スマートフォンネイティブが見ている世界

無料なら違法もいとわない--「動画はテレビよりネット」の高校生 - (page 2)

違法ダウンロードには罪悪感を感じない

 2012年10月に施行された著作権法改正案により、違法にアップロードされたコンテンツをダウンロードすることは違法となった。違反すると、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または両方が課せられることになる。YouTubeなどを閲覧するだけなら問題はないが、違法でアップロードされている動画や音声などの有償著作物を、違法と知りながらダウンロードする行為は違反とされる。

 ところが、オリコンの違法ダウンロード意向などについてのインターネット調査(2015年2月)によると、違法ダウンロード刑罰化の認知度はほぼすべての世代で上がっている一方で、10代のみ67.7%から63.9%へと下がっている。また、2014年の1年間における違法ダウンロード経験についても、10代だけは前年の16.5%から18.7%へと上がっている。つまり、10代は他の年代に比べて違法ダウンロードをしてしまう割合が高いのだ。

 2008年と少し前だが、米Microsoftが中学生から高校生にあたる7年生から10年生を対象に実施した調査によると、自転車を盗んだら処罰を受けるべきだという回答が90%に上る一方で、違法ダウンロードをしたら処罰を受けるべきという回答はわずか48%となっていた。モノを盗むのは悪いことという意識はあるが、実体がないモノは罪悪感を感じにくいようだ。

 それだけでなく、10代は基本無料のいわゆるフリーミアムモデルに慣れており、コンテンツは無料で手に入るという感覚があるのだろう。さらに、インターネットで探せば音楽・テレビ番組や映画を含む動画・ゲーム・マンガ・小説など、さまざまな無料コンテンツが見つかる点も、これを後押ししていると考えられる。しかし、本当に無料のものなどなく、どれも生み出した人や企業などがあるものだ。

ネットから離れて自力で作り出す力を

 以前、当連載で取り上げたが、10代はコピペ文化で生きている。検索してWikipediaやネット上で見つけたコンテンツをコピペして、宿題やレポートとして仕上げることもざらだ。音楽や動画などのコンテンツを安易に無料で入手してしまう背景には、何でもインターネットを使えば済むという心理が働いているのではないか。ネットを使うのは楽だが、人生はそれだけでは済まないことがほとんどだ。

 10代こそ、何でもネットで済ませるのではなく、自力で解決する力を身に付けるべきだ。ネットは便利だが、たくさんあるツールの1つにすぎない。時にはネットを離れて、誰かに聞いたり、自分で考えたり、ネット以外から探し出したり、作り出すことも必要だ。大人世代は、10代が生き抜く力を身に付けられるよう、手助けすべきではないだろうか。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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