パナソニックは5月29日、大学の講義や結婚式場などさまざまなシーンで活用されているリモートカメラの新モデル「AW-HE75」を発表した。あわせて、ディープラーニング技術を採用した自動追尾ソフトウェアについても紹介した。発売は6月。税別価格49万円になる。
パナソニックでは2008年にリモートカメラ事業を開始。「放送用の業務カメラも扱っているが、ここ2~3年はリモートカメラ分野が伸びてきており、事業を支える大きな柱の一つになっている」(パナソニック コネクティッドソリューションズ社メディアエンターテインメント事業部プロフェッショナルAVマーケティング部部長の宮沢哲也氏)という。
離れた場所からリモートで複数のカメラを操作できることが特徴で、人が出入りできない場所やアングルからの撮影が可能。一人のオペレーターで複数のカメラをコントロールできるため、省人化にもつながるという。
新モデルAW-HE75は、回転台一体型のHDカメラ。4Kカメラも登場しているが、現場ではHDのニーズが依然として高く、HDカメラ分野のラインアップを強化する形だ。
1080/60pのフルHD出力ができ、出力インターフェースはHDMI、SDI、USB、LANの4種類に対応。外部同期信号の入力端子も備える。1/2.3型MOSセンサーとDSPを採用し、光学20倍ズームと超解像30倍ズームを実現する4ドライブレンズシステムを搭載。高精細レンズの採用により、現行機に比べ、拡大時のディテール感をアップしたほか、明るさも160%良化しているという。
高性能な「動き検知」と、高精度な「顔認証」を採用した「自動追尾ソフトウェア」とリモートカメラをあわせて使うことで、最近では教育分野での利用も高まっているとのこと。パナソニックでは「AW-SF100/SF200」という自動追尾ソフトウェアを用意しており、高い追従精度を持つことが特徴だ。
教育分野では、遠隔授業や講義に出席できなかった生徒が後からビデオを見て学ぶといった、需要が高まっているとのこと。今までは一人オペレーターが講師を追尾しながら撮影していたが、自動追尾ソフトを使えば、講師の顔を認識し、自動追尾での撮影が実現する。
パナソニックでは、追尾精度を高めるため、ディープラーニングを導入。人体の特徴を学習させることで、高精度な検出が可能になるという。従来、登録した顔と照合し、映像の顔の位置を検出する顔認証や、テンプレートに近い箇所を映像内から検出する「テンプレートマッチング」などを活用していたが、それだけでは、講師が後ろを向いたり、テキストで顔を隠してしまったりした際の追尾が難しくなるとのこと。また、プロジェクターを使用する講義では、教室内が暗い、プロジェクターの映像に講師がかぶるといった現象もあり、自動追尾が困難だったという。
AW-SF100/SF200では、追尾しづらい状況をユーザーから聞き取り、失敗環境を学習させることで、追尾精度を向上。講師を追尾するために最適化されたディープラーニングを構築しているという。
教育分野とは異なるが、コンピュータネットワーク機器開発会社であるシスコシステムズは、世界規模のカンファレンスを実施する際、自動追尾システムを導入。導入前は登壇者4人に対し1人のオペレーターで対応していたが、導入後は登壇者8人に対し1人のオペレーターが監視する形に変更。人手を半減して運用することに成功した。
今後は、4Kカメラ「AW-UE150」の切り出し機能をいかし、4K切り出し追尾展開や、人物だけでなく、競走馬や金メダルなど、特定のものに追尾することで、新たなコンテンツを生み出していくとのこと。「お客様からの要望の高いものを学習して、特化した精度の高い追尾性能を実現し、お困りごとを解決したい」(パナソニック コネクティッドソリューションズ社メディアエンターテインメント事業部テクノロジーセンターソフト設計部課長の櫻井康二氏 )としている。
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