ワンダーエッグ関係者を集めて建設--VRエンタメ施設「VR ZONE SHINJUKU」秘話 - (page 2)

VR酔いが解消できずに転換--難産の「恐竜サバイバル体験」

――新作の開発についてはいかがでしょうか。

小山氏 :VRアクティビティでいうなら、「恐竜サバイバル体験」(恐竜サバイバル体験 絶望ジャングル)が一番しんどかったです。最後の最後まで仕様が決まらなかったので。

田宮氏 :決まらなかったというよりも、根底から変えないとダメだということに気づいたんです。

「恐竜サバイバル体験 絶望ジャングル」
「恐竜サバイバル体験 絶望ジャングル」
(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

小山氏 :もともと8人同時プレイで、明るくて広大なジャングルをホバーで自由に走りながら恐竜から逃げ回るという、どちらかというと対人戦の駆け引きを重視した内容だったのです。システム自体はできていたのですが、一番の問題はVR酔いで、自由自在にジャングルを走り回るということが、酔いを引き起こしやすかったんです。

田宮氏 :筐体で揺らすなどの工夫を凝らせば、酔わなくなるのではないかと考えていたんです。お台場時代でも「ボトムズ」(VR-ATシミュレーター 装甲騎兵ボトムズ バトリング野郎)では、うまくできていたので。

――確かにボトムズは自由移動で酔いを感じませんでした。

小山氏 :ボトムズで酔わないのは、視野を狭くして被写界深度を浅くしているためです。

田宮氏 :「エヴァンゲリオンVR」(エヴァンゲリオンVR The 魂の座)も、当初は自由移動にしていたのですけど、やはり酔いやすかったんです。こちらは、敵対する使徒に視点を固定する形で回避できたのですが、恐竜サバイバル体験はどうにもならなかったので、ボトムズの手法を参考にして、ジャングルを真っ暗にして暗闇の中で恐竜におそわれる恐怖感を出す方向に転換したんです。

小山氏 :ジャングルもかなり作りこんでいたので、ちゃんと見ていただきたかったのですが……。

田宮氏 :そして真っ暗にすると道に迷うので、ある程度の自由度は残しつつも一本道のルートにしてもらって。さらに、8人同時プレイも4人に減らしたんです。

小山氏 :8人で一緒に行動すると、暗くしても怖くなくなるんです。

田宮氏 :友達がたくさんいるのは心強くなって、怖くなくなってしまうんです。こうして今の形になったのですけど、企画の読みの甘さが出てしまったものですね。逆に恐竜に襲われる怖さを味わえるコンテンツとしてまとまったのは奇跡でした。

小山氏 :そういえば、「脱出病棟」(ホラー実体験室 脱出病棟Ω)でも似たようなことはありました。

田宮氏 :技術研究段階で、薄暗い病棟を移動するだけのものをやったんですが「何か出てくるかもしれない」という雰囲気のなかで移動し続けるのは、ものすごく怖いんです。これで怖いなら、脅かす仕掛けを入れるともっと怖くなるだろうと思ったら、まったく怖くなくなったんです。

「ホラー実体験室 脱出病棟Ω」
「ホラー実体験室 脱出病棟Ω」
(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

小山氏 :ゲーム開発者にありがちなのですけど、ミッション(課題)を入れて、クリアするかしないかという要素を入れてしまうんです。そうなると協力するために対話が生まれて、うまくいったら盛り上がるのですけど、その頻度が多くなると怖くなくなるんです。

田宮氏 :ホラーではなくて、暗い屋敷で遊ぶパーティゲームになってしまうんです。ほかにも開発中には屋敷の主のようなキャラがいて、理路整然と説明しくれるんですけど、話の分かる存在に見えて怖くないんです。

小山氏 :ゲーム内容をわかってもらうために状況説明をするキャラは、かえってさめます。ゲーム開発者は、より楽しんでもらおう、理解してもらおうと思って狂言回しのようなキャラを登場させたがるのですが、逆効果ですね。

田宮氏 :そこで小山と相談して、リピートしてもらうことは考えず、もう二度とやりたくないと思ってもらうぐらいに振り切ろうと決めました。どうなっているのかがわからないという心理にもっていかないと怖くならないのがわかったので、あえて説明せずにどういう状況かわからない状態から始まります。

――以前、小山さんが「ガンダムVR」(ガンダムVR ダイバ強襲)を例に、これから何が起きるかを説明したほうが、驚いてもらえるというお話をされていたことがありました。それとは違うのでしょうか。

小山氏 :ホラーコンテンツであれば「何も出てこないはずがない」「何かが出てくる」とユーザーは勝手に思い込むんです。それだけである程度イメージができているので、そこからのネタバレはしなくていいと思います。

田宮氏 :ガンダムVRのような、どういう怖さがあるのかが事前にイメージできないものは、適度にイメージさせたほうがいいかと。ホラーコンテンツは、はじめから不安を持った状態になるので、それで十分だと考えます。

――釣りVRで磁気粘性流体(SoftMRF)の技術を活用しているのをはじめ、さまざまな技術と機器を取り入れて、VRの世界に入り込んでいく仕掛けを作っていますが、こうした技術の見つけ方というのはあるのでしょうか。

小山氏 :ナムコ時代から体感型ゲームマシンを作っているチームは、今でもバンダイナムコスタジオのなかで存在しています。さまざまな技術を、しかも量産型マシンとして落とし込むことは常にやっていることです。いろんな展示会に出向いては、こういう活用方法ができるという発想と情報収集を感度高く持っています。

田宮氏 :こういう動きを出したい、こういう感触を出したいということを昔からやっていて、それを実現するための実験も長年続けているんです。技術を見たときの反応がほかの会社さんとは違いますし、こうしたノウハウを持っていることは、体感型のVRアクティビティを作るうえで利点になっています。小山自身も、もともとはメカエンジニアとして体感ゲームに携わっていましたから、技術の情報感度は高いです。

「釣りVR GIJIESTA」で使われている、釣りざお型のコントローラ
「釣りVR GIJIESTA」で使われている、釣りざお型のコントローラ

小山氏 :今までの釣りをテーマにしたゲームは、モータを使って振動を起こしたり、リールを巻いたときの反動を出していましたが、釣りVRはモータが入ってません。巻いている力がエネルギーとなって、そこにブレーキをかけるような感覚で巻いている手応えを出しているんです。実際に魚が食いついたときに反応はありません。巻いているときの手応えで、それっぽさを出しています。

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