新規事業開発のプロジェクトでは、これまでその企業が手がけたことがない事業を作り上げていくだけに、未知の課題やトラブルにたびたび直面することがある。最初に何を考え、どうすべきか、スタート地点から右往左往することも珍しくないようだ。
このため、近年では困難の多い新規事業開発をスムーズに進められるよう、その企業活動自体を支援していくコンサルティング会社も増えており、WHITEもその1つだ。「0から10まで」をサポートするという“WHITE流”の新規事業開発支援とはどういったものなのか、また企業内での新規事業開発における課題について、同社執行役員の吉田航也氏に話を聞いた。
——まずはWHITEがどのような体制で企業の新規事業開発プロジェクトを支援しているのか、教えていただけますか。
現在、当社の社員数は50名ほどです。1つのプロジェクトに対してサービスデザイナーとプロジェクトマネージャー、ビジネスデザイナーなど4人1チームの体制で支援しています。
——クライアントにはどういった業種が多いのでしょう。
支援先はtoC、toBの企業など様々です。独自開発した新規事業開発のための再現性のあるフレームワークを活用することで電力、保険、交通、美容、通信、エンタメなど、オールジャンルで幅広く支援させていただいていており、いろいろな業界の知見があると自負しています。大きな企業とお付き合いが多いですが、僕らの知見がバリューとして発揮できそうな領域であれば、えり好みせずにサポートさせていただいております。
——新規事業を支援する事業者は他にもあります。そのなかでWHITEならではの強みはどういったところにあると考えますか。
不確実性の高い新規事業を実現するために、事業のコンセプト作りから企業内の意思決定までを支援できることです。
特に企業内新規事業の実現において最大の難関のひとつが意思決定です。既存事業とは異なり、新規事業は不確実性が高く、まだ世に出ていないものです。これまで既存事業で活躍していた合理的な判断基準だと、意思決定の段階で可能性を潰してしまうのでは?と不安を抱えている意思決定者の方によく出会います。
そこでWHITEでは、企業内での意思決定基準の定義から実際のサポートに力を入れています。例えばプロジェクトが始まる一番初期に、プロジェクトの全体の流れを定義します。その上で、どのタイミングで何を判断するか。そのために、何を問うかを決めます。そうすることで、アイデアの可能性を狭めることなく新規事業アイデアと向かい合うことができるようになります。また、数々の企業とのプロジェクトの中で進化させてきた、“WHITE流”に体系化された新規事業創出のノウハウやフレームも特徴のひとつです。
——これまでさまざまな事業を支援してきた中で気づいたこと、あるいは新規事業開発を進める企業が陥りがちな共通の課題などはありますか。
新規事業開発の実現を阻む要素は様々ありますが、中でもどのように進めるかというプロセスの定義が曖昧なせいで上手くいかないケースがあります。
——プロジェクトを始める最初の段階が特に重要だと。
特に初めて新規事業に携わる人から多いのは、「何から始めていいかわからない」という相談です。原因としては「新規事業開発はこうやるべき」のような体系化されたプロセスが世の中にあまり知られていないことです。何から進めるべきか曖昧なままプロジェクトを走らせてしまうと最終段階になって綻びが生じ、最初からやり直しになるというようなことも珍しくありません。
私達が重視しているプロジェクトデザインでは、プロジェクトの一番最初にプロセスを定義し、意思決定のルール作りを行います。プロセスとルールさえ最初にしっかり決めてあれば社内の不確実要素はある程度排除できるわけです。極論、それさえできればアイデア発想やビジネスを強くする方法などはすでに世の中にたくさん出ていますから、チームに適したものを選択し実行していけば良いだけなんです。
——初めのミーティングで、プロジェクトの進め方についてしっかり話し合うわけですね。
そうですね。一番最初にどう進めるかを決めるということは、言い換えれば「やらないことを決めていく」という話でもあります。WHITEではこれを「プロジェクトデザインシート」というフレームワークを使って最終的に達成したい目的、事業を考える際の制約、方針、決定事項と未決定事項、などを可視化していきます。
現場の人たちと会話するだけでなく、プロジェクトの意思決定者の方たちにもヒアリングをします。そうすることで現場と意思決定者の認識を合わせることができるんです。やってみると、意思決定者が課題や目的を把握できていないことや、プロジェクトに求めているレベル感が現場とズレていることがわかります。それを調整するためにも、会社として今何を求めているのか、この新規事業プロジェクトに何を期待しているのか、というところも含めて可視化する工程は欠かせません。
そもそも、まだ世に無い事業について他人と共通認識を持つのは非常に難しいことです。「コンセプト」「プロトタイプ」といった使い易い言葉でなんとなく会話は成り立ちますが、関係者一人ひとりのイメージが異なっているような状態では曖昧な議論しかできず、サービスコンセプトを研ぎ澄ましていくことができません。
我々のお客様もWHITEメンバーも、プロジェクトメンバー全員で目的地について議論し、認識を合わせることでプロジェクトが健全に進みます。そのために、プロジェクトデザインシートを用いて考えを可視化します。ただ、途中で担当者やメンバーが変わってしまった場合には、目的と併せて新規事業に対する“熱量”もインプットしていく必要がありますね。
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