シャープ株主総会、野村社長体制へ--大人気マスクは「当選倍率100倍以上」

 シャープの第126期定時株主総会が、6月29日午前10時から、大阪府堺市のシャープ本社多目的ホールで開催された。

 新型コロナウイルスの感染防止の観点から、来場を自粛するように呼び掛けていたこともあって、出席した株主は81人。2019年の392人から大幅に減少した。一方で、多くの株主がインターネットで議決権を行使した。

 株主総会では、取締役選任の件など4つの議案を可決。所要時間は36分と過去最短になった。また、株主総会後の取締会では、戴正呉氏が代表取締役会長兼CEOに、野村勝明氏が代表取締役社長兼COOにそれぞれ就任した。

シャープ 代表取締役社長兼COOに就任した野村勝明氏
シャープ 代表取締役社長兼COOに就任した野村勝明氏

 さらに、午前10時53分からは、経営などに関する株主からの質問に答える経営説明会を開催。約75人の株主が参加し、1時間に渡って開催された。なお、戴氏は、株主総会および経営説明会には、台湾からテレビ会議で参加した。

 株主総会および経営説明会での質疑応答では、合計で17人からの質問が行われた。

 シャープでは、「8K+5GとAIoTで世界を変える」というビジョンを打ち出しているもの、8K市場が立ち上がっていないとの指摘については、野村氏が回答。「まだプレイヤーが少ないため、市場が立ち上がっていないと思えるが、ソニーに続き、韓国や中国のメーカーも参入してきている。シャープも製品展開を広げている。期待してほしい」と述べた。

有機ELテレビに参入、ニーズに応え液晶との2面作戦で

 また、テレビ事業については、「新たに有機ELテレビに参入し、液晶テレビとともに幅広いニーズに対応する。8Kでは液晶技術の方が進んでおり、高画質、高精細は液晶テレビで、非日常の暗い環境で引き締まった黒の表現を求めるユーザーには有機ELテレビといったように、顧客ニーズに応えるべく2面作戦を進めていく」(シャープ TVシステム事業本部本部長の喜多村和洋氏)と回答した。

 有機ELのパネルがLGからの調達であること、有機ELテレビがAQUOSブランドではないため、今後はAQUOSブランドで出してほしいという要望について、喜多村本部長は「同じ考えである」とし、「テレビの拡大は自社パネルで進めたいが、有機ELパネルの供給元が1社に限られている。いまは、有機ELテレビが欲しいという市場ニーズを受け入れることが必要であると判断している」と述べた。

 ここでは、シャープ 上席常務の桶谷大亥氏が、現在、スマホ向けなどに有機ELパネルを自社開発していることを前提に説明。「シャープの有機ELパネルはRGB方式であり、ここ数年でRGB方式に使われる蒸着技術が進化している。また、有機ELも、マイクロLEDもバックプレーンはIGZOであり、シャープとしての優位性が発揮できる。今後は、QLEDを含めて、サイズや性能を高めるべく開発を進めていく」と述べた。

 さらに野村氏が、「将来に向けて、液晶パネルや有機ELパネルのほか、マイクロLEDやQLEDの開発などのために、外部資金を獲得していきたい」と述べた。

 液晶ディスプレイ事業については、桶谷上席常務が回答。「中国や韓国、台湾では、政府支援があり、そうした相手とどう戦うのかがポイントである。シャープでは、IGZOやLTPSを総合的に組み合わせて、相手が競争に参加できないレベルに競争の場を引き上げる。また、カテゴリーや地域を分散させるといった取り組みも行う。医療分野や車載分野などのほか、新型コロナウイルスの影響で需要が拡大しているPC向けも堅調となっている。生産拠点を、中国と日本に分散させているという点も強みになる。さらに、顧客やサプライヤーとともに、ソリューションの裾野を拡げていくことも差別化になる」などと述べた。

 また、野村氏は、「シャープはブランド企業であり、商品でブランドを作る。デバイスはそれをサポートすることになる」とコメントした。

 さらに、ジャパンディスプレイの白山工場の取得については、「関係先からの要請があり、日本社会への貢献や、ディスプレイのリーダーとして先進性を保ち続けるといった点から、慎重に検討を進めている」(野村氏)と述べた。

シャープ製マスクは健康事業の一つの方向性

 スマホへの取り組みについては、シャープ 通信事業本部本部長の中野吉朗氏が回答。「シャープは、すべてのキャリアに商品を供給しており、幅広い商品群を保有している。Android搭載スマホでは、3年連続で国内トップシェアとなっている。液晶パネルやカンタツのレンズなど、シャープグループの特長を生かして商品化を行うほか、今後は、アフターサービス網を用い、顧客とのリレーションシップを強化していく。さらに、5G分野においても、テレワークやオンライン化といった社会ニーズに対応した商品、サービスを拡大したい」と語った。

 一方で、シャープ独自のプラズマクラスターイオンが、新型コロナウイルスにも効果があるのではないかとの株主の質問に対しては、シャープ 専務執行役員の沖津雅浩氏が、「新型コロナウイルスに対する効能はまだ実証できていない。現在、検証を行っている状況である」と回答した。

 話題となったマスク製マスクに関する質問も出ていた。株主からは、「株主総会のお土産として、シャープ製マスクがもらえると期待していた」という声もあがっていたが、戴氏は、「社会貢献としてスタートしたマスクをはじめとして、健康関係の新規事業への取り組みをずっと考えている。これもひとつの方向性であり、シャープがブランド企業として、いかに拡大していくのか、いかにグローバルに展開し、ブランド企業としての地位を確立していくのか、ということを考えていきたい」と述べた。

 なお、シャープでは、株主を対象とした、同社製マスクの優先販売を実施しており、抽選を行なわずに、1人1箱限定で必ず購入できる。

 シャープ製マスクは、購入希望者が殺到しており、毎週水曜日に抽選を行っているが、当選倍率は100倍以上となっており、多くの応募者が購入できない状況が続いていた。

 そのほか、事業状況については、野村氏が回答。「2019年度第1四半期から第3四半期までは想定通りに進み、株価も上昇していたが、新型コロナウイルス感染症の発生後には、株価が下がった。現在、業績回復に取り組んでおり、2020年度第1四半期は、2019年度第4四半期に比べて、新型コロナウイルスの影響が少ない。リモートワークの拡大によって複写機事業は伸び悩んでいるが、それを除けば、すべて回復基調にある」とした。

 現在、海外売上比率が70%弱であること、ASEANでは1.5倍の成長を遂げていることにも言及した。

 戴氏は、「シャープは、いかにプラットフォームやサービス、ソリューションに取り組むかが重要である。経営環境は厳しいが、一人ひとりが、攻めの気持ちを持って取り組んでいく」とした。

 また、社長に就任した野村氏に期待する声もあがり、戴氏は、「過去4年間の改革の成果維持と、今後の成長にともに取り組んできた。実現できる人として新社長に選んだ。液晶パネル生産のSDP(堺ディスプレイプロダクト)で4年間、シャープでも4年間、一緒に仕事をしてきた仲間であり、お互いの考え方や仕事のやり方を熟知している。私は海外事業に専念し、野村新社長には、国内事業と管理を担当してもらう予定である」とした。

 また、野村氏は、「生え抜き社員として頑張っていきたい。シャープの顔としてしっかりやっていきたいと考えている」と話した。

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