AIと機械学習の活用が顕著に--マイクロソフトの学生ITコンテスト「Imagine Cup 2018」 - (page 2)

Mary Branscombe (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル2018年09月03日 07時30分

 Microsoftは、いわゆる「ユニコーン企業探し」としてImagine Cupを開催しているわけではないと、成長エコシステム担当コーポレートバイスプレジデントのCharlotte Yarkoni氏は断言している。「テクノロジとイノベーションを披露するための場だ。Microsoftが重視する価値の大部分は、単にコミュニティーに関わるだけでなく、そこから知見を導き出すことにある。『この世代が抱えている問題点は何か』という、イノベーションの原動力となった問いかけだけではなく、『解決方法をどう考えるか』だ」(同氏)

 そして、今年のImagine Cupで多くのチームが解決のために用いたのが、人工知能(AI)と機械学習だ。コンテスト全体でも、参加チームのおよそ40%がAIベースのソリューションを扱っていたが、世界大会進出の49チームでは、その比率がさらに高かった。画像認識、音声認識、機械学習、ディープラーニングなどAI技術に明示的に言及しなかったのは10チームにすぎない(しかも、言及していないだけで、使っていないとは限らない)。Microsoftの「Cognitive Services」、例えば「Face API」、テキスト分析、音声認識、カスタムビジョンなどを使ったチームもあるが、ほぼ同数のチームが独自の機械学習モデルを構築していた。「Azure Machine Learning」サービス、あるいは「TensorFlow」などのオープンソースフレームワークを使って、蜂の巣の監視や、コーヒーの味の分類、パイナップルの熟成度測定などに応用している。

 もちろん、AI技術を使っているからといって、必ずしもその結果が正しく、役に立つとは限らない。

 Team TBCは機械学習を利用して「写真から、個人のサイコジオメトリック特性を決定」し、企業の採用担当者が自社の企業文化にふさわしい人物を見つけやすくするという。サイコジオメトリーは、どんな幾何学図形を選ぶかによってその人の個性を分析するというのが普通だが、このアイデアはむしろ骨相学に近い。しかも、企業文化を前提にした採用は、多様性と相いれない。

 面接に嫌味な態度で挑んだ場合、面接記録のセンチメント分析は、正確な結果が得られるのだろうか。

 決勝戦に残った3つのプロジェクトのひとつが、「iCry2Talk」という機械学習システムだ。研究が数多く進められている分野で、赤ん坊が空腹で泣いているのか、それとも疲れた、寂しい、ゲップが出る、おむつを取り替えてほしいなどの理由で泣いているのかを判定できるというが、それは確かなのだろうか。泣いている本当の意味を、赤ん坊に聞くことはできない。おむつの取り替えを求めているとアプリが判定し、取り替えたら泣きやんだが、実際には抱っこしてほしかったという場合、泣いている意味を判定できたと言えるのだろうか。

 とはいえ、学生がこうした意欲的なアイデアに取り組むことができ、アイデアの当否はともかく、なんらかの成功の見込みもあるという事実は、AI技術がいかに一般的になってきたかを示す格好の指標ではある。Imagine Cupに出場する学生たちが、現実世界で解決を急がれている困難な問題に取り組むときの熱意は、いつ見てもほほえましいものだ。AIツールが、こうしたプロジェクトで学生でも気軽に扱えるほどにまで進化してきたというのも、感慨深い。そして、学生のプロジェクトをさらに進展させようと多くの関心が集まっていることにより、このようなAIツールが真に有益な成果をもたらすのかどうか(今はまだ保証されていないので)、その結末を目にすることができるかもしれないのだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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