心理的依存に効果、日本初のニコチン依存症治療用アプリが保険適用--12月1日から処方 - (page 3)

全国に約1万7000ある禁煙外来の3割に導入目指す

 CureApp SCの保険算定開始日となる12月1日から医療機関での処方が開始される。

 「現在既に数多くの医療機関から導入したいという問い合わせをいただいている。病院のPCにシステムを導入する必要があるため、数十の医療機関で手続きを進めているところだ。今後の展望としては、約1万7000ある禁煙外来のうち3割に導入したいというのが直近の目標だ。もちろん企業としては3割がゴールではない。禁煙外来を持つすべての医療機関への導入を目指したい」(佐竹氏)

 一般患者が利用する場合にはスマートフォンアプリ(Android/iOS対応)が必要になるが、医療機関が導入する上ではWebアプリである「医師アプリ」に接続できる環境(インターネットに接続できるパソコンとWebブラウザー)が必要になる。

 「クリニックではインターネットに接続したPCで電子カルテシステムを利用している場合も多いが、大きい病院だとイントラの電子カルテシステムを利用している場合が多い。その場合は電子カルテシステムとは別に、事務用PCでもいいが、インターネットにつながったPCが必要になる」(佐竹氏)

 これから普及させる上で、患者側、医療機関側ともにハードウエア環境面でのハードルは決して高くはない。

 「米国では臨床の現場で治療用アプリを処方するという新しい診療が徐々に始まって浸透しつつあるが、日本ではこれからだ。アプリを処方して治療するという新しい診療の常識を作るところが大きなハードルになると考えている。一方で薬事承認、保険適用に関して国内30以上の学会から治療用アプリに関するステートメントをいただいているので、その観点からは新しい治療スタンダードを作るための下地というか、ニーズは十分にあると思っている」(佐竹氏)

 導入する医療機関を増やすため、社内にマーケティングチームやセールスチームの人員をそろえているという。

 「製薬企業のように対面で病院を訪問するというより、IT企業としてテレビ電話などを通じたオンラインでのセールスや、SNSを中心としたWebマーケティングなどの施策をやる予定だ。それに加えて私自身が呼吸器内科医なので、学会への登壇や論文ベースでの活動など、アカデミックな活動も重要なポイントになる。その2つを掛け合わせるのが弊社の特徴だ」(佐竹氏)

“健康経営”の一環として健康保険組合からも注目される

 禁煙は一般患者一人ひとりだけでなく、多くの従業員を抱える企業の従業員の健康増進を図る「健康経営」にとっても重要になる。

 「健康保険組合の方々からも問い合わせをいただいており、かなりニーズは強い。全国に数百ある健康保険組合の2割以上がオンラインの禁煙外来を使って禁煙治療を行っている。しかしオンラインの禁煙外来の場合は自己申告で禁煙の成功を判断するしかなく、客観的に禁煙が成功したかどうかを見る指標がない。弊社の場合はCOチェッカー込みのアプリで承認されたので、COチェッカーを使うことで被保険者が本当にタバコをやめたかどうかを客観的な指標で評価できる。お金を払う健康保険組合としてはすごく助かるという声をいただいている」(佐竹氏)

 企業の健康保険組合の場合、半年を経過しても従業員の禁煙をサポートしたいというニーズもあることだろう。

 「あくまでも半年間での薬事承認で、それ以上使うと薬事法違反になってしまうため使えないが、そういう声はいただいている。医療機器としてのアプリとは別に、禁煙アプリとカウンセリング、OTC医薬品(薬局やドラッグストアで購入できる医薬品)のニコチンパッチを使った卒煙プログラムを提供している。こちらも半年間のプログラムだが、追加で最長1年間までフォローしている」と説明した。

 CureApp SCから卒煙プログラムに移行することについて、「まだ準備はしていないが、検討の余地はある。健保としてはお金を払ってもアウトカム(成果)が見えないのが課題。オンラインの禁煙外来で使う時にはそういったニーズをしっかりとらえてやっていきたい」と展望を語った。

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