シチズンが2019年秋に発売を予定する、スマートウオッチ「Eco-Drive Riiiver(エコ・ドライブ リィイバー)」は、数多くのチャレンジに挑んだ意欲作だ。3月には米国オースティンで開催された、最先端テクノロジーの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」に初出展。6月17日からは一般発売に先駆け「GREEN FUNDING」でシチズン初となるクラウドファンディングを実施する。販売税別価格は4万5000円だが、クラウドファンディングでは3万3000円から支援を募る。
Eco-Drive Riiiverは、IoTプラットフォームである「Riiiver(リィイバー)」を通じて、自分のライフスタイルや好みに合わせて、デバイスやサービスとつなげられる腕時計。Riiiverは、腕時計をはじめ、さまざまなデバイスを基点に、モノ、サービス、ヒトを有機的に結びつけるマイクロコミュニィ・サービスで、シチズンが1月に発表。2019年秋には公式アプリを公開する予定だ。
アプリ上に用意されたさまざまな要素を「ピース」とし、トリガー、サービス、アクションの3ステップの操作を組み合わせて、一連の流れを作成できることが特徴。例えば、IoT家電と組み合わせて、自宅に近づいたら照明が灯る、腕時計本体に内蔵する活動量計により、1万歩歩いたら、アラートが鳴るといった、一連の流れを作成でき、Riiiverでは、この流れを「iiidea(アィイデア)」と呼んでいる。iiideaは、時計本体に3つまで登録が可能。自分にあったスマートウォッチが作れる。
「スマートウォッチは情報を見に行くデバイスのため、スマートフォンとの差別化が難しい。しかしシチズンが考えるスマートウィッチはライフスタイルに合わせて、スマートに持ち運べる時計。時計にスマートファンクションがついているイメージ」とシチズン時計 営業統括本部 オープンイノベーション推進室室長の大石正樹氏はEco-Drive Riiiverを表現する。
本体は、光充電「エコ・ドライブ」を採用し、充電や電池交換といった煩わしさを解消。ステンレス製のバンドや、キズに強いサファイヤガラスの採用など、腕時計としてのシチズンクオリティは維持したまま、スマート化した。
「シチズンの企業理念は『市民に愛され市民に貢献する』。この企業理念は、スマートウォッチを作る上でももちろん継承している。100年の歴史を誇る時計メーカーとして、つけ心地や精度、ユーザーベネフィットは譲れない部分」(大石氏)と時計としての品質に徹底してこだわる。
品質を徹底しながら、Riiiverについては「余白を残す作り方にした」(シチズン時計 営業統括本部 オープンイノベーション推進室の山﨑翔太氏)と明かす。「Riiiverで作成できるiiideaは、ユーザーの方でも簡単に作れる。ハードルを低くすることによって、個人に最適化したiiideaを生み出せようにした。例えば口コミ評価の高い飲食店に近づいたらアラートを出すといったiiideaは、ある人にはすごく便利だが、ある人には全く興味がない機能。そうした、誰かにとっては100点だけど、ほかの人にとっては0点みたいなiiideaを提供していきたい」と山﨑氏は話す。
大石氏は「時計はある意味売り切り型のビジネス。そのため私たちは万人に受け入れられるように最大公約数の商品作りをしてきた。そこで大事なのマニュファクチュールで、シチズン100年の歴史に中で徹底してきたこと。101年目からの挑戦として、買ったその先の生活に着目して開発した」と続ける。作成したiiideaは個人で使用できるほか、一般への公開も可能。あわせてシチズンでは、SDK、APIを開発者に公開し、他社メーカーやプログラマーにもiiideaを開発できる環境を提供する。
シチズンとして新たな試みを数多く盛り込んだEco-Drive Riiiverだが、手がけたのは、オープンイノベーション推進室のメンバー。新規事業の観点から、チャレンジングな取り組みを数多く実施し、その1つがシチズン初のクラウドファンディング実施だったという。
「社内では、クラウドファンディングに出品するための企画書を作成して、説明した。3月に出展したSXSWの評価が予想以上に高く、これにより社内にEco-Drive Riiiverの理解者が増えたことも追い風になった」(大石氏)と状況を説明する。
秋の発売を控え、前倒ししてクラウドファンディングを実施するのは「開発者の方にいち早く届けることで、トリガー、サービス、アクションの組み合わせであるiiideaの元となるピースと呼ばれる基礎的な要素を作成していただきたかったから。感度の高いユーザーを数多く持つGREEN FUNDINGで実施することで、私たちが想定しているターゲットにリーチしやすいと思った。また、CCCグループとして蔦屋家電など、お客様とリアルな接点も持ちやすいことも魅力」(山﨑氏)と目的は明確だ。
オープンイノベーション推進室は、2018年夏に発足。Eco-Drive Riiiverのほかにも新たなアイデアを手がけ始めているという。チームメンバーは社内公募で集め、3人でスタート。現在は10名前後のチームになっており、今後も拡大していく方針だ。
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