神戸市と日本マイクロソフト(以下、日本MS)は、新型コロナウイルス対策を契機に、「働き方改革」「スマートシティ実現に向けたデータ連携基盤の推進」「デジタル人材育成・交流」「子どもや青少年の学びの支援」の4項目において、包括連携協定を締結することを発表した。
6月4日に開催された臨時会見には神戸市長の久元喜造氏、日本マイクロソフトからは執行役員常務クラウド&ソリューション事業本部長の手島主税氏と業務執行役員デジタル・ガバメント統括本部長の木村靖氏がオンラインで出席し、締結は電子署名を使って行われた。
両者は2019年4月より相互連携に向けた協議を進めており、新型コロナウイルス対策をきっかけに具体的な連携を行うことが決まったという。最先端技術やデータを活用しながら高度な市民サービスの創出と実装に取り組むため、神戸市にMicrosoft Power PlatformとAzureによるクラウド環境を無償提供しており、リモートワークでのTeams活用や健康相談チャットボットの開発などに活用している。
久元市長は「テクノロジーの進化により人間が支配されるのではなく、活用することが大事であり、今回の連携は共通する方向を向きながら対応できる関係を築けると確信している」とし、すでに実施されている3つの新型コロナウイルス対策の取り組みを紹介した。
市民から数多くの問い合わせがあるコールセンターと同じ対応ができる健康相談チャットボットを、チャットボット作成サービスのPower Virtual Agentsを使用して職員自身で作りあげた。コールセンターに相談する前のセルフチェックやかかりつけ医や案内まで行うことができ、聴覚障害も利用できる。5月20日から運用を開始し、日に約100件の利用がある。
限られた時間内で作られたため情報が分散し、更新も手作業で行われていた新型コロナウイルスに関する情報提供サイトをデータ分析サービスPower BIを活用して大幅に刷新し、ダッシュボードにより再構築した。自動更新機能などで作業が大幅に効率化され、情報にもたどりつきやすくなったことから、6月1日の発表以降、アクセス数は日に1万件にものぼっている。
ピークで日に4万件ものコールセンターへの問い合わせがある特別定額給付金の申請状況について、オンラインで確認できる検索サイトを5月29日より公開している。日に3.5万件のアクセスがあり、コールセンターの問い合わせは3000件に減らすことができたという。さらに6月5日より音声通話による自動案内サービスを全国初で開始。開発はKDDIウェブコミュニケーションズ、Twilio Japanらと連携して行われたが、内容に関しては神戸市職員が中心となって作成を進めている。
コロナ対策のために作成されたこれらのシステムは、他の自治体でも運用できるようオープンソースでGitHubに無償で公開するとしている。
さらに今後、包括連携によって進めていく具体的な活動として4つの軸が紹介された。
神戸市 企画調整局情報化戦略部長の森浩三氏は「チャットボットの活用は以前にも行ったことがあるが、今回の健康相談チャットボットはマイクロソフトのツールを指導を受けながら活用することで、条件分岐を利用した柔軟な対応ができる仕組みが短時間に実現できた」と言う。
久本市長は「行政サービスを高めるにはチャットボットを高度化するのも方法の1つ。課題はあるが、企業に比べて業務が幅広く自治体の判断で辞められないサービスもあることから、理想を言えばAIを活用して複数の業務に対応できることも目指したい。データ連携基盤の推進は大きな可能性があり、様々なデータを各部署に提供することで業務の生産性を向上し、全体の満足度を高めることにつなげたい。そのための指標づくりも庁内で議論している」と語った。
日本MSの木村氏は「5月20日に内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室と『新型コロナウイルス感染症対策官民連携プロジェクト』協定を締結しているが、行政との連携は神戸市が初めてとなる。リモートワークなど平常時の対応も含めて行政および神戸市のデジタルトランスフォーメーションを進めていくことに協力したい」と話す。
同じく手島氏は「オープンで多様な組織と共にイノベーションを進めている神戸市と連携し、急激な変化に後戻りすることなく、ニューノーマルな世界に向けた取り組みを行政や他の企業と共に行うことに責務を感じている」とコメント。神戸市と市民に寄りそう行政サービスや支援の具現化を目指したいと話しており、今後も様々な動きが実現されることになりそうだ。
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