障がい者就労支援事業所を知ってますか--LITALICOが情報サイトで目指す課題解決

 LITALICOは1月29日、就労を希望している障がいのある方と、障がい者就労支援事業所とのマッチングを促進する情報サイト「LITALICO仕事ナビ」を、3月からサービス開始すると発表した。その経緯と狙いを事業責任者であるLITALICO取締役の中俣博之氏に聞いた。

 LITALICO仕事ナビは、一言でいうと障がい者就労支援事業所の情報サイト。全国の障がい者就労支援事業所について分かりやすく掲載し、障がいのある方が個々のニーズに合った事業所選びをサポートすることで、効果的なマッチングを実現し、就労支援事業所の集客における課題解決にも貢献するというもの。

「LITALICO仕事ナビ」施設紹介ページイメージ
「LITALICO仕事ナビ」施設紹介ページイメージ

 中俣氏によれば、障がいを持っている方が働くケースは年々増加しており、4月に障害者雇用促進法が改正され、企業の障がい者の法定雇用率が現行の2.0%から2.2%に引き上げられることから、障がい者雇用の関心も高まっているという。

 もっとも、企業における障がい者雇用は、主に身体に障がいを持つ方が中心で、既に飽和状態にあるというのが現状だと説明。精神障がいや知的障がい、発達障がいを持つ方の就職事情は近年改善されつつあるものの、まだまだ厳しいと指摘する。

 「身体面の障がいは、ある意味仕事における生産性が計算できる。精神面の障がいは体調の波が大きくなることもあり、慣れていないと企業側の対応が難しいというのがある。また、例えば長くうつ病を発症して10年以上引きこもっているような方、40代でようやく外に出られるようになったという方も少なくない。そういった方々が応募しても、履歴書ベースではどうしても書類選考が通りにくい。専門的な支援がないと就職活動自体がなかなかうまくいかないことも多い」と語る。

LITALICO取締役の中俣博之氏
LITALICO取締役の中俣博之氏

 こうした障がい持っていて自力での就職が難しい方を支援するのが、障がい者総合支援法に定められた就労系障がい福祉サービス(就労移行支援事業所、就労継続支援A型事業所、就労継続支援B型事業所)。これらの施設は2016年10月時点で全国に1万7000施設近くあり、3年前と比べて約1.4倍に増加。LITALICOとしても、就労移行支援事業所「LITALICOワークス」を運営し、これまでに5000名以上が企業への就職を果たしているという。

 就労移行支援事業所は本来、就職者を数多く輩出していくことがひとつのゴールではあるが、経営として見ると、その数を補って余りある新規の利用者が必要となる。だが、現実として利用者獲得の仕事は、支援の仕事とは別の作業になる。残業を増やすことなどにもつながり、スタッフへの負荷が大きい。中俣氏によれば、業界自体がレガシーな部分もあり、関係機関やクリニックなどとの連携によって利用者を獲得する、いわゆる“足で稼ぐ”のが主流という。また獲得のためのコストというのも十分にかけられず、定員に達していない就労移行支援事業所が少なくとも50%以上はあると指摘する。

 利用者の就労支援事業所の探し方については、かつては関係機関経由での紹介が基本となっていたが、近年ではインターネットを使って探す利用者が多数と言える状況だという。LITALICOワークスへの問い合わせは55%がインターネット経由であり「普通のように見えるが、福祉の業界では驚愕と言える数字」だという。一方で、前述のように就労移行支援事業所側で獲得のためのコストや施策で労力がかけられず、またITの活用に詳しくない方が多いといった業界的な事情から、インターネット広告やSEO対策に強い一部の事業所にしか出会えない状況があると説明。実際に利用者が、自分にあった事業所の探し方がわからないといった意見も多くあり、多様な検索軸で就労移行支援事業所を探すサービスが存在していないことにも課題があると指摘する。

LITALICO仕事ナビが、2017年12月に就労支援事業所を探したことのある方(877名)を対象に実施した調査
LITALICO仕事ナビが、2017年12月に就労支援事業所を探したことのある方(877名)を対象に実施した調査
インターネットを利用した事業所探しが主流となっている現状がうかがえる
インターネットを利用した事業所探しが主流となっている現状がうかがえる

 今回のLITALICO仕事ナビ立ち上げの背景には、こうした就労支援事業所側が、支援時間ではなく隙間時間で新規の利用者獲得を低コストで行い、経営を安定させることにある。そして利用者側の、数多くの事業所を検索ができ、比較などがわかりやすく最適な事業所選びができるという、双方の課題解決を図るためとしている。

 就労支援事業所側の料金プランとして初期費用を無料にし、月額固定費も無料にするプランも設けて、できるだけ敷居を低くする施策も実施。また今後は情報冊子の配布を行う予定で、インターネットを使っていないユーザーに向けた周知も図るという。また中長期的には、施設に入った方が自分に合った企業に就職していくという、求人面のサポートができるようなところまでサービスを展開していきたいとしている。

 中俣氏は「福祉の業界は“昔ながら”の風習がいまだに強く、大小さまざまな理由からIT化が圧倒的に遅れていた。だが、利用者がインターネットを多く活用していることがわかった今だからこそ、変わっていく必要があると感じている。と同時に、就労支援施設があること自体、一般的には全く知られていないと言っていい。こうしたサービスを世に出すことで、障がいを抱えてしまった方々に就労支援事業所という存在があることを知ってもらうこと、そして一般の方にも障がい者就職の実態を一片でも知ってもらうことができたら」と語った。

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