GDCで筆者が試したいくつかのゲームも含め、Riftシリーズのゲームは、まだOculus Questに対応しないものもある。「Job Simulator」シリーズの新作「Vacation Simulator」と、筆者がOculus Rift Sでプレイしたハイエンドの2つのゲーム(「Stormland」と「Asgard's Wrath」)は、今のところRift専用となっている。Stormlandは、廃墟になった世界で繰り広げられるミステリアスなロボットアドベンチャー、Asgard's Wrathは戦闘中心の大作だ。両タイトルとも、Oculus Questに移植されるかどうかは明らかにされていない。
どちらも399ドルと同じ価格である点も、さらに混乱の原因になりそうだ。Oculus Questは他のハードウェアをつなぐ必要がないのに対して、Oculus Rift SにはゲーミングPCが必要になるのだが、同じ時期に同じ価格で発売されるとなれば、2つの製品が同じ性能と誤解される可能性がある。あえてそれを狙ったのだろうか。FacebookとOculusは自信があるようだし、1月のCESや、今回の新しいデモで筆者が体験した限り、Oculus Questはこれまでで最高のスタンドアロン型VRであることは間違いない。だが、はたして消費者は、類似した2つのヘッドセットを混乱せずに区別できるのだろうか。
Oculus Rift Sは、現在のOculus Riftの後継となるが、価格が上がる。また、アップグレードするのをPCゲーマーが望まない可能性もある。解像度が高くなるのは歓迎だが、驚くほどのアップグレードというほどではない。片目あたり1280×1440と約50%高くなったものの、視野は若干大きくなったくらいでほぼ同じままだ(実際、モバイルのOculus Questの方が、片目あたり1600×1440と解像度は高い)。トラッキング機能が内蔵された利便性は魅力的ながら、Oculus Rift Sは依然としてケーブル接続を必要とする。Oculusは、アイトラッキングがプロ用やエンタープライズ用に採用されるかどうかを話題にしていない。アイトラッキング対応でエンタープライズ仕様のヘッドセットとしては、2019年春に「VIVE Pro Eye」が登場する予定だ。ただし、Oculus Rift SはOculus Rift用の膨大なライブラリに対応し、それには実験的な早期アクセス版のゲームも含まれている。
Oculus Questは、新しい独立型で、筆者が試したデモはどれも印象的だった。「Beat Saber」では、6自由度のコントロールが実現する反応の速さを実感できたし、Oculusがこれまでに見せてくれたゲーム(「Dead and Buried II」「Beat Saber」「Journey of the Gods」)は期待できる。だが、Oculus Questは依然として、搭載するプロセッサがモバイル用、オンボードストレージは64Gバイト止まりであり(あるいは、まだ明かされていない、価格未設定の大容量モデルがあるのかもしれないが)、Questストアに用意されるタイトルも当初は限定的(発売時には50以上)になる予定だ。この限定的なアプローチは、「Nintendo Switch」が発売時に試みた手法と類似しているように思えるが、開発者としては、試したい機能をQuestではなくRiftに限定されてしまうという面もある。
2種類のヘッドセットで、設計もソフトウェアライブラリも次第に似てきていることを踏まえると、最終的にヘッドセットは1つになるのだろう。無線でPCにストリーミングするモバイルスタンドアロンデバイスに向けたQualcommのリファレンスデザインが解決策になるかもしれないが、OculusのMitchell氏らは、今後の方向性について予測を述べることを控えている。
今のところは、若干の違いがある2種類のヘッドセットが存在するということだ。Oculus QuestはFacebookがVRハードウェアで試みてきたスタンドアロン型製品としては最大級となるが、誰もがそれに賛同するかどうかは、今後の動向を見守るしかない。
だが、Oculus Rift SとOculus Questをいろいろ試して、ひとつ明らかになったことはある。モバイル版とPC版の違いはなくなりつつあるということだ。ハイエンドのVRばかりを目指す代わりに、OculusはRift SとQuestの収束を進めており、遠からずその境目はなくなるのかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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