もっとも、Firefoxは全体として影響力を失いつつある。調査会社StatCounterによると、Firefoxブラウザの全世界における市場シェアは、過去3年間で19%から9%に落ち込んでおり、一方Googleの「Chrome」は32%から48%へとシェアを伸ばしているという。スマートフォンの場合、「iPhone」ならAppleの「Safari」ブラウザを、Android端末ならChromeを使っている人が多いだろう。また、いわゆるネイティブアプリを使うケースも増えてきている。
ウェブが消えたということではない。博物館の開館時間や空港のチェック時間を調べるだけなら、わざわざアプリを検索してダウンロードし、インストールしたい人はいないだろう。最終的に、ある会社のアプリをインストールするとしても、まずはその会社のウェブサイトを調べることが多い。
カリフォルニア州マウンテンビューに拠点を置くMozillaは、Firefox OSを利用してモバイルデバイス上のウェブ技術を発展させようとしたが、その間Appleは、ネイティブアプリ開発者の支援に大きな関心を寄せるようになっていた。Googleは、Androidに注力しつつも、ウェブ開発に対する関心を忘れていない。それでもMozillaは長年にわたり、ウェブアプリを高速化するasm.jsや、ハードウェアアクセラレーションによるグラフィックスを実現するWebGLといった新技術を導入したときでさえ、Googleの計画の精査、検証を支援してきた。
Firefox OSは、開発期間を通じて困難に直面してきた。Mozillaの最高経営責任者(CEO)のChris Beard氏は2015年5月、低価格のローエンドスマートフォンにFirefox OSの足がかりを築くという同団体の取り組みは、Deutsche Telekomなどの大手キャリアや、Huawei(ファーウェイ)などの端末メーカーと提携したにもかかわらず、失敗に終わったと結論付けている。また12月には、Verizonなどの企業との提携を解消した。
MozillaのプランBは、熱心なファンに働きかけてFirefox OSをスマートフォンにインストールしてもらい、そのファンらをエバンジェリストに変えるというものだった。2004年の「Firefox 1.0」での戦略を再現しようとした計画だ。しかし、対応機種がほとんどなく、Firefox OSのインストールはアプリのインストールより難しいうえに、メッセンジャーアプリ「WhatsApp」のような人気のソフトウェアもない。
Mozillaの上級幹部だった2人がGoogle Chromeの技術を現在は利用しており、このことが状況を端的に物語っている。元最高技術責任者(CTO)のAndreas Gal氏が立ち上げたIoTスタートアップSilk Labsは、Node.jsプロジェクトを利用しているが、これはChromeのV8という重要なコンポーネントを基盤としている。元CEOのBrendan Eich氏が手がける新しいブラウザ「Brave」も、Chromeのベースを活用するバリエーションだ。
Eich氏は、「付き合わせて念入りに比較したところ、あらゆる点で」Googleの技術がまさっていたと、2016年1月のメーリングリストメッセージで語っている。「Mozillaの健闘を願っているが、スタートアップとしては、健全な手段であれば利用できるものすべてを用いなければならない」(Eich氏)
Firefox OSは、Mozillaの元プレジデントLi Gong氏が興したスタートアップAcadine Technologiesの「H5OS」として、形を変えて存続する。Gong氏は、2月のMobile World CongressでH5OSの最初のバージョンを発表する予定であり、Mozillaの撤退でAcadineの注目度が高まると考えている。
「オープンなウェブベースのモバイルOSという分野で、われわれが標準を築いていく」(Gong氏)
Mozilla自身は、AndroidおよびiOSデバイス向けとPC向けにFirefoxブラウザの提供を続ける。Firefox担当バイスプレジデントのNick Nguyen氏は、今後1年でのパフォーマンス向上と新機能導入を約束している。
「全世界で膨大な数のユーザーが、デスクトップ版Firefoxを利用している。優れたブラウザの開発に必要なリソースをこれからも投入していく」(Nguyen氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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