Appleは4月16日、一部のファンが長い間待ち望んでいた新型「iPhone SE」をようやく発表した。しかも、これ以上ないほど絶妙なタイミングでの発表となった。
第2世代のiPhone SEは、端的に言えば、刷新された4.7インチ型の「iPhone 8」の筐体に「iPhone 11」の中身を詰め込んだものだ。「A13 Bionic」プロセッサー、Qi規格のワイヤレス充電機能、触覚タッチを搭載しているが、これはハイエンドモデルの「iPhone 11」と同等の仕様だ。新型iPhone SEの背面カメラはシングル構成だが1200万画素で、iPhone 11や「iPhone 11 Pro」のメインカメラと比べても画素数では見劣りしない。また、「Touch ID」機能を備えたホームボタンは残された。
しかし、新モデルで最も特筆すべき部分は、399ドル(日本での直販価格は税別4万4800円)からというその価格だ。これは2016年発売の初代iPhone SE以降では、iPhoneの新機種としては初めての価格帯だ。初代iPhone SEの発売時の価格も399ドルだった。
これまでのように華やかなイベントは開催せず、Appleは今回、プレスリリースで新モデルを発表した。Appleは同時に、新型「iPad pro」向けの「Magic Keyboard」の予約受付を開始すると発表し、米国ではこれまでの見通しより早く、来週から出荷を開始する。同社は世界中の他の企業と同様に、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制する見地から、通常の新製品発売計画を変更している。
新型iPhoneは4月17日から予約受付を開始し、4月24日に発売予定だ。
「第1世代のiPhone SEは、小さなサイズながらハイエンドなパフォーマンス、そしてお求めやすい価格というユニークな特長を兼ね備え、多くのお客様に愛され、人気となりました」と、Appleのワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントであるPhil Schiller氏はプレスリリースで述べた。「第2世代の新しいiPhone SEにもその優れたアイディアは受け継がれ、美しい写真やビデオを生み出す最高のシングルカメラシステムなど、あらゆる面で進歩していながら、お求めやすさは変わりません」
今は新しいスマートフォンを発売するには厳しい時期だ。終わる気配を見せないパンデミック(世界的大流行)との戦いは、世界中で続いている。COVID-19という名の感染症を引き起こす新型コロナウイルスは世界中に広がり、感染者数は200万人に達した。多くの都市や、場合によっては国全体がロックダウンを宣告し、店舗の営業停止やイベントの中止のほか、市民に対しても自宅待機を命じている。すべては、新型コロナウイルスを封じ込めるためだ。その結果、膨大な数の人々が仕事を失い、この数十年でも最悪レベルの不況が起きようとしている。
この経済的停滞は、すでにスマートフォン市場に影響を及ぼしている。Strategy Analyticsのまとめによると、2020年2月のスマートフォン出荷台数は6180万台と、前年同月比で過去最大となる38%の減少を記録した。これは世界最大の市場の1つで重要な製造拠点でもある中国が、新型コロナウイルスの猛威にさらされた影響だ。2020年通年では、スマートフォンの販売はこの10年で最も落ち込み、出荷台数は前年より約11%少ない12億6000万台にとどまる見通しだと、CCS Insightsは予測している。
Appleもこの経済的苦境と無縁ではない。同社は世界で最高クラスのキャッシュリッチ企業の1つだが、すでにiPhoneをはじめとする製品について、需要の低迷や製造工程での問題に直面している。Appleは1月の時点で、中国における新型コロナウイルスの感染拡大により、2020会計年度第2四半期決算(3月締め)の売上高予測を達成できなくなると警告していた。また、中華圏以外のすべての地域の直営店舗を無期限に閉店している。
このような状況では、新しいスマートフォンを強く求める人はいないだろう。たとえそれが新しいiPhoneだったとしてもだ。だがAppleは、スマートフォンを今すぐ必要としている人々や、小型デバイスの根強いファンが、新しいiPhone SEに飛びついてくれることを期待している。
同時に、iPhone SEはミッドレンジのスマホ市場を根付かせる存在でもある。ミッドレンジとは、フラッグシップモデルと格安モデルの中間に位置するデバイスを指すが、米国ではこの市場はこれまで存在感を発揮できていなかった。さらにSEは、1000ドルのiPhoneを買う余裕はないが、最新のAppleデバイスを求める人々がいる米国外の市場でも人気を呼ぶはずだ。
「現在の経済的状況を考えると、新しく、より安い価格設定のApple製スマートフォンは、非常に大きな関心を呼ぶはずだ」と、TECHnalysis Researchのアナリスト、Bob O'Donnell氏は指摘する。「今はまさしく、これ以上ない絶好のタイミングだ」
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