グーグルの3Dマッピング技術「Tango」への期待--「屋内の地図」から広がる可能性 - (page 2)

Richard Nieva (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2016年06月30日 07時30分

 Tango搭載スマートフォンでは、建物の中を見ることができるようになる。スマートフォンのセンサと4つのカメラによって、部屋自体とその中のあらゆるもののパラメータと寸法をすべて取得して、部屋を描き出すことができるからだ。

 施設の所有者がTangoの技術を使って建物内部の地図を作成し、そのデータをGoogleに提供する。そうすれば、Tango搭載スマートフォンのユーザーは、建物に入ったときにその情報を利用できる。そういう仕組みだ。Lee氏は、施設のパートナーをどのくらい獲得したかは明かさないが、2016年内に「数社」が実際に動き出すことを期待していると述べた。パートナーの1社が、リフォームチェーンのLowe'sだ。Lee氏によると、サンノゼ国際空港でもパイロットテストを実施したという(Googleには、建物の内部の地図を作成するプロジェクトが他にもある。こちらは特別なレーザースキャンバックパック「Cartographer」を使うものだが、Tangoとは別のプロジェクトだとLee氏は言う)。

 Googleのサービスの例に漏れず、Tangoにもプライバシーが関わってくる。Lee氏は、Tango関連のデータについてはYouTube動画と同じように考えればいいと述べた。スマートフォンで撮影した動画は、デバイスに保存しておくこともできるし、YouTubeにアップロードして広く共有することもできる。Tangoでも、部屋の地図を作ると、その部屋の正確な情報が含まれるコンピュータファイルが作成され、そのファイルはデバイスに保存される。Googleが施設の所有者に期待するように、そのファイルを共有することもできる。

恐竜もソファも

 LenovoとGoogleの歴史は単純ではない。Lenovoが所有するMotorola Mobilityは、2014年にGoogleから買収したものだ。MotorolaはもともとGoogleが2012年に125億ドルで買収し、その2年後にLenovoに30億ドルで売却した。だが、このときGoogleの手元に何も残らなかったわけではない。重要な特許の多くを確保したうえ、Motorolaの実験的なハードウェア部門Advanced Technology and Projects(ATAP)も残していた。このATAPがProject Tangoを生み出した部門だ。

 Tangoの対象は従来の地図だけではない。Googleは、ショッピングから教育、ゲームまで、さまざまな用途に利用してもらいたいと考えている(Tangoは実際のところGoogleの仮想現実部門の一部だ)。同社は6月9日、いくつかのデモアプリを披露した。たとえば、手の込んだ配置でデジタルのドミノを並べていくアプリや、アメリカ自然史博物館のアプリなどだ。後者のアプリは、ティラノサウルス・レックスのデジタル画像をスマートフォン上に表示するもので、部屋の広さが十分であれば、実物大で表示できる。これらすべての体験に共通するのは、Tangoが部屋のサイズに関する詳しい情報を保持するということだ。そのため、まるで現実にその場にあるように、3D画像をスマートフォンの画面に映し出すことができる。技術用語で言うところの「拡張現実」だ。

 Tangoの用途として特に有益なのは、ショッピングかもしれない。Lowe'sの最高開発責任者Richard Maltsbarger氏は、Tangoの最大のメリットの1つは、店舗を回る買い物客の案内に使えることだと述べた。Lowe'sには、家具を選んで、自分の家にうまく収まるかどうかを確かめられるアプリがある。

 「当社の売場面積は2億平方フィート(約1900万平方km)に及ぶ。商品の1つ1つがその2億平方フィートのどこにあるのか、実際にわかるようになる日を楽しみにしている」(Maltsbarger氏)

 Lee氏はさらに、将来的にはTangoが買い物客を「店舗に、通路に、商品棚に、そして商品にまで」案内してくれるかもしれないと語った。

 Googleはすでに、Tangoで利益を得るための土台を築きつつあるのかもしれない。同社は5月、「Promoted Pin」という新しい広告ユニットを発表した。これは、消費者がGoogle Mapsを使っているとき、近くの店舗にある特定の商品の情報をハイライトできるというものだ。一方、Googleの広告および商取引担当シニアバイスプレジデントであるSridar Ramaswamy氏は、TangoとGoogle Mapsの広告を結びつけることについて語るのはまだ早いと述べた。Lee氏も6月9日に、Google Mapsについて「現時点で確約できるものは何もない」と語っている。

 だが、可能性があることは確かだ。あの青い点が、宝の地図に記された×印になるかもしれない。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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