家庭用とロケーションVRの課題と展望--第一人者らが語る2018年の振り返り - (page 2)

家庭用、ロケーションVRの課題とこれから

 小山氏と田宮氏は、VRエンタメ施設「VR ZONE SHINJUKU」に設置しているVRアクティビティの新作開発や、大阪にも「VR ZONE OSAKA」を新設するなど、怒涛の1年を過ごしたと振り返る。VR ZONE SHINJUKUについて建物ごと建設したことや、施設の外観からはどのような施設か伝わりにくかったこと、またフリーロームVRにおける回転率など大変なこともありつつ、さまざまな知見が得られたとしている。

 特に大変だったこととして、安全面の配慮を挙げた。田宮氏は「絶対ここからでない、絶対に転ばない、という保証はできない。そのなかで、うまく折り合いの付く安全の領域、起きると危ないことの想定や安全の取り方はだいぶ見えてきたので、ものが作りやすくなった」と語る。QA(品質保証)に関わるチームとも、これまで開発したVRアクティビティにおけるディスカッションを経て、体験者が安全に楽しんでもらうことのノウハウも蓄積されたことで、できることの幅が広がったとも話していた。

“コヤ所長”こと小山順一朗氏(左)と、“タミヤ室長”こと田宮幸春氏(右)
“コヤ所長”こと小山順一朗氏(左)と、“タミヤ室長”こと田宮幸春氏(右)

 家庭用VRデバイスにおける課題についても触れられた。近藤氏は、セッティングや装着の手間を挙げ、そのほかの登壇者も同意。例えば普段はスタンドアロンで駆動、ハイエンドコンテンツの体験はケーブル1本つなぐだけというような、取り回しの良さを求める意見が挙げられた。さらに近藤氏は付け加える形で、モデリングや曲作りなどの作業が、VRのなかでできる環境が整うと、普及につながるのではという意見も出していた。

 ロケーションベースにおけるVRデバイスについても、課題として小川氏は配線を挙げ、負荷をかからないように動ける範囲を設定するのに苦心するうえ、断線のトラブルも少なくないという。小山氏も田宮氏もこのあたりは切実なようで、強く同意していた。

 ほかにもVRデバイスを装着したことのない体験者に、ひとつひとつ説明しながらアテンドを行い、装着することの手間についても指摘。小山氏は「近未来制圧戦アリーナ 攻殻機動隊 ARISE Stealth Hounds」(攻殻機動隊VR)について、装着品が多いこともあいまって、体験時間30分のうち15分は装着と取り外しの時間になっているとし、装着の手間が解消されると体験時間を増やす、あるいは回転率の向上につながると話す。

 小川氏も、東京ジョイポリスの客層から、初めてVRデバイスを装着する体験者も多いため、同じような課題があると語った。田宮氏からは、例えばメガネ型、ネックレスタイプの道具は、説明しなくても体験者が直感的に装着できるものとしたうえで、VRデバイスの認知度向上も求めていた。

 2019年に向けての取り組みとして、近藤氏はまず思い付きのものと前置きしたうえで、ローラースケート型のセグウェイ「Segway Drift W1」とMRを組み合わせて、現実空間に炎のような障害物やアイテムを配置して走行するというような「Vスポーツ」のアイデアを披露。

「Vスポーツ」の案として、現実世界の架空の炎を設置して、かわすように移動するというデモを披露
「Vスポーツ」の案として、現実世界の架空の炎を設置して、かわすように移動するというデモを披露

 3Dモデルにおけるアバターファイルフォーマット「VRM」を推進する「一般社団法人VRMコンソーシアム」が2月に発足予定で、エクシヴィも発起人の1社として参加している。近藤氏は未来像として、VR施設に自分のアバターで遊べるようなことも可能になるぐらい、プラットフォームやメーカーに関係なく活用できるように展開したいとした。

一般社団法人VRMコンソーシアムの設立に向けた準備会が発足
一般社団法人VRMコンソーシアムの設立に向けた準備会が発足

 小山氏は、Oculus Questを活用したアイデアを披露。Oculus Questにおける“身軽さ”や自由度の高さは大きな魅力でポテンシャルは感じるものの、グラフィック性能については、VR施設で表現するハイエンドコンテンツから見ると難があると指摘する。そして小山氏はそこを逆手にとって、懐かしいゲームの世界に入ることができる「8bitフリーローム」の案を提唱。田宮氏から、VR空間で自然を再現したものよりも、はじめからCGで表現されている「ドラゴンクエスト」や「マリオカート」のほうが“本物感”が得られやすいと話す。実際にどうなるかはわからないものの、少なくとも場内からの反響は大きいものとなっていた。

 VR ZONE SHINJUKUについて、開設当初から期間限定をうたい、3月末で閉館することが決まっている。この“次”についても質問が出ていたが、小山氏と田宮氏ともに明言は避けつつ、田宮氏は「新しい“面白いもの”を作っているのでご期待ください」と一言。そのうえで、面白さだけではなく、スタッフの手がかからないもの、魅力がより伝わりやすいものといった、多くのユーザーに関心を持ってもらいつつ、ビジネスとしても成立しやすい方向で仕込みを入れているとした。

 小川氏からは、ここ2年程海外からVRコンテンツの調達とともに、オペレーションの構築もあわせて取り組み、ロケーションベースVRにおけるフルパッケージを提供できるようなスキーム作りなどを準備してきたとし、2019年からはビジネスとして実行していく1年になると話す。TOWER TAGの本格的な展開が控えているなかではあるが「やはりVRは体験しないとわからないもの。伝え方の難しさはあるが、いかに広げてリピーターを維持させていくか。これに取り組んでいきたい」とした。

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