“格安”への流出阻止が業績に悪影響--携帯大手3キャリアの第1四半期決算 - (page 2)

“格安”で一人負けのKDDI--新料金プランの動向が重要に

 8月1日に発表されたKDDIの2018年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比6.0%増の1兆1986億円、営業利益が同2.3%増の2814億円と、2016年に続いて増収増益を記録している。好業績の要因は、引き続きauの通信料収入が拡大していることだ。


KDDI代表取締役社長の田中孝司氏

 中でも2016年に提供した大容量プラン「スーパーデジラ」の影響は大きく出ているようで、月間データ利用料平均が前年同期比18%アップ。そうした影響からau通信ARPAも前年同期比2.8%増の5970円と、順調な伸びを記録している。ドコモは大容量プランであるウルトラパックの影響がマイナスに出ているのに対し、KDDIは逆にプラスに働いているという点は興味深い。


大容量の「スーパーデジラ」の提供などによって、月間データ利用料の平均は18%伸びている

 その一方でKDDIは、主要3社の中で“格安”なサービスの影響による打撃を最も大きく受けている。そのことを如実に表しているのが、auだけでなく同社傘下のMVNOの契約数も含めた「モバイルID数」だ。

 モバイルID数は全体で見れば増加傾向にあるものの、その伸びを支えているのはMVNOの契約数で、すでに契約数は100万を超えているという。だが、auの契約数は前年同期比で62万契約減少し、2500万を割り込んでいる。しかも、MVNOの中にはドコモの回線を用いているビッグローブが含まれていることから、KDDIの回線を利用している契約者という視点で見ると、マイナスを記録している可能性が高い。


MVNOの契約数が100万に達する一方、auの契約数が2500万を割るなど、auの顧客流出が顕著な様子を見て取ることができる

 UQコミュニケーションズの「UQ mobile」が積極的なCM攻勢などで契約数を伸ばしてはいるものの、ソフトバンクのワイモバイルブランドや、ドコモの回線を借りたMVNOへの流出を止めるには至っていない。各社のネットワーク利用者数という視点で見た場合、現状KDDIが一人負け状態にあるといえ、同社にとってはKDDIの回線を利用するユーザーの流出をいち早く止めることが、非常に大きな課題となっているようだ。

 それだけに、KDDIの代表取締役社長である田中孝司氏は、決算発表会でしきりに「リテンションの強化」を挙げ、顧客のつなぎ止めに注力する方針を打ち出していた。そのリテンション強化策の1つとして挙げられるのが、7月に発表した、端末と通信料を分離することで通信料金を安くする新料金プラン「auピタットプラン」「auフラットプラン」と、同プランの利用者向けに端末を買いやすくする「アップグレードプログラムEX」である。

 田中氏は提供開始から約半月の動向としながらも、新料金プランの契約動向について説明。受付開始半月で45万契約を突破したのに加え、端末を購入した人のうち83%が新料金プランを選び、割賦契約した人のうち84%がアップグレードプログラムEXを契約するなど、好調な様子を示している。


新料金プランは開始から約半月で45万の契約を獲得。端末購入者の8割が新料金プランを選ぶなど、好調な様子を示している

 また田中氏によれば、新料金プランの提供以降、その対象となるAndroid端末の販売が5割アップしたほか、番号ポータビリティでauに乗り換えた人が2倍にアップするなど、想定外の効果も表れたとのことだ。各種割引やキャンペーンの適用によって1980円から利用できるというインパクトが大きく働いてか、少なくとも短期間の評価ではユーザー流出防止に成功したといえそうだ。

 だが新料金プランは、従来とは大きく異なる仕組みを採用しているだけに、一時的にユーザーが増えすぎると2014年のドコモの新料金プランと同様、業績が大幅に悪化する可能性も十分考えられる。ユーザーのつなぎ止めだけでなく、いかに業績に大きな影響を与えないようソフトランディングさせるかも、今後は重要になってくるといえそうだ。

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