パナソニック、新中期戦略を発表--再挑戦、共創事業を立ち上げ、低収益から脱却 - (page 2)

住宅事業をトヨタと統合、工業化住宅という枠組みからは離す

 一方、5月9日午前に、パナソニックとトヨタ自動車の両社が、それぞれのグループが持つ住宅事業を統合するための新会社を設立することを発表したが、津賀社長は、これに関しても言及した。

 「かつてのニュータウンが建設されたときには、品質がよくて、信頼性が高い、工業化住宅を提供するために、製造業の工場を生かすことができ、住宅事業にも製造業らしい特徴が生かせた。しかし、いまは求められるものが多様化しており、ニュータウンのように同じような家を建てる需要が減少している。住宅事業の発展を考えたときに、従来のようなニュータウン型ではなく、世代を超えて暮らすことができ、商業施設やサービス産業を組み合わせた街づくりがトレンドになる。それに対応するためには、さまざまな産業との連携などが重視され、製造業が重視する工業化住宅という枠組みからは離れることになる。経営の観点から、製造業の傘下に置くと制約が生まれると考えた。そこで、別会社にすることを考えた。トヨタとは、電池事業を含めて、さまざまな話し合いをする機会があるなかで、今回は我々から提案をしたものだが、トヨタからも同じような提案をしたかったという話を聞き、盛り上がった」などとした。

共創事業
共創事業

2019年3月期連結業績は増収増益

 同社では、2019年3月期連結業績を発表した。売上高は前年比0.3%増の8兆0027億円、営業利益は8.1%増の4114億円、税引前利益は10.0%増の4164億円、当期純利益は20.4%増の2841億円となった。

2018年度連結業績
2018年度連結業績

 パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏は、「売上高は前年並となり、営業利益や純利益は、車載、インダストリアル、家電の収益が悪化。事業構造改革費用を計上したものの、年金制度の一部見直し、資産売却などの一時益により、全体では増益になった。だが、すべての事業セグメントで営業利益が減益になった」と総括した。

パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏
パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏

 セグメント別業績では、アプライアンスの売上高が前年比1%減の2兆7506億円、営業利益は20%減の1078億円となった。

 エアコン事業の売上高は前年比1%増の4950億円。調理家電や理美容製品などのスモール・ビルトイン事業は1%減の4046億円、冷蔵庫や洗濯機などのメジャー事業は1%増の5155億円、AVC事業は6%減の6536億円となった。

 エコソリューションズは、前年比4%増の2兆0361億円、営業利益は20%減の646億円。コネクティッドソリューションズの売上高は前年比2%増の1兆1277億円、営業利益は9%減の944億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が6%増の2兆8039億円、営業利益は40%減の564億円となった。

2018年度営業利益・当期純利益
2018年度営業利益・当期純利益

 また、2019年度(2019年4月~2020年3月)の連結業績見通しは、売上高が前年比1.3%減の7兆9000億円、営業利益は27.1%減の3000億円、税引前利益は30.4%減の2900億円、当期純利益は29.8%減の2000億円とした。

2019年度連結業績見通し
2019年度連結業績見通し

 「新中期経営計画の初年度として、事業ポートフォリオ改革を実行する。売上高は中国市場での不透明感が強いインダストリアルソリューションズの減収に加えて、街づくり事業の合弁会社の設立などによる事業ポートフォリオ改革の影響などにより減収。営業利益および純利益は、事業構造改革費用に加えて、事業リスクの織り込みにより減益を見込む」という。

 事業ポートフォリオ改革では、共創による競争力強化として、トヨタとの車載用角形電池事業の合弁会社、および街づくり事業に関する合弁会社設立で合意。収益性の改善では、ソーラー事業の開発、生産体制の最適化のほか、家電における地域や事業の絞り込み、半導体の収益体質の強化などによる低収益事業や赤字事業への抜本的な対策に乗り出すことを示した。

 「新たな中期戦略では、さらなるポートフォリオマネジメントを推進することで、低収益から脱却し、利益を成長軌道に戻す」(パナソニックの梅田CFO)とした。

 アプライアンスの売上高は前年比1%減の2兆7700億円、営業利益は11%減の765億円とした。中国のエアコンおよび白物家電で販売強化に取り組んでいるが、ハイエンドにシフトするテレビの減収が影響すると予測。原価率の向上などによる収益改善を図るものの、市況リスクや構造改革費用などを織り込んで減益見込みとした。そのうち、空調冷熱ソリューションズは、中国などの海外業務用空調とルームエアコンの原価率を強化。スマートライフネッワークでは、ハイエンド商品へのシフトや開発、製造、販売の全体最適オペレーションによるコスト低減効果を見込む。また、ホームアプライアンスは、中国、アジアを中心に洗濯機などが増収。設計や部品のグローバル共通化の加速により、原価率の向上を図るという。

 ライフソリューションズは、前年比4%減の1兆9500億円、営業利益は151%増の1620億円とした。配線器具や照明機器などの電材事業において、中国やインドで高い成長を見込むほか、日本では非住宅事業でソリューションビジネスを強化。パナソニックホームズの非連結化により、全体では減収予想とした。また、コネクティッドソリューションズの売上高は、前年比2%増の1兆1500億円、営業利益は8%減の870億円。五輪需要の取り組みや社会課題解決に取り組むPSSJや、プロセスオートメーションが増収。既存事業の収益力強化とともに、さらなる高収益事業体を目指すべく、ソリューションサービス事業の基盤構築を行うという。だが、大型航空機の需要サイクルの影響で、アビオニクス事業が機種構成の悪化が課題になるとした。

 オートモーティブは、売上高が4%増の1兆5770億円、営業損失は前年のマイナス121億円の赤字から、マイナス150億円の赤字見通し。米系の大型案件の販売最盛期を越えたことで車載機器は減収となるが、車載電池は、角形および円筒形ともに、増産投資の効果によって成長する。「利益成長を最優先事項として、経営改革を断行し、競争優位な領域の案件に集中。車載電池は、角形では姫路および中国・大連工場で生産拡大のための投資を行う」という。

 インダストリアルソリューションズの売上高は4%減の1兆3600億円、営業利益は2%増の700億円とした。中国市況の厳しさの影響によって減収だが、経営体質の強化や、半導体および液晶の収益改善で全体では増益になる。「車載・産業分野の成長領域に集中投資を行い、事業構造を転換するとともに、オペレーションの効率化を図る」とした。

2019年度セグメント別見通し
2019年度セグメント別見通し

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]