パナソニックは12月9日、小型低速ロボットを使った住宅街向け配送サービスの実証実験を報道向けに公開した。宅配やフードデリバリーなどニーズが多様化する一方で、人手不足などの課題を抱える配送サービスの新たな手法として提案する。
今回の実証実験は、12月7日に発表されたもの。神奈川県藤沢市の「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」で実施しており、11月に第1回の実証実験を開始。2021年2〜3月には、第2回目として、近所の店の買い周りをしてユーザー宅に届けるなど、非対面での荷物と商品の受け渡しなどの検証を行う。
小型低速ロボットは、電動車椅子をベースに荷物を置けるスペースを設け、改良したもの。高さ1150mm×幅650mm×長さ1150mmで重量は120kg。積載重量は30kgになる。正面に3D LiDAR、背面と側面、正面下部に2D LiDARを備え、障害物などを回避しながら自律走行が可能だ。時速は6km/hまで出るが、実際に走行してみるとスピード感があるため、実証実験では4km/hにて走行するという。約3時間の運行ができ、段差性能は4cm。
管制センターと自動走行ロボットを公衆インターネット網で接続し、管制センターのオペレーターがロボット周囲の状況を常時監視。遠隔管制センターは湘南T-SITE内に設置し、Fujisawaサスティナブル・スマートタウン内の湘南T-SITEからアクティブパーク南側の住宅街周辺を走行する。
「パナソニックでは、大阪府門真市の本社エリア内で社員向けの自動運転ライドシェアサービスを2019年から実施しているが、いろいろなことに気づいた。どれだけの人が移動し、どれだけの荷物を運んだかといったことや、時間帯によってどの運行ルートが活用されているかなど、たくさんのデータが集まった。Fujisawaサスティナブル・スマートタウンは小さなお子さんもいれば、高齢の方も住む場所。本社エリアとは違う場所で運行してみることで、新たなデータが集まり、さらなるアップデートにつながると考えている」とパナソニック モビリティソリューションズ担当参与の村瀬恭通氏は説明する。
本社エリア内では1人のオペレーターが4台のモビリティを監視しているが、今回の実証実験では、1台のモビリティからはじめ、複数台に増やしていく計画。街行く人に可愛がられるように、顔を模したデザインを採用しており、まゆげが動くことで、右折や左折を知らせる。
「バックします」や「お先にどうぞ」など、音声を発することで周囲の人に動きを知らせることもでき、周囲の人が声をかけるなど双方向のやりとりにも応じる。
2月からの配送サービスについては、子育て世代も多いFujisawaサスティナブル・スマートタウンの住民属性を考慮し、買い周りを想定しているが、将来的な収益化については「街全体で利便性をあげるようにしていきたい。ものを運ぶだけでビジネスが成立するとは想定しにくいので、蓄積したデータを活用するなど、いろいろなケースを考えていきたい」(村瀬氏)とする。
会見に登場した神奈川県知事の黒岩祐治氏は「私が神奈川県知事になり、すぐに立ち上がったのがFujisawaサスティナブル・スマートタウン。太陽光発電を多用するなど、素晴らしい発想だと思った。その後『ロボットタクシー』や『ロボネコヤマト』など、藤沢市を特区にすることで、テクノロジーを活用して社会課題を乗り越える姿を見てきた。今回の小型低速ロボットも新たな配送システムを作り上げるというもの。現在、新型コロナの問題もあり、非接触、非対面は注目されているキーワード。これは非常に大きな意義がある」とコメントした。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス