Katie Santamariaさん(21)は、10代のころにInstagramでコンテンツを共有するときに感じた抑圧を思い出す。彼女の友人はいつも、最大限の「いいね!」を獲得するには夜8時までは何も投稿してはいけないと忠告したものだ。
コロンビア大学3年生のSantamariaさんは「みんな、シェアすること自体が目的ではありません。シェアすることは一種のゲームで、自分の社会的地位を測る方法なのです」と語る。
そこで、Santamariaさんは2019年7月に、ソーシャルメディアを「デトックス」しようと決心した。FacebookとInstagramのアプリを自分のスマートフォンから削除し、メール、テキストメッセージ、自分のカレンダーなどの、必要最小限のツールだけをホーム画面に残した。最初の頃は、取り残されるのではないかという恐怖(Fear Of Missing Out:FOMO)に悩まされた。友人との繋がりを断たれたように感じたのだ。だが、2週間もすると、SantamariaさんはもうInstagramが恋しくなくなっていることに気付いた。
「自分の注意力の向け先をコントロールできると解放されることに気付きました。今では自分の1日の瞬間瞬間を自分で決めています」と彼女は語る。
ソーシャルメディアに幻滅したのは、今はまた別のソーシャルメディアデトックスを実施中のSantamariaさんだけではない。Instagramとその親会社であるFacebookは、有害なコンテンツを容認し、特に若者の不安や抑うつを助長しているとして、ユーザーや人権団体、政治家から批判されている。2017年には、英王立公衆衛生協会(RSPH)が、若者のメンタルヘルスにとってInstagramが最悪のSNSであるという報告書を公開した。
また、少なくとも1件の研究は10代の若者がソーシャルメディアに費やす時間と抑うつや不安の強さには直接的な関連性はないとしているが、ソーシャルメディアはいじめの露出を増やし、睡眠と運動の時間を削るため、一定のユーザーに間接的に悪影響を与える可能性があると指摘する研究もある。
2019年は、テクノロジー大手がようやくこれらの問題に取り組みそうな幾つかの動きがあった。過去数カ月に、InstagramとFacebookは「いいね!」を表示しないテストを一部のユーザーの間で始めた。Instagramはさらに、友達がどの投稿やアカウントに反応しているかを表示する「フォロー中」タブを削除した。Instagramはまた、美容整形手術やダイエット製品を宣伝する投稿の一部を未成年者に見せないようにする計画だと報じられた。
だが、こうした動きの目的はあまり明確ではない。Instagramの責任者、Adam Mosseri氏は「いいね!」を非表示にすればユーザーの不安とストレスを軽減できると語ったが、一部の専門家は、それが同社の第一の目的であるかどうか疑問視している。
カリフォルニア州立大学フラトン校情報システムおよび決定科学学部のOfir Turel准教授は「ユーザーの幸福を重視する全体的な傾向はあるかもしれない」と語る。だが、Instagramの動きは、厳しい調査に備えたリスク軽減も目的である可能性があると同氏は指摘する。例えば、ゲーム「Fortnite」のメーカーは2019年、ゲームを中毒性のあるものに設計したとして訴えられた。Instagramのような企業は、同じような運命をたどることを避けたいだろうと同氏は語る。
Facebookの担当者は、同社が「いいね!の数を非表示にするテストを行っているのは、Instagramをユーザーが自分自身を気持ちよく表現できる場にしたいからだ。このテストの目的は収益ではない」と語った。
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