボで実験を繰り返し、睡眠時間は3〜4時間であることも明かした。
「お肌のゴールデンタイムなど他人の意見を気にするより、朝鏡を見て『今日も大丈夫頑張ろう』と、自分自身を励ましてあげるほうが、よっぽど自分にとってはいい。好きなことをやっているので、全然大変ではなく楽しい」と答えるなど、やりたい気持ちに従って生き、思考や気持ちをポジティブに保つことが大切だと視聴者に語りかけた。
いとうさんが芸能界入りしたのは1983年2月25日。少年マガジン初代グランプリに輝き、その翌年「微熱かナ」でアイドルデビューした。当時の芸名は伊藤麻衣子という漢字表記。いとうさんは、「少女が大人になる時 -その細き道-」「不良少女とよばれて」などに出演した当時を振り返りながら、「可愛くニコニコ笑っているなんて、私の性格には全然合わなかった。アイドルがすごく嫌だった」と話し、不良役につきたいとプロデューサーに直談判したエピソードを紹介した。
「『不良少女とよばれて』で不良役をやれば、アイドルではなく役者として認めてもらえるかもしれないと思って、当時は携帯電話もなかったので、プロデューサーさんのご自宅に電話をしました。でもね、『もう決まっているから無理だよ』と、すぐに電話を切られてしまって。どうしても諦めきれず、1週間後にもう1回電話しました。すると、決まっていた子が事務所を通じて辞退したとのことで、『麻衣子のその狸顔で、できるかどうか分からないけど、やってもらおうかな』と。本当だったら違う人がなっていた役を、頑張ってできることになりました」(いとうさん)
そこから“地獄に落ちる”きっかけになったのは、デビューして4年目に出演した「愛しのハーフムーン」。青春映画だといわれて撮影に挑むも脱ぐシーンがあり、無事に撮影を終えるたものの「脱ぐか、脱がないか」で事務所と揉めてしまい、事務所を去る結果となったのだ。「いまでは事務所を辞めることは珍しくありませんが、当時の芸能界の常識では、事務所を抜けると、その世界で生きていくのは不可能に近かったんです。事務所の社長さんからも、『こんなやめ方をしたら2度とこの業界で働けなくなるよ』と言われました」(いとうさん)
「いま思えば若気の至りというか、後悔先に立たずというか、本当にいろいろなことが頭をよぎるのですが」と続け、舞台の仕事で経験を積んだこと、顔が童顔で苦労したことなどを紹介しつつ、「暗い暗い20代を過ごしていた」と話した。
30代になって、伊藤麻衣子から「いとうまい子」に芸名を変更。これが転機となった。きっかけをくれたのは、愛犬アトムの存在。当時のいとうさんは、大人っぽくなりたい、認められたい、好かれたいという想いから、ヘアスタイル、メイク、服装など、「しがみつくように、いろいろやっていた」が、アトムを見ているうちに、気持ちが変わっていったという。もしかしたら「鉄腕アトム」を連想させる愛犬の名前は、いとうさんがロボット開発の道に進むことの示唆だったのかもしれない。
「そりゃ犬ですからね(笑)、お世辞も言わなければ高価な衣装も来ませんから。当然ですけど、アトムがありのまま生きている姿が本当に素晴らしくて、『自分らしく、そのままでいいんだよ』と言われているような気がしました。それで私も、いままでのスタイルを全部やめようと思ったのです。もし、それで仕事が来なくなっても、それが自分の人生なのだから、受け入れて、潔くやめればいいやって。肩の荷を全部おろしたら、人生が超〜楽しくなって。生きているだけでも楽しいし、いろんなことがありがたくて、恩返しをしたいという気持ちが湧いてきました」(いとうさん)
たとえば、テレビ出演した場合、スポンサーからテレビ局へと製作費が流れ、演者のギャラが支払われるというのも、「順繰り」だと気がついたという。「道を歩いているすべての人たちの行動が、流れ流れて私たちが生かされているということ。恩返しをしなかったら、バチが当たる、という気持ちになってきたのです」(いとうさん)
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