アーティスト視点のテクノロジ活用

“未完成の場”築ける「ライブキャスト」--田村淳さんの活用から価値を探る - (page 2)

ライブキャストを積極活用する田村淳さん

 アーティストとしてライブキャストを活用する人も多いが、今回は芸人として活躍する田村淳さんの活用を見てみたい。彼の持つアカウントは「田村淳」(@atsushilonboo)だけではなく「淳の休日」(@atsukyu)と「じゅあるくん」(@jeal_kun)の、合わせて3つがある。「淳の休日」は、オンの姿「田村淳」に対してオフの姿を映すアカウントであり、「じゅあるくん」は彼がボーカルをつとめるビジュアル系バンドのアカウントだ。自身のバリューを生かしたブランドエクステンションプロジェクトとも言えるだろう。

 「田村淳」および「淳の休日」ではツイキャスとLINE LIVE CAST、そして「jealkb」ではツイキャス、SHOWROOM、そしてニコニコ生放送と、どのアカウントもライブキャストを多用している。特にツイキャスでは、Twitterでフォロワーに呼びかけて実際にリアルなイベントを開催し、その様子を自らツイキャスで中継する企画を試みてきた。


田村淳さんの3アカウント活用方法

 これまでに開催された「マスクdeお見合い」では、出会いを期待する男女を集めてマスク姿でのお見合いをし、「即席オーケストラ」では、楽器のできる人を集めて即席のオーケストラを結成して演奏をするというように、いずれも訪れた人にその企画内でプレイヤーとしての役割を与えることで“場に参加してもらう仕掛け”を巧みに作り出している。

 彼の知名度は “人を集める”ことに関して大きなアドバンテージになっているが、“場に参加してもらう仕掛け”に関しては、学ぶことも多い。なによりも継続性があることは前提となるだろう。また、「場」に訪れる人にとって、そこで「認識される」「反応を得る」「役割を果たす」「影響を与える」といった要素の存在が、その体験をより価値あるものに感じさせるはずだ。田村さんの例では、訪れた人はお見合いやオーケストラのプレイヤーとしての役割を果たすことで、ともにその「場」を面白いものにしたという気持ちが得られたはずだ。

 ライブキャストは、サービス自体が持つ「今しか見られない」という価値に加え、「不特定多数の人の参加によって作られる」という価値を持ちうる。気軽な中継ツールという以上に、人を参加させることを通じて、ともに「場」を作るものとして活用されていくことを望みたい。

 なお田村さんは、こうした試みを通じて、映像コンテンツを通じたブランドとのコラボレーションや新たなアーティストのプロデュースなどを実現させ、彼個人のバリューをさらに上げることにも成功した。アーティストによる価値ある「場」作りは、結果として自らの価値を高めることにもつながるだろう。

矢野悠貴

芸能プロダクション・エイベックスでアーティストのマーケティングおよびマネージャーを担当し、アーティストとファンのコミュニケーションのため、早くからFacebookやTwitterアカウントを活用。その後、コンサルティング企業で、企業のソーシャルメディアの活用支援のほか、 講義やセミナーなどを行ってきた。現在はインターネットサービス企業にて新規サービスの立ち上げに携わる。

■Facebook: https://www.facebook.com/yanochi
■Twitter: https://twitter.com/yallock

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