KDDI、ベトナム2番手の通信キャリアと提携--プリペイド利用者向けアプリを開発

 KDDIは12月22日、ベトナムの通信キャリアMobiFone Telecomとの提携を発表した。ベトナムの首都ハノイで開催したイベントでは、KDDIが「au WALLET」などで培ったノウハウを活用したMobiFoneのアプリ「MobiFone NEXT」を発表。KDDI バリュー事業本部 バリュー事業企画本部 副本部長である田村俊之氏は「付加価値サービスの取り組みを、日本国内だけでなくグローバルでも展開していく」と意気込みを語った。

田村俊之氏
握手を交わすMobiFone副社長のNguyen Manh Hung氏(左)とKDDIのバリュー事業本部 バリュー事業企画本部 副本部長、田村俊之氏(右)

 提携はコンテンツ事業領域を対象としたもので、同日発表したMobiFone NEXTは、MobiFoneがプリペイドユーザー向けに提供するアプリ。まずはAndroid向けに提供し、2017年1月にはiOS向けにも提供にする予定。

 MobiFoneはベトナム第2のモバイルキャリア。加入者は約4000万人で、このうち95%がプリペイドユーザーという。今回KDDIとの提携により誕生したMobiFone NEXTの最大のポイントは、QRコードの読み取りでチャージができる点だ。

 ベトナムではクレジットカードの普及率が10%に達しておらず、銀行口座を持つ人も3〜4割にとどまる。そのため、プリペイドのトップアップ(チャージ)はこれまで、ショップで紙のカードを現金購入し、スクラッチすると表示される12桁の数字を手作業で入力するという方法をとってきた。QRコードベースのトップアップはベトナムでは初となる。

QRコード
MobiFone NEXTのアプリを使ってQRコードを読み取る。プリペイドが多い欧州では、トップアップはオンラインベースに移行しているが、クレジットカードが普及していないベトナムでは紙ベースのスクラッチカードが一般的なようだ
QRコード
QRコードを使ってトップアップした後、最新のiPhoneやMacbookなどが当たるくじを引くことができる。KDDIの知見やノウハウ共有の例として、友達もアプリをダウンロードして利用すると2人ともにデータ通信2GB分をプレゼントするという紹介プログラムも展開するという

 MobiFoneでマルチメディアと付加価値サービス部門トップを務めるNguyen Ngoc Linh氏は、「顧客へのアプローチが課題だったが、このアプリでは簡単にトップアップができる。顧客との関係を縮めるアプローチチャネルの構築につなげたい」と期待を語った。なお、MobiFoneでは一日約140件のプリペイド登録があるという。多くのユーザーが1カ月に2回はチャージをしているとのことだ。

 MobiFone NEXTは”MobiFoneの将来”という意味を込めた戦略的なアプリとなる。プリペイドのトップアップのほか、10以上の種類を用意するデータプランの購入や管理、また同社が力を入れていくという音楽、動画、ゲームといった付加価値サービスの購入の入り口にもなる。MobiFoneでは、アプリを通じてこれらの付加価値サービスの売り上げを15~20%上げることも可能という試算を立てている。

 また、毎日800万件、月単位では2億4000万件という同社へのインターネット経由でのアクセスをアプリに移動させることで、簡単かつ手軽に顧客とつながれるとしている。プリペイドはキャリアの乗り換えが容易にできることから、顧客との関係構築は同社の課題であり、それをMobiFone NEXTによって解決したい考えだ。ベトナムでは、MobiFoneを始め大手3キャリアすべてが付加価値サービスに取り組んでいるが、KDDIのノウハウを活用して差別化に繋げる狙いもある。

Nguyen Ngoc Linh氏
「MobiFone NEXT」をデモするMobiFoneのマルチメディアと付加価値サービス部門トップ、Nguyen Ngoc Linh氏

 KDDIの田村氏は、日本でのスマートパス、au WALLETなどの実績を紹介しながら、「ダムパイプではなくスマートパイプの提供を目指して、さまざまな取り組みを展開してきた。2016年は保険、ローンなどの分野に拡大し、ライフデザイン企業を目指している」と自社の取り組みを語った。

 MobiFoneからアプローチを受け、今回の提携に至ったというが、KDDIでは成熟市場である日本以外の収益源確保という狙いもある。「プリペイドはau WALLETとは違うが、アプリケーションとして共通して使える部分があり、われわれの知見を生かせる。また、顧客接点強化という経営課題も同じで、自分たちにとっても勉強になる」と田村氏。

 市場も魅力的だ。ベトナムは人口が9000万人、平均年齢が約30歳と若い市場であり、4G LTEの導入がこれからという段階にある。「4Gでは、付加価値サービスが重要な役割を果たす」(田村氏)。なお、MobiFoneとは資本参加などの関係はないが、提携のもと、MobiFone NEXTで発生した売り上げを共有することになっているという。

 MobiFoneの副社長であるNguyen Manh Hung氏は、「市場と顧客を調査して提携先を選んだ。KDDIは新しいトレンドの先導者であり、豊かな経験をもたらすと判断した」と提携に至った背景を語った。Linh氏は、「今回発表したMobiFone NEXTはバージョン1。今後は電子商取引などにも発展させたい」と述べ、「KDDIとは、金銭面だけでなく、技術と知識の提供に期待している」と続けた。

 KDDIの国際展開としては、すでにミャンマーとモンゴルで携帯電話のインフラ分野を展開しており、法人向けのトータルソリューションは全世界で展開している。今回のアプリのような上位レイヤー領域への拡大はこれからの課題であり、今後ベトナム以外の国でも模索していく意向のようだ。

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