しかし、重要な進歩がなかったわけではない。5月に入って、Googleは「Live Caption」(スマートフォン上の動画と音声をリアルタイムで文字に起こす機能)を含むいくつかの取り組みを発表した。同社は、AIを使って発話障害者を助ける「Project Euphonia」と、聴覚障害者や難聴の人も電話をかけることができるようにする「Live Relay」も披露した。
Facebookは2016年、自動代替テキストを発表した。これは人工知能を使用して視覚障害者のために写真の説明を生成する機能で、2018年にはInstagramでも提供が開始された。
Microsoftは2018年、さまざまな障害のあるゲーマーが遊べるように設計された99.99ドルのゲームコントローラー「Xbox Adaptive Controller」を発売して、大きな話題となった。2019年5月には、同社が点字ディスプレイを組み込んだ「Xbox」向けコントローラーを設計したことが報じられた。
さらに、アクセシビリティー問題に取り組むために、複数の大手テクノロジー企業が手を結んでいる。FacebookとGoogle、Microsoft、Adobe、Oathは2018年、学術機関や企業、団体による共同の取り組み「Teach Access」の一環として、アクセシビリティープログラムを立ち上げた。
Teach Accessのエグゼクティブディレクターを務めるKate Sonka氏は、次のように語っている。「テクノロジー企業が最初からアクセシビリティーを考慮に入れていないのであれば、それは、多くの人がそうした企業の製品を使用できず、企業は潜在顧客を取り逃がすことを意味する」
視覚障害者向けにプログラムやセミナーを開催しているロサンゼルスの非営利団体Braille Instituteで主任技術指導者を務めるNutsiri "Earth" Kidkulさんによると、大手テクノロジー企業はアクセシビリティー要素をもっと効果的にソフトウェアアップデートに組み込むことができるはずだという。晴眼者はすぐに新機能を利用できるが、全盲者や視覚障害者は後になるまでその機能を利用できない、ということがよくあるとKidkulさんは指摘する。
カリフォルニア大学バークレー校のウェブアクセシビリティーエバンジェリストで全盲者のLucy Grecoさんは、障害者が市場の一環をなしているということに言及するのも重要なことだ、と語る。
「自分に購入できる製品があれば、障害者はそれを購入する。障害を抱えていても映画を鑑賞するし、映画にお金を払う。私たちは社会に貢献している。私たちが使えるものを作ってくれれば、私たちはそれを使うし、市場を構成する新たなユーザー層になる」(Grecoさん)
アクセシビリティーツールのおかげで、Grecoさんは「Windows」コンピューター(画面読み上げ機能を使用)やNetflix、「Amazon Prime」、GoProなどの製品を利用できるようになった。
だが、成長の余地は常にある。例えば、GoProには音声操作機能があるが、精度が低い、とGrecoさんは言う。
「障害者が企業側にいれば、障害が現実のものであるという事実を突きつけられる。アクセシビリティーへの対応は、個々の責任というような抽象的な概念ではない」(Grecoさん)
全盲者のLauridsenさんは、次のように語った。「障害者は、自分がいつもアクセスできるわけではない世界に住んでいる。何とか工夫して乗り切ることも多い。障害者に必要なものを最もよく理解しており、障害者に必要なものを設計するのに最も適しているのは、障害者自身だ」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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