「あっ、これ撮ろう!」「ここで撮らなきゃ!」――10代の子たちの行動を見ていると、写真を撮れそうなところや、写真映えしそうなところでは、すかさずスマホを出して写真を撮る。撮った写真は見返して、写っている子たちからダメ出しが出たら撮り直す。「だって、受けなきゃ意味ないから。スルーされるとか最悪だし」。高校1年生女子A子ははっきりそう答える。
それもこれも、SNSで受ける写真を撮るためだ。「受ける」「評価される」が彼らにとってとても重要なことがわかる。なぜ、彼らはそこまで受けたり、評価されることを求めるのだろうか。
「スクールカーストの正体 キレイゴト抜きのいじめ対応」(堀裕嗣著、小学館新書)によると、「スクールカースト」、別名「学級内ステイタス」は、学級への影響力・いじめ被害者リスクを決定付ける。
スクールカーストは、自分の意見を主張できる力「自己主張力」、他人に対して思いやりを持つ力「共感力」、場の空気に応じてボケたり突っ込んだりして盛り上げながら明るい雰囲気を作ることができる能力「同調力」の3つから成るコミュニケーション能力で決まるという。3つの力を持つ者がカーストの1番上であり、以下2つ、1つと続き、1つも持たない者がカースト最下層となりいじめられるというわけだ。
3要素のうち、もっとも優先されるのが「同調力」であり、次が「自己主張力」、かつては教育上重視されていたが現在はもっとも優先順位が低くなってしまったのが「共感力」だという。つまり、場の空気を読んで盛り上げることこそが、自らのスクールカーストを上げるために有効であり、10代の子どもたちが無意識に日常的に努力していることというわけだ。
日本では、2004年に公開された「mixi」によって、SNSが一般に普及して以来、10年以上が経つ。つまり、今の10代の子たちは物心がついた時にはすでにSNSがあった「ソーシャルメディアネイティブ世代」だ。最初に持つ端末がスマーフォンという「スマートフォンネイティブ世代」でもある。
彼らは常に、SNSで評価される“評価社会”の中で生きているため、評価をいつも気にしており、評価至上主義となってしまっている。スマホで始終つながり、SNSの評価で他人と比べて、自らの地位(カースト)をキープしている。
しかし、受けることだけがすべてではない。コミュニケーションを楽しむためならいいが、受けるために過度にSNSに投稿したり、過激な写真を投稿するようでは本末転倒だ。他人の評価だけに振り回されず、軸を持って生きられるよう、周囲の大人は見守ってあげてほしい。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境