GoogleのEthical Artificial Intelligence(倫理的人工知能)チームの共同リーダーTimnit Gebru氏は先週、同僚らに送信した電子メールを理由に突然解雇されたことを明らかにした。Gebru氏の離職を受け、1400人を超えるGoogleの従業員と1800人を超える業界の専門家が、同氏を支持する公開書簡に署名した。Gebru氏は著名な人工知能(AI)研究者で、顔認識におけるバイアス(偏見、先入観)の危険性について研究し、ハイテク業界における多様性の欠如を公に指摘してきた。
書簡には、「Gebru博士はたぐいまれな才能を持ち、多大な貢献をしてきたことで、Googleに尊重されるのではなく、批判をかわすための保身、人種差別、ガスライティング、研究に対する検閲に直面し、今度は報復として解雇された」と書かれている。
Gebru氏は先週、Googleの社内メーリングリストであるGoogle Brain Women and Alliesに送信したメッセージを理由に解雇されたとツイートで述べた。そのメールを送信した後、メッセージが「Googleのあるマネージャーの期待にそぐわないものだった」というメモを上司から渡されたという。
I was fired by @JeffDean for my email to Brain women and Allies. My corp account has been cutoff. So I've been immediately fired :-)
— Timnit Gebru (@timnitGebru) December 3, 2020
Gebru氏は、メーリングリストに送信した最初のメールの内容を公開していないが、Platformerがメールを公開している。Platformerによると、Googleによる多様性、公平性、包括性の取り組みが無責任だと批判する内容だったという。Gebru氏はメールの中で、「したがって状況を変えたいのであれば、リーダーシップの責任に着目し、外部からも何らかの圧力をかけられるかについて検討することを提案する」としている。
Gebru氏はメールの中で、同僚とともに研究論文に取り組んでいたが、突然説明もなく、論文を撤回するように求められたと述べている。Gebru氏はTwitterで、研究論文をめぐる意見の相違について上司にメールを送った後に、対立が生じたことを明らかにした。同氏によると、自身は辞表を出していないにもかかわらず、上司がGebru氏の直属の部下らに対し、「彼女の辞表を受け取った」というメールを送信したという。その後、自分の企業メールアカウントが停止されたとしている。
GoogleのAI責任者Jeff Dean氏が米国時間12月3日に従業員宛てに送付した電子メールを、Platformerが公開している。Dean氏はメールの中で、Gebru氏の要求の1つが、論文の査読手続きの一環として、Dean氏とGebru氏の上司が助言を求めた全員を明らかにすることだったと述べている。また、Dean氏は従業員に対し、Googleの多様性プログラムに引き続き取り組むよう促した。Dean氏は、「数百人もの従業員が今週、重要なDEI(多様性、公平性、包括性)プログラムに関する取り組みをやめるよう求めるメールをTimnit(Gebru氏)から受け取ったことも残念に思っている。取り組みはやめないでほしい」としている。
米CNETはGebru氏とGoogleにコメントを求めたが、Gebru氏から回答は得られていない。GoogleはDean氏の電子メールの内容以外に回答することを控えた。
Gebru氏が解雇されたことを明らかにして以降、Googleの元従業員らは「@timnitGebruを支持する」などとツイートし始めた。
Googleはこれまでにも、労働問題への対応に関して激しい批判を浴びてきた。Gebru氏がツイートした同日にも、全米労働関係委員会(NLRB)が、Googleが米国の労働法に違反しているとして告発状を提出したことを明らかにした。NLRBは告発状の中で、Googleが同社に対する抗議活動に関与した従業員らを監視し、その後解雇したとしている。
ここ数年では、Googleが従業員の反発に対応する中で、混乱も生じている。同社の中国での取り組みや米軍との契約、上級幹部によるセクハラ疑惑への対応などに対し、一般社員が声を上げ、批判してきた。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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