コロナ禍でも成長する企業の経営者、事業責任者が一同に介して、コロナ禍における最新のトランスフォーメーションの事例や、これからの動向についてディスカッションするカンファレンス「Conference X(カンファレンス エックス)」が、12月11に東京ミッドタウン日比谷で開催される(無料のオンライン配信有)。
同日のセッションは、BX(Business Transformation)、DX(Digital Transformation)といった現在注目のキーワードから、AX(Alliance Transformation)やSX(Social Transformation)といった新たな概念まで、4つの「X(トランスフォーメーション)」をテーマに議論する。
登壇者は、金融業界からマネックス証券のCEO 清明祐子氏、不動産からプロパティエージェント代表取締役社長の中西聖氏、ITからChatworkのCEO 山本正喜氏を始めとした、コロナ禍でも成長を続ける上場企業の代表。また、大企業からはミスミグループ本社 常務執行役員の吉田光伸氏、そして一般社団法人Public Meets Innovation代表理事の石山アンジュ氏ら含めて総勢16名と幅広い。
今回、各セッションのファシリテートを担当いただく2名に、「コロナ禍におけるトランスフォーメーション・共創」についてインタビューした。
1人目は、三井不動産 ベンチャー共創事業部の光村圭一郎氏。2人目は同カンファレンス主催者でもあり、デジタルトランスフォーメーションを推進するINDUSTRIAL-XのCEOである八子知礼氏。インタビュアーは、同カンファレンス主催&アライアンストランスフォーメーションのセッションを担当するシェアエックスの中川が担当した。
まず最初に、三井不動産の光村氏にセッションの方向性について伺った。
中川:光村さんは、東京ミッドタウン日比谷にあるオープンイノベーションスペース「BASE Q」を通じて、大企業の新規事業支援、ベンチャー企業との共創を推進していますが、企業の共創戦略や、ご支援内容、支援の方向性に関して、コロナによって変わることと、変わらないこと、それぞれあれば教えてください。
光村:コロナという“外圧”は、明らかに日本社会の変化のスピードを上げていると思いますが、一方で見えてきた世界は結局のところ、コロナ以前から予測されていた未来像をトレースしているだけなのではとも感じます。つまるところ、今動けている人たちは以前から準備できていた人たちと言えるでしょうし、困惑している人たちは準備をしてこなかった人たちだと言えるのではないでしょうか。
中川:コロナがなかろうと、来るべき未来がきたと。そして、その準備を当然のように進めていた人や企業は中長期的な視点では痛まなかった。
光村:大企業の決算はコロナによって痛むと思いますが、これだけ大規模な社会の変化が生じるときにイノベーションや新規事業に関する動きを減速させることはナンセンスです。一部、トレンドとしてのみ取り組んでいた大企業は退場するかもしれませんが、むしろ従来以上に活動が本格化していくのではないでしょうか。
中川:最近は「◯X(Transformation)」というキーワードが随分と使われるようになりました。光村さんは、コロナを経て、ご自身、また企業はどうトランスフォームする必要性があると思いますか?
光村:私自身は、これまでインターネットが切り開いたはずである「個」の時代が、いよいよ本格化するのではないかと感じています。企業と個人の関係はどんどん変わっていくでしょうし、個人を基点にイノベーションが起こるという認識がますます強まっていくと思います。逆に企業は、個の力や個をきっかけにした動きにどのように関与していくのか、ということを意識した運営を身に着けていく必要があると考えています。
中川:「共創する」というのはまさしく、企業間だけでなく個と企業もフラットな関係を築いていくとも言えますよね。今回のカンファレンスでは、オープニングとなる「BX(Business Transformation)」のファシリテートをご担当いただきます。金融(マネックス証券)、ITツール(Chatwork)、鉄道インフラ(JR東日本)と幅広い業界で成長を続ける企業の代表や事業責任者に対してどのようなアプローチで、彼らのクロス(トランスフォーメーション)戦略のインサイトに迫ろうと思っていますか?
光村:これからの世界は、以前のようにワークとライフが二分する時代ではなく、その境界線がどんどん曖昧になり、融合していくものと考えています。結果、私たちの生活のありとあらゆる面が変化にさらされるようになる。今回、登壇いただくのは、まさにそのような新しい生活に密着した領域の方々だと思っていますので、大きなスケールの展望をお聞きしつつ、今足元でどのような取り組みを行い、どのような変化のインサイトを掴んでいるのか、という議論ができればと思っています。
次に、DX(Digital Transformation)とSX(Social Transformation)のセッションをファシリテートする、カンファレンスの主催でもある八子氏に話を聞いた。
中川:コロナによって、DX推進における共創やコラボレーションのあり方に変化は生じましたか?
八子:コロナの影響により、多くの人がビジネスや生活様式を変えざるを得なくなっていますよね。1人だけで考えたり1社だけでDX推進していくことに不安を感じる方も非常に増えてきました。特に下期に入って行動制限が少し緩和されてからは、企業からより一層協力依頼をいただく機会が増えています。
中川:コロナ禍においてDX推進のポイントは何だと考えていますか?
八子:3つあると考えています。1つはデジタルを活用したあらゆる仕事のリモート化ですね。仕事場に出かけられないホワイトカラー中心にはこの手法はあらゆる産業で一気に浸透しました。オフィスを引き払う企業が増えるのもこの一環の社会現象です。一方で現場に行かなければ仕事にならない業界、製造業、物流業、小売業などは、人とロボットなどを組み合わせた自動化手段をより一層導入する必要が生じています。さらに飲食やサービス産業はデジタルを活用した新ビジネスに乗り出す必要も生じています。ゴーストキッチンやフードデリバリがその代表的な例です。すなわち、”リモート化・自動化・デジタル新ビジネス化”がポイントです。
中川:急激な環境、社会の変化、不安定さの中、人や企業はどう準備をすれば良いと思いますか?
八子:これまでのやり方やアプローチに依存するのではなく、時代の変化・環境の制約などを先読みしながら、できるだけ変化に柔軟なビジネス・生活の環境にシフトしていくことが考えられます。変化に柔軟に対応する能力を”Dynamic Capability"と呼び、経産省も最近ではよく使っているキーワードですが、その能力がこれまで以上に必須になりますね。
中川: 今回のカンファレンスを通じて、どんなメッセージを届けたいと思っていますか?
八子:DXのセッションでは、前述の変化に応じた柔軟で先進的なモデルを実現することの重要性を先駆者達の取組からひもといてお伝えしたいですね。SXのセッションでは、既存の枠組みにとらわれずに社会をよりよいものに変えていく、そんな先駆者のオピニオンを届けたいです。いずれも今のコロナ禍の最中にあって世間に希望を与えてくれるものと信じています。
最後にAX(アライアンス トランスフォーメーション)のセッションを担当する私(中川)からコメントです。
コロナ禍において、「アライアンス(共創)」はブランドやイメージといった間接的な成果だけでなく、目に見える「結果(利益)」をより求められてきます。そして、業界や業種を超えてアライアンスを実現することで初めてVUCA(変動性/不確実性/複雑性/曖昧性)といわれる今、未来において、生き残り、成長できると考えています。
「共創なくして成長なし」
今こそ、人、会社、社会はアライアンス(共創)のあり方を「トランスフォーム」することが必要と言えるのです。
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