先行して使用してきたApple Watch Series 5のレビューをお届けする。次世代通信5Gへの対応を前にして、これまでで最も成熟した機能と、充実した選択肢を提供する、あらゆる人にお勧めできるスマートウォッチの決定版となった。
Appleは今回、オンラインと全国9箇所すべての直営店に「Apple Watch Studio」を用意。自分の好きなサイズ、素材、色、バンドの組み合わせを試して、購入できる。
Apple Watch Series 5のサイズは各素材とも共通で、40mmモデルは高さ39.8mm × 幅34.4mm × 厚さ10.7mm、44mmモデルは高さ44.0mm × 高さ37.8mm × 厚さ10.7mm。ケースの素材とカラーのバリエーションを以下の通りだ。
・100%リサイクルアルミニウム:シルバー・スペースグレー・ゴールド
・ステンレススチール:シルバー・スペースブラック・ゴールド
・新素材となるチタニウム:チタニウム(ナチュラルカラーとヘアライン加工)・スペースブラック
・復活したセラミック:ホワイト
重さの目安としては、アルミニウムよりもチタンが約5g重く、さらにステンレスはチタンより5g重たい。またセラミックは一番重たいステンレスより1g軽い、という比較となる。
今回試したのは軽快なアルミニウムの44mmスペースグレイで、外見上の違いをApple Watch Series 5とSeries 4の間で発見するのは難しい。新モデルらしいのは、チタンやセラミックといった今回EDITIONとして登場したケース、そしてスペースブラックが新たに登場した黒いHERMESモデルになる。
Apple Watch Series 5は、2018年のSeries 4の仕様とデザインを踏襲しており、新たに搭載された新設計の心拍計と心電図モニターが引き継がれ、気圧計で相対的な高度を計測することもできるし、常時ONになるマイクも引き継がれる。ワイヤレスチップはW3のままで、Bluetooth 5.0はサポートするが、iPhone 11シリーズとは異なりWi-Fi 6には対応しない。
テクノロジーとして進化したのは、下記の5点。
・常時点灯に対応する省電力化されたLTPO有機ELディスプレイ
・64ビットデュアルコアのS5チップ
・16GBから倍増する32GBストレージ
・電子コンパス内蔵
・海抜の計測
・国際緊急通話への対応
常時点灯ディスプレイは、Apple Watch体験の上で非常に大きな進化をもたらしてくれる。テクノロジーとしてはこれまでのLTPO有機ELディスプレイだが、コントローラーやパワーマネジメントの改善で、常時表示でも1日18時間というバッテリ持続時間を実現した。
ハードウェア的なテクニックとして、普段60Hzで買い換えている画面を1Hz、1秒毎の書き換えとすることで、大幅な省電力化を実現した。また時計を見ていないときのため、消灯領域が大きなダークモードの文字盤を収録して切り替えることで、画面表示の電力的な負担をUIデザインで削減する工夫を施した。
これまで、普段Apple Watchの画面は消えており、時間を見たいときであっても、手首を返して文字盤を自分の方へ向け、ディスプレイを点灯させる必要があった。
時計を使う仕草としては自然であるが、普通の腕時計は手首を動かさずに視線を送れば時間を確認できるわけで、ほとんどの場面で必要ない動作を余儀無くされていたことに気づかされる。
常時点灯ディスプレイとともに数少ないハードウェア的進化となったのが電子コンパスの採用。専用のコンパスアプリが用意されて方角を知ることができるほか、コンプリケーションに設定すれば、文字盤から方角を知ることもできる。
この電子コンパスで体験が大きく変わったのが、Apple Watchを用いた徒歩のナビゲーションだ。これまでも地図と経路をApple Watchに表示することはできたが、どちらを向いているのかがわからず、歩き始めに戸惑ってしまう経験をしていた。
そのため、Apple WatchのSiriで経路検索をしたとしても、結局iPhoneを取り出して歩き始める方向を確認する、という動作が必要だった。そこで、電子コンパスが威力を発揮する。
iPhoneに頼らなくても自分が向いている方向がわかるようになり、とくにApple PayをセットアップしてあるApple Watch Series 5のセルラーモデルは、単体で、散歩やジョギングをサポートしてくれることになる。
そうした特殊なシチュエーションでなくても、iPhoneを覗き込みながらナビゲーションするよりも、手首だけで道案内してもらう方が、片手も自由になり、また歩行する上で安全に移動できると感じた。
Apple Watch向けのwatchOSの最新版では、専用のApp Storeの追加やオーディオブック、電卓、ボイスメモといった新アプリの追加され、またアクティビティのトレンド集計や女性のサイクルの記録機能などが追加される。
App Storeやより多くのコンテンツを扱うようになるスマートウォッチ。32GBのストレージへのアップグレードも広がる活用に備える意味で、重要なアップグレードとなった。
その一方で、日本では心電図を計測するECGアプリや、不整脈の検出を助けるモニタリング機能は、医療機器としての承認が降りないため、利用できない。
また、Apple Watch Series 5が新たにサポートした、自国外の渡航先でのApple Watch単体での緊急通話機能は、日本を訪れた外国人は利用できない。Apple Watchがローミングに対応しないため、日本での通信が許されていないためだ。
なお日本のApple Watchを装着して海外に行った場合、あるいはiPhoneとペアリングしている状態であれば、自国外での緊急通話が利用できる。
ハードウェアとしては小幅な刷新となったが、新素材や時計の体験の核心に迫る常時点灯ディスプレイは、2018年モデルを手に入れたユーザーであっても、アップデートするに値する製品と言えそうだ。
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