独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が、公団住宅のIoT化を開始する。6月5日、東京都北区赤羽台に2030年の暮らしを想定した、スマート住宅「Open Smart UR」を発表。スタートアップモデル住戸として公開し、この場を活用した実証実験など、新たなサービスを連携する企業などを募る。
Open Smart URは、UR都市機構と東洋大学情報連携学部(INIAD)が、技術協力し作り上げたもの。両者は、2018年1月に技術協力を開始し、「URにおけるIoT及びAI等活用研究会」を設置。「HaaS」(Housing as a Service=ハーズ)という新たな発想のもと、2030年の住まい方を想定したコンセプトブック「UR 2030」を作成しており、Open Smart URはその一部を具現化したものになる。
設置したのは、UR都市機構の前身である日本住宅公団が1962年に建設した赤羽台団地。現在「ヌーヴェル赤羽台」として、建て替えが進んでいるが、3棟を当時のまま保存している。昭和30年代を中心に建設された「スターハウス」住棟で、3つの住戸を放射状に配置していることが特徴。採光性に優れ、当時人気があった住棟形式だったという。
今回、Open Smart URの隣に昭和30年代の住宅を再現した「再現住戸」も比較対象として公開。こちらも新たに作成したもので、間取りは3K。居室内に、台所や、浴室を再現したほか、ブラウン管テレビや黒電話を配置するなど凝った造りとなっている。
Open Smart URも、当時の居室スペース内に設置。間仕切りを取り払ったワンルームのようなスペースにリノベーションし、キッチン・ダイニングと寝室、バスルーム、パウダールームなどを設けている。
居室内には、見守りカメラ11個、環境センサー24個、サーモイメージセンサー4個、マイク4個(スマートスピーカー含む)、深度カメラ1個と合計42個のセンサーを配置。取得したデータは、INIADが管理するクラウドサーバに保存され、AIを使って解析することで、データとして役立てるという。
自宅で働けることもコンセプトにしており、PCなどが収納された引き出しを開けると、自動的に照明やモニタの向きが「仕事モード」に切り替わる仕組みも導入。部屋の中心には「買い物代行」「タクシー配車」などのサービスが受けられる「ホームモニター」を設置し、サービスを提供する住宅を目指す。
INIAD学術実業連携機構機構長の坂村健氏は「スタートアップモデル住戸のキーワードのは連携。オープンな仕組みを作ることで、家電などの機器、タクシー配車などのサービスがつながる環境を目指す。今までは自社製品やサービスだけを対象にしたクローズドな形になっていた。私たちが目指すのは1つのアプリであらゆる家電やサービスが利用できる環境作り」とコンセプトを話す。
また「プログラマブル住宅」もテーマとして掲げており、住民がプログラムを自分で組むことで、自分好みの快適な暮らしができるような環境を整える。「プログラムなんかできないという人も多いと思うが、2020年には、プログラミング教育が小学校で必修化される時代。Open Smart URは、その世代が活躍しはじめる2030年をにらみを作っている」と坂村氏はコメントした。
Open Smart URは、7月1日から9月27日までの間、民間企業を対象に公開し、10月中旬以降は一般公開をする予定だ。坂村氏は「多くの方に見ていただき、一緒に製品やサービスを連携できる仕組みづくりをしていきたい」と意気込む。
UR都市機構 副理事長の石渡廣一氏は「URでは約72万戸の住宅を運用しているが、そのうちの4割が高度成長期に建設されたもの。これからどう変えるかが課題となっている。Open Smart URは、2030年の暮らしを想定して作ったもの。スタートアップモデルというだけに、完成系ではなく、ここを情報発信の拠点として、新しい住まいを考える場にしていきたい」とした。
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