ダイキン工業は11月21日、ウェアラブルデバイスやAIなどのテクノロジーを活用して、グローバルで現場業務を効率化させていく「現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)」の取り組みを発表した。
空調機の保守点検やメンテナンスなどのサービス業務において、熟練したサービスエンジニアが遠隔地の現場で働く作業者をサポートできる遠隔作業支援ソリューションを開発。2020年8月から日本国内で本格展開する予定で、労働人材不足や海外市場におけるニーズの増加への対応、サービス品質の向上を図る。
グローバルな総合空調メーカーであるダイキン工業は現在150カ国以上で事業を展開し、従業員の8割以上は海外で活動している。さらに今後30年間で新興国での需要によって空調のストック台数は3倍に増加することが予測され、工事、サービスや修理、メンテナンスの現場作業量も拡大するとの見通しを示している。
これにともない同社では、現場において(1)熟練者不足による現場業務のコスト増加および機会喪失、(2)業務の属人化によるノウハウの消失、(3)エンジニアの非コア業務負荷の増加、という3つの課題を抱えていると、ダイキン工業 執行役員 テクノロジー・イノベーションセンター長の米田裕二氏は話す。
そこで同社は、音声認識関連技術を開発する東京大学発ベンチャー企業のフェアリーデバイセズとの共創により、現場のDXに取り組む。現場の作業者は、作業用の装備としてフェアリーデバイセズが開発したスマートウェアラブルデバイス「THINKLET」を首に装着する。
THINKLETは、映像や音声、データを取得・通信できる機能を備えており、作業者はこの端末を通じて遠隔地で見守る熟練サービスエンジニアと映像や画像、文字、口頭でのやり取りをしながら、現場業務に対する様々な支援を受け、高度な業務を行えるようになる。
その際に、THINKLETを通じて取得された機器の情報やお互いのやり取り、作業内容がクラウドのデータベースに自動的に記録され、後に内容を参照できることで、熟練者の知識が平準化されていく。さらに、蓄積されたデータを分析することで故障予知につなげることや、作業内容や会話のAI解析で作業報告書を自動生成することも可能になるという。
THINKLETの革新性についてフェアリーデバイセズ代表取締役の藤野真人氏は、「スマートデバイスを使って現場作業を効率化する取り組みが盛んになっているが、その際には現場の人のデータが重要であり、そのデータを継続的に収集・蓄積して機械学習させていくことが重要。今までのシステムは、この2つの観点を重視して設定されるものではなかった」と差異を説明する。
これを実現するために、THINKLETには800万画素の広角カメラや5個のマイクを搭載して作業映像や発話・会話をクリアに収集し、本体のみでクラウドにデータを送信できる仕組みなどを備えている。
さらに、THINKLETを活用するための基盤として、フェアリーデバイセズはエッジAI技術、クラウド通信などのミドルウェアや多言語音声認識、データ解析用などのSDK、収集したデータの学習・分析システムなどを搭載したサービスプラットフォームを提供する。今回この上に、ダイキン工業が自社の業務ノウハウに特化した業務支援ウェブアプリケーションを構築し、遠隔作業支援ソリューションを開発する形となる。
開発しているシステムでは、遠隔支援の機能として音声通話、動画送信、動画スナップショットの取得、手順書の共有、リアルタイム会話表示の機能を備えており、1人の熟練者は同時に最大5人まで遠隔支援が可能となる。
さらに今後、「複数の言語をリアルタイム翻訳させる機能を追加させる」(アプリケーション開発担当のダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター 情報通信グループのブシィ・アシシュ氏)ことで、言語の壁を越えたグローバル支援体制の構築ならびに日本国内の高品質なサービス業務のグローバル展開を図っていく。
一方フェアリーデバイセズは、今回のダイキン工業との共創を足掛かりに「THINKLETをベースとしたコネクテッドワーカーソリューションを、各業界のリーディングカンパニーとパートナーシップを構築して展開していく」(フェアリーデバイセズ 執行役員 江副滋氏)としている。
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