ソフトバンクは7月4日、村田製作所と共同で、ソフトバンクのIoTプラットフォームに対応したLPWA通信モジュールを共同開発したことを発表した。9月以降に発売する予定だ。
同日に実施された記者向け説明会では、ソフトバンクのデバイス技術本部 IoTデバイス統括部 技術開発部の土井正行氏がモジュール開発に至った経緯について説明した。
またIoTに取り組む企業の多くはネットワークに詳しい知識を持つ訳ではないため、既存のモジュールを用いた場合ソフトバンクが展開しているIoTプラットフォームに接続する手順が複雑で難しいとの意見が多く挙がっていたとのこと。そこでソフトバンクが必要としている機能をすべて装備し、なおかつ同社のIoTプラットフォームに簡単に接続できるモジュールを、村田製作所と共同開発するに至ったとのことだ。
今回開発したモジュールは、NB-IoTとCat.M1の2つに対応した「Type 1WG-SB」と、NB-IoTのみに対応した「Type 1SS-SB」の2つ。インターネットに対する詳しい知識がなくても、ソフトバンクのIoTプラットフォームに簡単に接続できる仕組みを備えたモジュールになるという。
2つのモジュールは、ともにオープン・モバイル・アライアンスが定義した「OMA Lightweight M2M」(LwM2M)に対応し、従来のHTTPSに比べ、「ユースケースによるが通信量が8割くらい小さい」(土井氏)とのこと。それに加えてデータをIP化せずに伝送することで、高いセキュリティとデータ量の削減を実現するNIDD(Non-IP Data Delivery)にも対応していることから、安全性と通信量の削減、それによる消費電力の低減を両立できると土井氏は話している。
村田製作所のモジュール事業本部 通信モジュール事業部 IoTモジュール事業部 商品技術課の兵庫弘考氏は、モジュールの詳細について説明した。Type 1WG-SBはイスラエル企業であるソニー系のアルティアセミコンダクター製のチップセットを採用し、サイズは12.2mm×12.0mm×1.6mm。Type 1SS-SBは台湾メディアテック製のチップセットを採用し、サイズは10mm×13.2mm×1.8mmになるという。
一般的なLPWAモジュールのサイズは18mm×16mm×2mmであることから、今回開発したモジュールは面積で約50%の削減に成功しており「世界最小クラス」のサイズを実現ているとのこと。また採用したチップセットの効果によって、一層の低消費電力化も実現しているという。
兵庫氏は、村田製作所がこれまで多くのBluetoothやWi-Fiのモジュールを携帯電話向けに設計・製造するなど通信モジュールの開発に強みを持つことや、ICベンダーと強いパートナーシップを持つことなどが、モジュールの小型化に大きく貢献していると話す。また日本国内で事業展開しているため、アンテナの設計などハードウェア設計に関して、国内の顧客に協力なサポート体制を取ることができるというのも、同社の強みになるとしている。
ソフトバンクのIoT&AI技術本部 IoT技術戦略統括部 IoT戦略部の山田恵祐氏は、ソフトバンクのIoTに関する取り組みについて説明した。同社では高齢化社会や社会インフラの老朽化、都市部への人口集中などさまざまな社会的課題の解決が、IoTには期待されていると考えているが、そのためにはパートナー企業との共創が不可欠だという。
このIoTプラットフォームでは現在さまざまなLPWAを提供しており、中でもLTEのネットワークを活用したNB-IoTは、既に人口カバー率99%を実現していることから社会課題の解決に大きく貢献できるとのこと。山田氏は「全ての通信を5Gにするならまとまりが良いが、リアリティを考えるとナローバンド(の通信方式)も考えていかないといけない」と話し、今後もNB-IoTなどの展開には力を入れていくとしている。
ソフトバンクのIoTプラットフォームには、既に250社のパートナー企業が参加しているとのことで、AIを活用したデータマイニングや、インテグレーション、アプリケーションなどさまざまな分野のパートナーと、枠組みを超えた取り組みで共創を進めていきたいとしている。
そうした共創の一例として、パナソニックと家電にIoTを導入する実証実験を進め、故障やトラブルなどの情報を吸い上げデータビジネスを発展させる取り組みについて説明した。山田氏は今回のモジュールは発表したばかりであるとしながらも、こうした実証実験に「先のモジュールが採用されていくのでは」と話し、今後積極的に活用していきたい考えを示している。
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