ハードとソフトの“異文化人材”で柔軟な組織は作れるか--モノ系ベンチャー3社が語る - (page 3)

“モノ”から“サービス”へのビジネスモデル転換で変わるチーム作り

 3社とも現在はMaaS、SaaSといったサービスに取り組んでいるが、ハードウェアの開発段階から、将来こうしたサービスへ対応できるようにものづくりをしていたのだろうか?

 河瀬氏は、Akerunのハードウェアとしての構造をできるだけシンプルにする一方で、ソフトウェアの中でもサービスのレイヤーは、ある程度柔軟に対応ができるように、自由度高く設計してきたと説明する。ただし初めからそうできていたわけではなく、試行錯誤した結果だと明かす。

 WHILLも2世代目の「Model C」の開発段階ですでに、「将来の自動運転、自動停止機能の搭載を想定して、パーツの内製化を進めていた」と白井氏。ハードウェアを主体としながらも、そこにソフトウェア、サービスを柔軟に組み合わせ、新たな価値を提供するようなものづくりは、まずハードありきの従来の日本のメーカーには見られなかったものだ。

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羽田空港など国内外の空港で自動運転の実証実験を行うWHILL。写真は「WHILL自動運転システム」

 大手メーカー出身の白井氏は、「大手では計画と予算が決まったら、基本はその計画に沿って出すというのが基本。一方、柔軟性のあるものづくりができ、ピボットすることも可能なのがベンチャーの強み 」だと語る。その言葉通り、たとえばフォトシンスは当初、Akerunをコンシューマー向けの製品としてスタートしたが、法人向けのビジネスにピボットしている。河瀬氏は「製品の購入後、利用率が高かったのが法人ユーザーだった。彼らが求めているのはハードウェアだけでなく、入退出が管理できるシステム。そこで売り切りではなく、サブスクリプション型のビジネスに切り替えた」と振り返る。

 またBONXも当初はコンシューマー向けだったが、後から法人向けの事業を起ち上げている。「BtoB事業を起ち上げたことで、組織的にも大きく変わった。個人のお客様へは売り切りだが、法人のお客様とは継続的な接点ができる。そのための営業体制はもちろん、業務コンサルティング的な関わり方もするので、そういう体制も必要。お客様の声を吸い上げてプロダクトにつなぐために、ソフトウェアエンジニアチームと担当者との距離感を短くして、改善を早くするといった取り組みもしている」と宮坂氏は説明する。

 フォトシンスでも同様に、「改善など、お客様の声を取り入れやすいのはソフトウェア側なので、今はソフトウエアエンジニアを多めに採用している」と河瀬氏。「ただいずれは、新規に開発する側のチームと運用側のチームを、分けなければいけないタイミングが来るのではないかと思っている」という。その際に悩ましいのが、「ベンチャーには新規開発がやりたくて集まっているメンバーが多いこと」だ。「そのあたりのモチベーション管理をしつつ、リソースを割いてしっかりとした運用チームを作っていくことが今後の課題」だと語った。

 BtoB事業の広がりを受けて、BONXでも「プラットフォーム部分を開発していくメンバーと、個別のお客様のリクエストに対応していくメンバーの両方が必要になってきている」と宮坂氏。「ソフトウェアエンジニアの採用は強化しているが、それに加えて外部のSIerとオープンに開発ができるようなしくみも必要になってきている。社員を増やすだけでなく、外側の協力者も含めてチームを大きくしていくことが急務」だ説明する。

 採用についてはWHILLの白井氏も強化しているが、「MaaSのビジネスを展開していくにあたってWEB系のエンジニアが必要だが、ハードウェアベンチャーのイメージが強いためか、なかなか来てもらえないのが正直なところ」と悩みを吐露する場面も。「サービスをしっかり作り込むことで、イメージを変えていきたい。WEB系のチームづくりを強化して、パーソナルモビリティによるMaaSを広く世の中に展開してきたい」と今後の目標を語った。

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